軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

対中円借款凍結解除の弱腰

ようやく山積した資料の「高さ」が目線まで下がり、デスクまでの到達時間が早くなってきた!すばらしい陽光とすがすがしい空気の中で、新聞に目を通す余裕ができたが、テレビで知ってはいたものの、中国との外交がそんなに気になるのか、外務省は「友好」を再開したいらしい。
今朝の産経新聞3面に、対中円借款凍結解除について、「改善ムード醸成?」と首を傾げた記事が出ているが、多くの国民も首を傾げたことであろう。
「今回の決定は、中国が5月にカタールで約1年ぶりの日中外相会談に応じたのを受けたもので、首相の靖国神社参拝や東シナ海ガス田開発をめぐる対立など解決困難な問題を当面棚上げしてでも日中改善のムードを高めようという外務省の思惑が透けて見える」という。相手に文句をつけ、一年ほど様子を見ていたら、相手がお土産を持って尋ねてくるのだから、彼らにとって日本とのお付き合いは「たまらない魅力」であろう。
政府は、今時なんでそこまでして国民の血と汗の結晶である740億円もの供与を決めたのか?しっかり説明してもらわないと困る。
一人中川農水相だけは、「何でまた援助を再開するのか、正直言ってわからない」と疑問を呈したそうだが、まったく同感である。
案の定、中国外務省の劉建超報道官は定例記者会見で、「両国関係を重視する日本側の姿勢を歓迎する。しかし不十分であり、両国関係の改善と発展のために具体的な行動をとらなくてはならない」と日本側の前向きな対応を求めたという。盗人猛々しいとはこのことである。「被害者」が、「犯人」にみやげ物を差し出し、媚びへつらって「お許し」を乞うている図式そのものである。
たぶん、中国に滞在する日本側の外交官たちが、このままでは「息が詰まりそう?」なので、相手国にご機嫌伺いをしているのだろう。たぶん親中派の議員たちにも、何か「指令」があったに違いない。そうであるならば、自分の金で「清算」してほしい。人の金は使ってほしくない!
「正論」欄に、クライン孝子さんがいいことを書いている。「国際情勢が読めぬ日本外交の稚拙さ」というタイトルだが、冒頭に「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙などが最近報じたところによると、またもや中国における日本製品の大がかりな偽造集団の存在が発覚した。狙われたのはNECで、同社製品の海賊版製造・販売にとどまらず、下請工場との契約までNEC名を騙るなど会社組織を丸ごと「偽造」する信じがたい手口だったという」とある。
クライン女史は、ドイツのメルケル首相が訪中に際してバチカンと連携した事実を挙げ、それに比べて日本外交のお粗末さをこう書いている。
「どうも日本は、こうした国際情勢の把握や判断が稚拙というか下手である。知ってか知らずか、常に中国側にスキを与えて振り回されている」「対等外交のイロハとは、まず豊富な情報をもとに相手と対することにある。譲歩や妥協はそのあとに続くものであろう」
今回、対中円借款凍結解除を決定した責任者の方々に、ぜひ読んでいただきたいのだが、絶対に読みもしないし、「結果責任」も取らないことがわかっていることが情けない。幼少期に「喧嘩」を体験したことがない、お坊ちゃまたちに、所詮「海千山千」相手の外交は無理だという証明だろう。