軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

憲法改正作業を急げ

7日夕方から、自民党本部で行われた第3回「メルマガ/ブログ作者との懇談会」に出席した。自民党広報本部が主催する、ブログなどの作者とのざっくばらんな意見交換会である。
初めて招かれたのだが、今回は新憲法起草委員会事務局次長の舛添参院議員が「新憲法草案」について約30分間解説(というよりも本音と裏話)して質疑応答に入った。参加者は27名、皆真剣な質問を投げかけ、実に有意義であった。
憲法を起草した最大の目的は、第9条の改正にあるという舛添議員の話は大いに納得できたが、最大の課題もまたそこにある事が良く理解できた。
民間臨調の研究会でもこの問題が最大の検討事項であったが、とにかく第二項の削除は急務である、という意見が圧倒的であった。しかし、そうなるとわが国が「軍隊を保有する」という意思が不明になる。そこでどこにその文言をいれるか、その名称をどうするか、が課題になり、名称として「国防軍、防衛軍、国軍・・・」などが挙げられた。中には「国軍」を推薦する人も居たが、大勢は「自衛軍」であった。そこで元自衛官であった私が意見を求められたが「国軍」は開発途上国のクーデター対処軍的で好ましくない。「自衛軍」というが、どこの国が「侵略軍を保持する」と憲法に書いているだろうか?と疑問を呈し、削除された第二項にあった「陸・海・空軍」という名称をそのまま採用するべきだ、と答えた。今回もそう意見を述べたのだが、やはり「急に国防軍などと勇ましくなること」を避けて、「自衛軍」に落ち着いたという裏話を聞かされた。
自民党は「民主党」からは賛成票を獲得し、与党「公明党」との政治的結束は壊せない、というジレンマを抱えているのである。そんな中途半端な妥協の産物で「自衛軍」となるのでは、現場はたまらない。堂々と「陸軍、海軍、空軍」として、それに反対する野党などの意見を論破して初めて政権党の威厳があると思うのだが、どうも現実はそうではないらしい。特に参院は少数派だから厳しいという。それを武器に、子供じみた抵抗をする野党も野党だが、それが「民主主義だ」と錯覚しているのだから情けない。
他の分野に関わる意見も出て時間が足りないくらいであったが、軍に関しては聊か「空論」が目立ったので、私は「現場監督としての体験」から、次のような第一線隊員たちの苦労話をしておいた。
1、 出先で日本人が危険に陥ったとき、それを助けられないというのは軍隊としては最大の恥だから、隊員は必ず行動を起こすだろう。以前捜索に武器を携帯させた指揮官が処罰された事があったが、それでは隊員のやる気は減退する。少なくとも現場の隊員が邦人救護のために、「法律を破らねばならないような状態」を放置してはならない。それは政治家の怠慢である。
2、 現場では遭遇した事態対処が、特措法の第何条に当たるかなどと確認している暇はない。その結果、法を破って邦人、友軍を救出しても、外国軍には常識だから賞賛されるだろうが、帰国して国内法で逮捕処罰されるのではたまったものではない。
その昔、スクランブル対処で一番機が撃墜されたら、二番機はこれを攻撃するのか?それとも法律に従ってそれをせず帰還するか、で大いに意見が別れた事があったが、パイロットは密かに決意をしてコトに臨んでいた。リーダーを見殺しにして帰れば、彼は二度と操縦桿を握れなくなるからである。
3、 現場の一隊員にそのような難しい判断を一任することはできない。指揮官は部下に責任を負わせるわけには行かないから常にジレンマとストレスを抱えることになる。現地で共同活動している外国軍軍人は、日本の憲法の特殊性など知らないから、奇妙な軍事行動をとる自衛隊員を理解できないだろう。

 懇談会が終わった後、若いブロガーたちの何人かが「始めて聞きました」と賛同してくれたのが嬉しかった。
 いずれにせよ、憲法改正を推進するためには、最大公約数を求めなければならないこと。国民の過半数の支持を得るため、バランスを取らざるを得ないこと、各政党の立場(特に対案を出さない民主党)の混乱が元凶であること、「マア、この程度なら目をつぶるか」と、各党に賛成票を投じさせるための苦労など、主担当者である舛添議員の本音が聞けたことは収穫であった。とにかく、長年憲法が原因で「政争の具」にされてきた自衛隊OBの一人としては、是非とも改正作業を推進して欲しいものである。