軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国漫遊記20「蘇州会議その9」

夏氏の指示でまず私が10分間の制限付で講評したが、テープを起こして再現してみよう。
夏氏「それでは佐藤先生お願いします」
佐藤「夏先生、有難うございます。今日は楊少将と違って『ミサイル』が飛んでこないことを期待しています。(笑い)
まず陳元海軍大佐のご発言について、我々軍人と同様、極めて単純明快に解説されたと思います。4名の発言者に通用することですが、共通点が浮き彫りになっていると思います。従ってそれらの問題点を、今後はどのように調整していくか、次のステップに入るべき時期に来ている事がこの会議で浮き彫りになってきたと思います。
ただ大佐が言われた、中日間のギクシャクしている問題の5つの具体例については、日本国内で解決のためにかなり時間を要する点があると思います。北京でもここでも申し上げましたが、歴史認識という問題は、私の感じではかなり双方に理解が出来上がるまでに時間がかかるような気がします。
 日米同盟や領土紛争、海洋の権益などに関しては、比較的互いの共通認識が得られるのではないかと期待します。
最後の台湾問題ですが、これも歴史問題と共通したようなところがあるように思います。台湾問題について中日間でどうこれをうまく解決するか、これもちょっと時間がかかるような気がします。
安全保障推進のための色々な御提言がありましたが、よく考えてみるとこれはやはり、日中間、特に国民、マスコミ間のパーセプションギャップであるような気がします。
最後に言われましたように、対話なり、とにかく入りやすい分野から入っていくことについては全く同感であります。
 金田提督の話しについては、いつも聞かされているので聞き飽きていますので省略します。(笑い)帰国の機内で金田提督と同席にならない事を希望しています。(爆笑)
 呉寄南先生へのコメントであります。先生ともよくお会いしていますので、気心は十分通じていると思っています。特に、いつも言われること、我々も岡崎大使も言うことでありますが、機会を捉えて日中双方の有識者に対話の場を通じて理解を得ていくべきである、と言うところは全く同感であります。ただ未だ若干双方とも、例えば私が講演会で話をしても理解を得るには時間がかかるような点が双方にありますが、これはやはり根気強く努力を続けるべきであると思います。
温家宝首相が言われて、双方の(外務)事務次官対話が始まっていることは承知しております。担当された方からも、内々に極めて明るい感触を得ているという事を、私も得ております。ただ、やはり外交官ですから、まだまだ発表できないこと、御互いの秘があること、御互いに慮る事があるということで、国民に未だ正しく伝えられていないように思いますが、これも時間の問題だと思います。
 つまり、呉寄南先生も私も、いつも申し上げるのですが、日中双方のマスコミュニケーション、いわゆるPRをどのように、少しづつ正しく国民に適切に理解できるように指導していくか、これは大きな問題だと思います。御国と違ってわが国の新聞テレビは、NHKを除き売れれば良いわけで、売れなければ会社は倒産するので、面白おかしく伝達する癖があります。今後とも呉寄南先生と色々話し合って、何とか間違った情報が少しづつでも排除される努力をしたいと思っています。
 最後に川村先輩についてであります。防大1年生時代の4年生にコメントするのは差し控えたいと思います。(笑い)ただ若干航空自衛隊海上自衛隊付属航空自衛隊と思っているようなところがあるのは訂正したいと思います。(大爆笑)
信頼醸成のための具体的な例であります。先ほど日韓間の問題について川村先輩がちょっといわれましたので、具体例を申し上げます。日韓間の上空における障害予防のための救済措置であります。(以下、日韓間のホットライン設置の経緯について解説)
このような関係が日中間に出来る事を私は密かに期待しているのであります。以上です。有難うございました」
 次に趙氏が「石油を中心としたエネルギー安全確保」についてコメントし、陳大佐が「海上安全と政治を切り離すのは難しいこと」、金田氏が「日中協力の可能性について、個人的には提言に賛成であること」、呉寄南氏が「対話の基盤には政治的基礎が大事であること」、私が「色々な良い提言が出されたが、根底には政治関係がある」と、補足説明してこのセッションを終了、10時50分から総合討議に入った。    (続く)