軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

日米同盟の真価が問われる

国防総省の「国防計画見直し」が公表されたが、明らかに「不安定な弧」対処が最優先されている事が窺える。
向こう20年間の優先分野は、テロ組織打倒、大量破壊兵器拡散防止、中国の軍事力増強への対処が柱になっているが、太平洋地域に、米国が保有する11個空母群のうち、実に過半数の6個空母群をシフトするという決定は、如何に名文で書かれた「計画書」よりも米国政府の意思を雄弁に物語っている。
軍事力は「文章」ではなく、「行動」である。防衛白書も、「中国の軍事力」という“書物”も、所詮は「紙の上の数字」に過ぎない。行動で示す「軍事力配備」のほうが、その国の意思を明白に示す。
米ソ冷戦時代、三沢基地に米空軍の虎の子であったF−16ファルコン戦闘機が2個飛行隊、50機配備されたとき、一番応えたのはソ連であった。北海道道央地区を奪取しようにも、一旦戦端が開かれれば、“ファルコン”は、沿海州地区のソ連軍基地をためらいなく攻撃する事を知っていたからである。
ソ連が当時恐れていたのは、専守防衛に徹している自衛隊ではなく、“槍”である米軍であったことは当然だが、中でも日米安保を「態度で示している」、日本に展開している在日米軍の“実在”軍事力であった。
今回は中国がそれを感じる番である。台湾や東シナ海周辺で事を起こすと、間違いなく米軍は“介入”してくる。それも桁外れの戦力で。
しかし、その米軍にも弱点がある。それが日米同盟である。“同盟軍”でありながら、日本だけは、政府が「その同盟軍に協力する事を禁じ?」ているからである。中国はそこをついてくるにちがいない。
六日の産経新聞は「主張」で、「QDRが太平洋における同盟国として『日本、豪州、韓国』の順に上げ、日本などとの二国間関係は『国際社会の安全を維持するもの』と評価したことだ。しかも『国防総省だけでは今日の複雑な課題に対処することは出来ない。同盟国や友好国と緊密に協力する必要がある』とまで訴えている」と書いたが、それに応えるためには「集団的自衛権」問題を速やかに解決し、米国の計画を実効性あるものにする必要があろう。
一方、在日米軍再編をめぐる問題も進展していないという。わが国が一番影響を受ける地域である「不安定な弧」に米国は確実に対処しようとしている。その計画が成功するか否かは、わが国の協力にかかっているのである。
一日も早く集団的自衛権問題が解決され同盟国としての信頼が高まり有効に「抑止力」が機能する事を期待したい。

さて、今朝の産経新聞を開いて驚いた。14面の「オピニオンプラザ『私の正論』」欄に、後輩の論文が大きく出ていたからである。本村久郎1佐、現在奈良の幹部候補生学校の副校長をしている、ファントムパイロットである。今回のテーマは「国語力の現状を問う」という、軍事とは無関係なものであったが、見事に入選、審査委員の西岡氏によると「同じテーマの他論文に比して論理構成、文章力などの点で優れており、文句なく入選と決まった」そうだから、嬉しい限りである。彼はこの「プラザ」で既に3回連続入選している力量の持ち主でもある。
その昔、ファントム戦闘機で訓練を終えて、新田原基地に帰投したが、天候急変で築城基地に向かわされ、間一髪着陸できた技量の持ち主で、「そのとき燃料計は0をさしていました」と私に語ってくれた事があった。
文武両道、彼のような後輩達が続々育つ事を期待している。まずは「本村君おめでとう!」