軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

講演会にて

23日昼、久しぶりに都心の三軒茶屋に出て講演をしてきた。世田谷偕行会、つまり旧軍人の方々の集まりで、60名を越える錚々たる方々がお集まり下さった。
演題は、「わが国を取り巻く情勢・・・体験的報告」とさせていただき、1、北方領土問題。2、朝鮮半島問題。3、台湾問題。4、わが国の危機(結び)として、約一時間半、樺太や韓国、台湾と北京、上海などの視察、会議などを通じた所見を申し上げた。
とにかく実戦経験がある大先輩を前に、戦後育ちの単なる戦闘機乗りがしゃべるのだから気が引けたし、その上転居作業で聊か体力消耗気味で、声がかすれたのが申し訳なかった。
懇談の場で、多くの先輩方から声をかけていただいたが、私が「朝鮮半島問題」の中で、「山賊」と「弱者」に「紳士的交渉」は通じない!と述べたことに、実戦体験を通じて「全く同意である」と言う方が多かった。
「相手を見て交渉せよ」と言うのである。育ちも学歴も、その上閨閥も「上流」である外交官が、シャンペン片手に交渉?するのじゃ埒が明かない!山賊とは「どぶろく片手に、ふんどし一本で怒鳴りあって始めて決着がつくものだ」と言う体験談に納得。
乾杯の音頭を取った高橋正二先生は、旧大本営参謀で、陸士43期生だが、ご高齢にもかかわらずかくしゃくとしておられる。昨年暮れ、転倒して背骨を骨折されたそうで、杖を突き、ご夫人が付き添っておられたが、なんのなんの、声にも張りがあって「本物の軍人」は大したものだ、と舌を巻いた。
その高橋先輩が去り行く小泉首相に4つのお願いをされた。
1、皇室典範改正問題有識者会議を即刻解散せよ。
2、金正日を日本に招き、拉致問題などに決着をつけよ。
3、イラクに行き、自衛隊を激励するとともに、現地で「警護」に当たってくれた各国関係者に自ら謝辞を述べよ。
4、8月15日に靖国神社公式参拝し、公約を実行せよ。
会場からは大きな拍手が沸いたが、2、は相手が承知しないだろうから無理だとしても、後の3つは実行してほしいと私も思った。

さて、ワールドサッカーも「敗戦」で終わった。へそ曲がりの私は、メディアが「大いに持ち上げる」と、「果たしてしかるか?」と反対のことを考える癖があるから、今回の結果は予想通りであったが、それはさておき、とにかく「攻撃力」に欠けていることを痛感した。私も若いころは剣道の試合に出場したものだが、その経験から言っても「攻撃は最大の防御」なのである。日本選手の「サッカー技術」は相当なものだと思うが、試合は「勝たなくては意味がない」。中田選手のインタビューを通じて感じた点はそこにある。個人技がいくら優れていても、パスワークが見事であっても、ゴールのポスト内に球を蹴りこまなければ「勝つ」ことは不可能である。「下手な鉄砲も数撃チャ当たる」のである。
私は元自衛官だから、実はいつも心配していることがある。それは「攻撃」を忘れた「軍事力」の無意味さである。
防衛庁防衛省)」「防衛予算」「防衛大学校」「自衛隊」・・・などと、いつも「受身」の「専守防衛」でいれば、軍事力とはこんなものか?と勘違いして、攻撃訓練をしなくなる。今の自衛隊の教範に「進攻作戦」と言う項目はないはずである。「進攻」は「専守防衛」を逸脱する、と言うのが当時の政府の考えだった。
「防衛作戦」は、軍事作戦の「ホンの一部に過ぎない」のである。自衛隊は、「防衛作戦が」すべてだ?と勘違いしているところがある。いや、政府からそう「強制」させられているのである。
サッカーの試合を通じて、自衛隊員のみならず、スポーツ選手までが「専守防衛思想」に犯されてしまっているのではないか?と感じて、「これじゃ勝てない」と思った次第。