軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

急ピッチで進む「対日工作」

今朝の産経新聞一面の「首相を選ぶのは誰か」の欄に、湯浅博特派員が「中国の戦略目的変わらず」と冷静な分析をしている。「これらは中国が『ある意図』をもって、より柔軟な外交戦術を選択した」わけで、「注意を要するのは、戦術が変わっても戦略目的は変わっていない事である」とし、時系列で動きを追った結果、①3月に日中友好団体を呼んで『靖国参拝を止めるように』ゲンメイしたこと、②4月の米中首脳会談失敗、を上げている。つまり、孫子の兵法で言えば、「下策」から「上策」に転じたのだというのである。「日本人は情報工作の『インテリジェンス』にウブだから、実はこの方がよっぽど手ごわいといえる」というのだが同感である。
しかし、湯浅氏が上げた過去の時系列で忘れてはならないことがある。それは、肝心の王毅中国大使が、今年の初めに一時帰国して、一ヶ月間も任地を離れていたという事実である。その間に「どんな対日工作」が中国政府部内で決定されたのか、そこに注目すべきであろう。王毅大使は日本に戻るや各地で講演して回っている。今回、中国から多くの研究者達が、堰を切ったように来日した事と決して無縁ではあるまい。工作活動にからっきし弱い、ウブな我々は、9月の自民党総裁選を意識して、慎重にこれらの動きを観察すると同時に、工作に掛からないようにしなければならない。日本の将来は、日本人である我々が決める事である。
中国は戦後早い時期から『対日工作』を推進し、現在は「第二期」を終わって「第三期」に入っていると思われるが、対日工作の中心は「在日大使館」であり、大使がその中心だ、と分析されている。直接の部下達は、勿論大使館員たちだが、日本国内に「留学」や、「交換教授」名目で派遣されてきている多くの中国人たちがその傘下にいて、学内は勿論、各界、特に『マスコミ会』で大活躍していることはもっぱら知られているが、殆どの日本人は、湯浅氏が言うように『ウブ』だから、一留学生、一教授の意見として取り扱い、何の「懸念」も抱いていないのが実態である。歴史を見れば明らかなように、中国は『独立?』以来周辺諸国との戦争に明け暮れてきたといっても過言ではない。昨日の産経新聞によれば、中国社会科学院・日本研究所所長・蒋立峰氏が、日本の研究者達と激論を交わしたそうだが、『日中戦争は明らかな日本の侵略だ』と言ったものの、チベット支配は『侵略ではない』と言ったという。日中安保対話を通じて感じる事だが、今中国各地で起きている「騒乱」の中には、単に「経済格差」だけの不満でおきているものばかりではないことに注意すべきだという事である。
戦後の中国共産党による『強制的?併合』を『明らかな侵略だ』として周辺各地で「独立運動」が高まっているのは事実であろう。ウイグル地区などはその典型的なもので、中国はそれを「テロ」だとして封じ込めようとしているのは承知のとおりである。日本をウイグル並に「併合しよう」などという野心は持たない方が良かろう。
台湾に対する『軍事力行使』という威嚇も、実は「台湾独立」を認めると、ウイグルチベット、モンゴルなど、周辺各地で「独立運動」が活発化する事態が生じることを、中国政府は何よりも恐れているのだ,と私は分析している。つまり、舵取りを誤れば、1990年にソ連が解体したように、中国も『分解する』恐れがあるからである。
今回急遽来日した蒋立峰所長は、国の機間の長として、チベット支配は『侵略ではない』と言わざるを得なかったのだろうが、やがて真実が暴かれる時が来るだろう。それはさて置き、このような歴史認識に関する『闘論・倒論・討論』が日中双方で行われる事は、日本にも、一部の政治家やマスコミや経済人のような「親中派」ばかりがいるわけではない事が分かるだろうから、彼等にとっても視野が広がって大いに良い事だろう。今回も、今後日中両者は、互いの主張を戦わせる機会を持つ事で合意したというから大いに期待したいものである。