軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

予断許さぬ中東情勢

 昨日は、午後から雑誌「正論」編集部に出かけた。「私の写真館」というアルバムに取り上げられることになったのだが、2月号は高名な喜劇役者の伊藤四朗氏、1月号は評論家の石平氏だったから、単なる「元戦闘機乗り」に過ぎない私は遠慮したのだが、このブログで軍事評論家として定着しているから、と編集者は言う。

 50枚ほどの古い写真を持参したが、流石はプロ、解説を聞きながらてきぱきと約30枚を選び、キャプションを付けた後再度整理するという。そんなわけで書斎は今古いアルバムで足の踏み場もなければ、その整理に追われる毎日。
 しかし、昭和14年に樺太で生まれた私の姿を、両親は丁寧に保管していてくれ、その上父は日記に詳細な記録を書いてくれている。厳しかった母のことなど、思い出す機会を与えられたことに逆に感謝している。最後にどんな編集になるのか、実は私も興味津々であるが、今年は「変装」技術もより一層向上させなければならなくなった・・・


 夜は恒例のチャンネル桜で「防衛漫談」。いつも全く打ち合わせなしのぶっつけ本番なのだが、井上キャスターの関心はやはり「田母神事件」。

 その後の情報も相当出てきて、今、防衛省側は判断を誤った事を“後悔”しているのではなかろうか?いずれにせよ、覆水盆には返らない。
 長年、一部メディアが自衛隊と国民の間に築いた「分厚い塀」に囲まれて、自衛隊の真の姿が隠される傾向が強かったが、今回の件で国民の間に“公開”されたことは非常によかったと私は思っている。
 ついでにMXテレビの友人から来た年賀状に、「1月17日午後9時から、MXテレビ(都内ではチャンネル5)で石原都知事と田母神氏が対談する」と添え書きがあったのでお伝えしておく。


 さて、イスラエル軍ガザ地区攻撃は予断を許さない。CNNもBBCも「中東戦争」として連日詳細な情勢を伝えている。イスラエルは国内情勢も複雑に絡んでいるので、易々とは後に引けないだろう。さて、どんな「終結」を予想しているのか?

 今朝の産経新聞によると、今回のイスラエルの攻撃で困っているのは「反ハマスの穏健派諸国」だという。パレスティナ住民の犠牲が増えると、アラブ大衆の反イスラエル感情を抑えきれなくなるというのである。
 しかし今回の戦闘は、ハマスと穏健派のアッバス議長率いるファタハ自治政府との間の分断を仲介しようとしていたエジプトの努力を無視して、半年に及んだイスラエルとの停戦の延長を拒否し「500発ものロケット弾などをイスラエルに打ち込み、今回のイスラエルの攻撃を呼び込む結果」を招いたのはイスラム過激派のハマス側であった。
 先月開催されたアラブ連盟外相会議では「サウジのサウド外相は、そもそも、ハマスイスラエルを挑発した点への批判を忘れなかった」し、後ろについているのが「イラン」であることは、イランの最高指導者ハメネイ師が「大きな災厄は一部のアラブ・イスラム国家の沈黙だ。それは(イスラエルへの)賞賛ともいえる」と「アラブ穏健派の姿勢を糾弾した」ことで証明されている。

 戦いの基本は、正面から攻めるのではなく、敵の後背を脅かすのが原則である。イランにとってはまさにガザ地区は、イスラエル攻撃の「橋頭堡」に匹敵する。これを有効活用しない手はない。本来の敵を後ろに控えたイスラエルは、この「橋頭堡」攻撃をどう締めくくり、イランと対峙するか。
 ヴェトナム戦争でも、一般市民?の犠牲を世界に訴える戦術を取った北ヴェトナムが勝利した。表向き、人道問題を避けて通れない西欧先進?諸国の虚を衝いた作戦が功を奏したのである。東京裁判では、敗戦国側に「人道に対する罪」を押し付け、いかにも戦勝国が「人道重視」であったかのように装ったツケが回ってきているのである。
 しかし、イスラエルにとっては、第二次大戦後に得た悲願の国土を失うことは何が何でも出来ないだろう。アッバス議長がイスラエルの攻撃を「野蛮で犯罪的」と表現したそうだが、国家間の戦いではなく、国家と「テロリスト」との戦いである以上、どちらが「野蛮」であるかは一目瞭然ではないのか?市民を盾に戦闘に巻き込み、自己防衛をはかりつつロケット攻撃を続ける「便衣兵的攻撃」をする方が余程「野蛮で犯罪的」ではないか?

 ヴェトナム戦争も、終わってみれば南ヴェトナム国内に用意周到に配置された「ベトコン」たちの後方撹乱戦術が成功したのではなかったか。彼らは一般市民を強制的に反米に駆り立てていた。それを伝えたのは一部のメディアでしかなく、大半は民族自決の「聖戦だ」と「誤報」を垂れ流してベトコンを支援していた。

 ところで、ワシントン入りした次期米国大統領の、バラクフセインオバマ氏は、この複雑な方程式をどう解くか?新国務長官はヒラリー女史である。

 国営イラン通信は、親イスラエル国への原油輸出を削減するよう呼びかけた。ハマスが使用しているロケット兵器の大半は中国製だといわれている。原油よりも、テロリスト集団への「武器輸出」を止めるのが先ではないか?
 武器を多量に持つと、統制が取れていないテロリスト達は気が大きくなり、無謀な攻撃に走りやすいものである。今回も多分にその傾向が見られる。
 ソマリアの海賊が大量の武器を輸送しているロシア船を乗っ取ったことがあるが、今回の中国海軍出動が、中国製武器の輸送船が海賊に襲われないためだったりして・・・


 国家の外交と安全保障は、与野党いずれにせよぶれてはならぬ問題の筈なのに、国益を忘れて、党利党略に明け暮れている日本政治の質の低さにはあきれるほかない。彼らは真面目で穏やかな国民にどれだけ救われていることか気がついているのだろうか?
 次に掲げた元民社党委員長・塚本三郎氏の著作を熟読玩味してもらいたいものである。

“劇場政治”の因果―戦争を禁止された“国家”の悲劇

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日本には日本の生き方がある―歴史にまなぶ

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新武士道―日本の魂

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自らの身は顧みず

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