軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

東アジアの軍事情勢と日米安保

このタイトルは、今日の討論会の議題である。先週に続いて、今日もチャンネル桜で、「闘論!倒論!討論!2006 日本よ今」の収録があり約四時間参加してきた。
出席者は、松島悠佐・元陸将、森満・元陸将補、古庄幸一・元海将、山本誠・元海将、川村純彦・元海将補、松井健・元空将補、三宅教雄・元海上保安大学校長、それに私であった。
いわば現場を熟知した軍事専門家の集まりだったから、軍事的観点から見た自衛隊が抱える問題点、海上警備に関する具体的問題点など、他では聞かれない内容の討論であったが、確かに『コメント』にあったように、このような安全保障に関する番組が、一般の地上波で報道されるようになる事が望ましい。チャンネル桜で自慰行為をすることなく…とは厳しいご指摘だが、元自衛官などが、いわゆる民間放送などに招待されて、存分に自由な意見が発表できるようになるには、もっと時間がかかるように思う。もっとも、その頃には、「地上波放送」は『痴情派放送』に落ちぶれて、インターネット全盛になっているかもしれないが…
放映は5月20日(土)の夜9時から12時までである。

その後午後5時からは、岡崎研究所に戻り、北京からの4人のお客さんと会合を持った。昨年11月に訪問した、中国社会科学院日本研究所の幹部達である。半年振りに会ったが、駆け足で日本国内を旅行するという。11月に会議に参加した日本側のメンバーが打ち揃って、夕食を共にしながら、忌憚のない意見交換が始まった。我々は中国語を話せないが、日本研究所の幹部だけあって彼等は皆流暢な日本語をしゃべるから会話に不便はないものの、些か気が引けるが仕方ない。
ところが面白い事に、岡崎理事長は漢詩に造詣が深いが、本場・中国の研究者達は『漢詩に弱い』のである。これで『バランス』が取れた!と勇気が出た!
想像通り、文化大革命の傷跡は相当に深いものがある。最年長者は、間一髪文革前に学業を終え、若手の3人は文革後の育ちだから、それほど影響はなかったとは言うものの、国家全体としての損失には計り知れないものがあったことだろう。
彼等が尊敬する人物は、周恩来訒小平だと言う点では一致したが、その共通点は『馬上経験者だ』というのである。つまり、自ら戦場を体験したもの、現場を知っているものという意味であり、訒小平は何度も窮地を脱した経験者で、机上の空論を弄んでいないから尊敬するというのだが、なるほどと頷かされた。日本の指導者にも、『馬上経験者』がいなくなった。
話を聞いていると、今回来日した彼等の最大の関心事項は、ポスト小泉であり「安倍か福田か」という点にあったのは、情報収集と言う点では当然だが、どうも日本の全国紙を相当過信しているようで、さて、彼等の予測がどう出るか、多いに楽しみ…という感じであった。
いずれにせよ、狂気のようにこの問題を取り上げて、中国に都合の良いような論調を掲げている新聞社との何らかの連携プレー?が感じられないでもなかったが、どちらが首相に選ばれてもそれは日本人の問題であって、余り“干渉的な”発言や行動は取らない方が良いだろう、という我々の忠告は理解できただろうと思う。
その昔、会議の席で突然『江沢民主席の日本訪問は失敗だったが、その原因はどこにあると思うか?』と問われて驚いた事がある。2ヶ月後に時の朱首相の訪日が控えていたから、彼等としては“反省”して、訪日を成功させる為の何らかの情報が欲しかったに違いなかった。
今回もその雰囲気を感じたのだが、「将軍のブログは大変面白い。前回の会議録は参考になりました」と言われて感心した。ちゃんと気にしてくれているらしい。私(我々岡崎研のメンバー)は、歯に衣着せずに発言しているので、日中間の無益なトラブルを避けるためにも、大いに活用して欲しいと思った次第。