軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

対日包囲網が“概成”した!

昨日の産経新聞を読んで、私はついに中国政府が「本性を表した」と書いた。
ところが、今朝の産経新聞を見た私は、わが国をめぐる情勢分析が狂っていなかったことを確信した。報道の概要と、私の“危惧”を羅列しておこう。

1、「ガス田開発・日韓大陸棚も日本側」(1面トップ)
 「中国が日中共同開発を提案した日韓大陸棚の対象海域も日中中間線より日本側だった事が分かった。この海域は「日韓大陸棚協定」に基づく日韓共同開発区域内だった」というものだが、中国は韓国の了解を内々に取り付けた上で、共同開発を日本に提案したに違いない。こんな重要な情報をすぐに官邸に報告しなかった外務省は、日本を取り巻く不穏な情勢に鈍感な事を暴露したように思うが、それはさておき、「中韓が連携して日本に対抗している」事が読み取れる。
 これに付随して中国が「国産空母建造」を進めていることを、解放軍装備部長の汪致遠中将が認めたという。(5面下段)空母機動部隊が何時ごろ戦力化するか見ものだが、同面左上段の「有人宇宙飛行プロジェクト顧問」が、「中国は10年で米に並ぶ」と語った記事も、中国の“実力を誇示する”東南アジア諸国向けの「プロパガンダ」であろう。

2「テポドン3号開発中」(3面トップ)
 ベル在韓米軍司令官が、下院軍事委員会で、北朝鮮が米本土を射程に収める新型の大陸間弾道ミサイルテポドン3号」の開発を行っていると証言した。最近、北朝鮮は短距離ミサイルを3発実験?発射したと米国が報じたが、この国は「飯は食わねど武器開発」なのである。米国に届く武器を持てば、米国は言う事を聞くと思い込んでいるのだが、そうはいかないだろう。テポドン3号が存在しようがしまいが、それを口実に米国はピョンヤンを確実に廃墟にするだろう。地下深く潜れば、あるいはミニニューク(小型核)の使用もないとはいえない。ただ、今は条件が整わないだけである。金正日が判断を誤らないように“祈り”たい。しかし日本は北朝鮮に近いし、国民を不法に拉致されている事を忘れてはならない。しかもそのシンパが「うようよ」日本国内で活動していて、北朝鮮の大臣が、日本から“自由に”ピョンヤンに通勤しているというのだから話にならない。日本人の拉致被害者は「入国できない」にも拘らず、である。その北朝鮮を中国が支援している事を忘れてはならない。

3、「親日派」糾弾・韓国で活発化(3面中段)
 「韓国国歌「愛国歌」の作曲者に“親日疑惑”が提起され、一部では国歌変更まで取りざたされている」というものだが、たまたま昨日のフィギュアー世界ジュニアで、韓国の金研兒選手が日本の浅田真央選手を破って優勝した事を聞いた韓国国民の一人が「フィギュアーには関心ないが、日本に勝った事が良いことだ」と発言したのをテレビで見て、「何と狭量な国民か!」と思っていたから、私はこの報道も「またか」程度にしか感じてはいない。しかし、竹島を不法占領している事実を日本国民は決して忘れてはなるまい。韓国もまた明らかに「反日」なのであり、中国と呼応していると見るべきである。

