軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

愛国心は漲っている!

昨日は防衛大学校第50期生の卒業式であった。雨の中、2時間かけて久しぶりに小原台に向かった。昭和38年に卒業した我々7期生の「ホーム・カミング・デイ(HCD)」で、全国から夫婦同伴組を含む懐かしい320名が集まった。
卒業式は定刻の10時に、小泉首相を迎えて厳粛に開始された。今朝の産経新聞によると「卒業生は外国人留学生を除くと366人(うち女性24人)で、任官拒否者は15人(うち女性2人)で、昨年度より7人少なく、任官者数は351人と過去最小だった昨年度を大きく上回った」という。外国からの留学生は、ヴェトナム、タイ、インドネシアシンガポール、フィリピン、モンゴル、ルーマニア、マレーシア(研修生)から来ているという。  創設以来54年、防衛大も随分国際的になったものだと思う。彼ら卒業生がアジアの安定のために、将来大いに活躍してくれる事を願いたいものである。
小泉首相は式辞の中で、暗に中国の透明性を欠く軍拡について述べ、大量破壊兵器弾道ミサイル技術拡散、テロなどに懸念を表明したが、「陸・海・空の統合」が漸く具体化したことにも触れ、防大創設の目的の一つに「3軍統一」があった事を改めて強調した。
新年度から「統合幕僚監部」が発足し、漸くその目的の第一歩を踏み出すのである。大東亜戦争の反省に基づいて決定された3軍統一された軍学校創設目的が、50年以上たって漸く実現する。その気の遠くなるような現実に今更ながら驚くのだが、これが「民主主義」であるのならば仕方ないと諦める以外にはないのであろう。先崎一・初代幕僚長に大いに期待したい。
更に首相は日米関係にも触れ「共通の戦略目標の元、日米の役割を明確にする」「イラク、インド洋で黙々と活動している自衛隊は、日本国民の善意を実行する部隊である」とも語った。普天間基地岩国基地問題など、日米間には10年以上も「放置され続けてきた」不穏な火種が残されている。これは過去の自民党政府に責任があるのであって、小泉政権に責任があるとは思わないが、是非小泉政権下で解決を急いで欲しいと思う。
首相は、在任間5回防衛大の卒業式に連続出席したが、「首相として最後の祝辞であり、特別の感慨がある」と述べたから、9月引退の決心は揺るがないのであろう。是非国家安泰を優先した後継者に引き継いでもらいたいものである。
額賀防衛庁長官は「悲劇?」の長官である。前回は調達実施本部のスキャンダルで防衛庁を去ったが、今回はまた施設庁のスキャンダルなどで悪戦苦闘中、「ライブドア」はじめ、数々の国内混乱の例を挙げて、「日本人としての誇りと自信を取り戻そう」と呼びかけ、「寛容の精神」「進取の精神」を強調した。
各国武官団が注目する中、厳粛な式典が終了すると、卒業生は学生長の「共に国家の礎とならんこと」の誓いの言葉と共に「陸・海・空に別れて小原台を去る同期生よ、いざさらば!」の音頭で恒例の「帽子投げ」で一斉に退場した。この「行事」は我々の一期後輩から始まったらしいが、私にはどうにも馴染めない。米国の士官学校の風習を真似たらしいのだが、そんなことより「飛ぶ鳥跡を濁す」様な気がしてならないのである。すぐさま在校生達が投げ捨てられた帽子を拾い集めるのだが、それも「後輩たちに後始末をさせる」ような、「無責任?」を象徴しているように思われ「教育の場」としては相応しくない様に思うのだが・・・。互いに握手をしたり、肩を叩きあいながら健闘を約しつつ式場を後にすることは出来ないのだろうか?と個人的には違和感を覚える。
不思議なことに式が終わると天候は回復していて、予定通り「恒例」の観閲式と観閲飛行が実施されたが列中に女子学生の姿が見えない。ところが何と、女子学生も男子と同じく制帽・ズボン姿だったから、気がつかなかったのである。女性用の制帽、スカート姿だとばかり思い込んでいた私が間違えていた。女性中隊長が2人ほど居たが、元気な指揮振りには感心したものの、何となく我々の時代には考えられなかったことだから、改めて「時代の流れ」を痛感した。
学生会館で行われた同期生会の懇親会は盛会だった。皆65,6歳の「お年寄り」になったが、精神は青年時代と変わってはいない。会の途中で「先立った同期」の未亡人と子供たちが壇上から挨拶したがこれには感動した。一同期が招待したのだという。学生時代に同室だった強面の彼は「ボクシング部の猛者」だったから、学生時代にはそんな「優しい気配り?」は感じられなかったのだが、今回は大いに感動して彼と握手してその気配りに感謝した。確かに卒業以来43年目に当たるこのHCDは、ほぼ同期生の“最後の全国集会”になるのだろう。だから九州や中国地方、東北から駆けつけてきたのだと思う。私も勿論それを意識して参加したのであるが….
懇親会の途中で司会が、「現在2:0で韓国に勝っています!」とWBC試合の途中経過を告げると、会場は大きな歓声に包まれた。
3時過ぎに懇親会は名残を惜しみつつ解散したのだが、その前に恒例の「学生歌(校歌)」を肩を組み合って斉唱した。
「1、海青し太平の洋、緑濃し小原の丘辺、学舎は光耀(かが)よひ、真理(まこと)の道の故郷、丈夫(ますらお)は呼び交ひ集ひ、朝に忠誠(まこと)を誓ひ、夕に祖国を思ふ、礎ここに築かん、あらたなる日の本のため。
 2、そびえたつ若人の城、みはるかす人の巷は、風荒み乱れ雲飛び、ゆくてに波逆巻くも、丈夫は理想も高く、朝に勇知を磨き、夕に平和を祈る、礎ここに築かん、あらたなる日の本のため」
 この歌詞のとおりに、卒業生には健闘して欲しいし、我々OBもそうありたい、と思った.

懇親会場を後にしたが、学生会館のロビーは黒山の人だかり。WBC試合が9回裏だという。次の瞬間、「うわー!」という大歓声が会館中に響き渡った。6:0で王ジャパンが快勝した瞬間である。
「お前ら、卒業式に来たのか、WBCの応援に来たのかどっちだ?」とからかったほどだが、昨日から日本中はこの話題で持ちきりである。おとなしい?日本人は、周辺諸国並みに感情を露にしないのが特徴だが、老いも若きも、心の奥底には「愛国心」が沸々と滾っている事を実感した。王ジャパンには、是非世界一になって欲しいものであるが、国の指導者達が、この国民の愛国心をどのように善導するかが今後のわが国の行方を占うカギではなかろうか。残り半年、小泉首相の“愛国心”に期待する。