軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

王ジャパンの快挙をたたえる!

全国民からの(といって良いほどの)期待を背に、WBCに臨んだ「王ジャパン・チーム」は、見事に其の期待に応えた。滑り出しは、審判の“奇妙な”判定に苦しみ、韓国の予想外のパワーに苦戦したが、奇跡の逆転劇で、見事に世界一の座を獲得したのは、王監督の采配は当然ながら、全選手の勝利に向けた意欲がそれを実現させたのだと思う。特にイチロー選手のリーダーシップぶりは抜群であった。最高司令官が王監督だとすれば、彼は優れた師団長というところ。勝利に向けられた其の闘志には脱帽する。私は今回の試合を通じて、彼らに「侍の姿」を見た気がする。
統帥綱領には、「統帥の中心たり、原動力たるものは、実に将帥にして、古来、軍の勝敗は其の軍隊よりも、むしろ将帥に負うところ大なり。戦勝は、将帥が勝利を信ずるに始まり、敗戦は、将帥が戦敗を自認するによりて生ず。故に、戦いに最後の判決を与うるものは、実に将帥にあり」とある。いわゆる「必勝の信念」である。
韓国チームに二敗したとき、そして準決勝進出の芽がつぶれたかに見えた時も、彼らは決して「敗戦」を意識していなかった。そしてそれが「神」に通じたのである。「至誠通神」とも言う。あの,“変わった審判”から、変わった判定が下されたときも、スポーツマンシップを失わず、悔しさと怒りを抑えて「勝利への原動力」に変えたのは見事であったとしか言いようがない。今回のWBC試合は、自信を失い、全てが低迷してさ迷っているかに見えるわが国民に、久しぶりに「渇」を入れ、「希望」を与えてくれた。
昨日は電器ショップは黒山の人だかり、「号外」が町を活気づけ、今朝の産経新聞には「号外に殺到して3人が軽傷」とあった。有楽町の「マリオン」前で、日刊スポーツの社員が号外を配布し始めたところ、買い物客らが殺到、転倒した32歳の女性ら3人が軽傷を負ったものである。「配布が始まったとたん、近くに居た買い物客ら四百―五百人が殺到した」というから、如何に国民が日本チームの勝利を期待していたかが分かろうというものである。それに彼らは見事に応えてくれた。そしてそれを支えたのが、国民の「団結心」と「神のご加護」だったのだともいえるだろう。
漫画家のやくみつる氏は、「イチローは試合後に見せた子供のような表情が印象的。当初はこの大会がどれほどのものかと思っていたが、彼に真剣さがチームやファンを引っ張り、大会の雰囲気をぐっと引き締めたと思う。短い大会だったが、子供から御年寄りまで野球の試合に一喜一憂、まるで昭和の風景が甦るような貴重な体験だった」と語っているが同感である。
WBCの「勝利の喜び」が町に溢れかえったこの日、わが国の政治状況は、相変わらず普天間基地を巡る問題、ポスト小泉前哨戦、あの「偽メール」事件で有名になった永田議員の弁明・・・など、“全て”が国民の気持ちとかけ離れた話題?で全く新鮮味がない。
一方、国際情勢では、中露は「米国への対抗色」を濃くし、ベラルーシも予断を許せない。
前回私は「愛国心」について書いた。健全な愛国心を呼び覚ますのは、強力な指導者のもとの、健全な「まつりごと」にある。
産経抄」は、「国を背負って戦うことの重み、それを乗り越えたときの喜びの大きさを教えてくれた」と書いた。しかし、国民は「今のまつりごと」には全くそんなことなど期待していないように思われて仕方がない。それは今の政界には、「王監督」や「イチロー選手」のような「国を背負った戦い」を意識した人物が見つからないからかも知れない。
何はともあれ、国民に「愛国心」を意識させてくれた「王ジャパン・チーム」に最大の祝意を表したい。