4、「対日外交・露中連携も。歴史問題の同調焦点」
 ロシアのプーチン大統領が21,2日と北京を公式訪問するが、「今回は両国間の“戦略的友好関係の強化”が目的で、パイプライン建設などエネルギーを中心とした経済協力やイランの核開発といった国際問題での協調が焦点となる。ただ、中国側はロシアに対し、対日歴史問題でも同調するよう働きかけており、今回のプーチン訪中に合わせ、対日外交で中露が連携を探る動きが出る可能性も指摘されている」という。
 ロシアは1945年8月9日に、一方的に「日ソ中立条約」を破って満州樺太を侵略し、北方領土まで占領したのであるから、如何にヤルタでの米ソ密約に基づいた、と嘯いても、国際正義は通用しまい。中共もまた、国民党を日本と戦わせて、漁夫の利を得たのだから、共通の「やましさ」を抱えている。もしも両国首脳に良心があれば、互いに心苦しい傷をなめあう場か?といえるのだが、歴史を偽造し、自己の正当性を信じて疑わない「共産主義思想」の持ち主であるから、それは全く期待できまい。ロシアは、日ロ間の懸案事項である「領土問題」を自分に都合の良い様に宣伝して、反日活動を強化するに違いない。
 余談だが、その下段に、「博物館に『ソ連占領史』・グルジア、賠償求める動き」という記事がある。「ソ連に占領されてきたグルジア近代史を伝えるための『占領史展』が今春、国立博物館内にオープンする」のだという。ソ連は、人道と国際法にそむいて60万人余もの我が将兵をシベリアに強制連行して、6万人以上も“虐殺”した前科がある。中国も根拠薄弱な「虐殺記念館」などを造って誇大宣伝に努めているが、日本はソ連にも、中国にも反論出来ないで居る。そればかりか、靖国批判に耐えかねてその代替施設建設を計画するなど、正気の沙汰とは思えない有様である。グルジアのように、ソ連や中国が戦中戦後、わが国に“何をしたか”を後世に伝える「記念館」を建設するほうが先だろう。

5、「イラク駐留陸自・撤収『5月完了』断念へ」(2面上段)
 そんな中「政府はイラクサマワからの陸自撤収が大幅にずれ込む見通しなので、第十次イラク復興支援群の5月派遣について本格検討に入った」という記事にはほっとした。産経に一言言わせて貰うならば、見出しを「5月完了断念へ」等という、否定的表現ではなく、「政府『駐留延長』を検討」とすべきであった。
 それはともかく、イラク情勢は予断を許さない。派遣される隊員達は日米同盟が堅固である象徴として、「国益確保」の尖兵として任務についているのである。「米軍再編」「普天間基地問題」「NLP」「牛肉輸入」など、日米間には大きな障害が横たわっているが、大きくならないのは、自衛隊が細々と日米同盟を支えているからである。その隊員達に万一の事があってはならない。政府は、武器の使用を含めて『万全の対策』を建てておかねばならない。事態発生と同時に「撤収」などしようものなら、日米間の細い絆が切れて、米国までも敵に回り完全に孤立するだろう。周辺の“敵”はそこを衝くべく、自衛隊に何かを仕掛けてくる公算もある。

さて、今朝の新聞から気になったものを列挙してみた。要するに、わが国の現状は、かっての「ABCD」包囲網のように、C(中国)・K(韓国・北朝鮮)・R(ロシア)包囲網に封じ込められようとしている、と警告したかったのである。
当時のABCD包囲網と状況が異なるのは、唯一「アメリカが後ろについていてくれている」事である。しかしながら、その後ろ盾は、イランとイスラエルを巡る新たな事態に対処中であり、世界の安定のためにはまず中東の和平を確立する必要がある。その間はアジアに波乱を起こさせないこと(台湾・北朝鮮)だから、米国は、今は中国に「融和策」をとらねばならない。
他方同盟国・日本は、何を“勘違いしているのか”中国の国益確保に協力して沖縄米軍基地問題解決に消極的であり同盟国としては全く「役に立たない」。米国は内心“怒り狂っている”のだが、そんなことはおくびにも出さない。しかしこれ以上拗れると、どんなしっぺ返しがあるかもしれない事を覚悟しておくべきだろう。
もう一つ戦前と大きく異なるのは、“帝国陸海軍”のような強大な軍事力を持っていない事である。現代日本は軍事的に脆弱であるが、その脆弱な“自衛隊”が、中近東、インド洋方面に戦力を展開していて、肝心のわが国周辺は更に「手薄」である。
従ってわが国がC・K・R包囲網に対して取り得る手段は「波風たてず穏やかに、相手の言うがまま、なすがまま」以外にはあるまい。しかも、わが政府内部には親中派媚中派に代表される「ゾルゲ・尾崎秀美」が既に潜入しているのだから結果は見えている。さて、小泉信長は、九月までに、この包囲網をどのように突破するのか、大いに見ものである。