軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

イラク戦争の真の狙い

コメントに3月、5月危機説が流れている・・・という意見が寄せられ、フランスのシンクタンクの情報を教えてもらった。それには、石油取引のドル建てに対して、ユーロ建てとの確執が示されてあったが、私も「イラク戦争」開戦前に、フセインとフランスなどが、ユーロ建て取引を画策したのを知った米国が「殴りこむ」という英国人の情報をあるソースから聞いていた。そこで間違いなく「イラク戦争」は開始される、と見ていたのだが、米国は「大量破壊兵器の存在」を口実に開戦に踏み切った。しかし「核兵器」が発見されなかったことから「口実」だった事が明らかになった。日本のメディアは「米国に追随した日本政府の責任論」などと批判したが、「東京財団の政策機関誌・・・日本人の力」3月号に、帝京大学高山正之氏が「戦争の口実は常に偽りである」として、イラク戦争の狙いを次のように分析している。

「この戦争ならまずサダム。反米のアラブ民族主義者。世界第二位の石油埋蔵量を背景に強大な軍事力を持つ。もう二度も戦争を起こした行動派だ。
 石油埋蔵量一位のサウジアラビア親米派ファハド国王は当時死の床にあり、アブドラ新王が遠からず誕生する。新王はサダムと親しいアラブ民族派パレスチナにも同情的だ。
 そのパレスチナでは超強硬派のハマスが勢力を伸ばし、この一月の選挙では第一党になった。対するイスラエルでもユダヤ原理主義集団ハシュディムが国民の二〇%を超えつつある。彼らはパレスチナとの妥協を一切排除し、九五年には共存を図ったラビン首相を暗殺もしている。
 もしサダムをあの時点で排除しなければ、ファハドの死後(〇五年五月死去)石油埋蔵量一位のサウジと同一位のイラクは確実に手を握る。シリアのアサド大統領も、米国と反目するイランもその輪に加わるだろう。イランは石油埋蔵量世界第四位。
 ということは空前の規模で石油と軍事力が結びついたアラブ・イラン連合が現実のものになる。これを背景にパレスチナではハマスとハシュディムが歯止めの利かない衝突を始める。つまりかなり高い確率で中東戦争が勃発し、同時に第二の石油ショックが出来(しゅったい)することになる。
 その要のサダム・フセインを排除出来ればこの悪夢は起きないか起きてももっと緩慢なペースで対処できると読んだ、ということだ。そして事実もそう推移している。大量破壊兵器の有無など本当は何の意味もなかったわけだ」

 コメントにも、当時NATO本部で米軍関係者が「ドル――ユーロ」問題で緊張していたという体験談が披露されていた。
 高山教授の説が正しいと仮定すれば、イラク戦争は自由陣営、特に石油に頼らざるを得ない資本主義近代国家が経済麻痺に陥らないために、米国は2000人以上の米国青年の血を流してくれているのだ、ということになる。
そう考えると、9・11テロ発生報告を告げられたブッシュ大統領が、訪問先の小学校で、一瞬放心したような表情をし、不可解な態度をとったことも納得できる。
次は「イラン」「北朝鮮」が対象になりうる!どんな「切っ掛け」が用意されつつあるのか、ブッシュ大統領がインドなど、各国を歴訪している裏には何があるのか、一番気にしているのは全人代の中国首脳であろう。
(余談だが、「日本人の力」3月号の高山教授の次に、「自衛隊改革の前に政治家の意識改革を!」という私の論文も掲載されているのでご笑覧あれ)