軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

エイズ対策食い物(産経)

今朝の産経新聞3面に、北京特派員の福島香織記者が、表記のような面白いことを書いている。
売血によってエイズの病原ウイルスHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染が広がった中国河南省上蔡県で、地元の中国共産党幹部らが中国政府などの治療支援金や医療補助金を横領していたことが明らかになった。その額は1億元(15億円)にも達すると見られる」というのである。「1年間にわたる取調べの結果、楊書記の在任中の5年間で、中央政府の支援金の一部が楊書記ら20人の県幹部に横領されていた」というのだが、中国政府「などの」、支援金の「一部が」とあるから、まさかわが国からのODAもその中に含まれているとは思いたくないが、あの国の『民度からしてありえないことではない。もっとも、社会保険庁岐阜県庁も、その点では『民度』を疑われる同類だが・・・
中でも面白かったのは、「昨年の春節旧正月)に、上蔡県でも特にエイズ患者が集中している文楼村を温家宝・首相が訪問した際、県は村に水道を敷設し、診療所に大量の看護婦、医師を派遣。事前に感染者のうち希望者に豚を贈ることまで約束して、県がいかに感染者に配慮しているかをアピール。温首相が村を去ると同時に水道は止められ、医師、看護婦も村を出て、豚のプレゼントも立ち消えになったという。
さらに温首相は、村人一人に付き「お年玉」10元(約150円)を配ったが、県政府は村の人口を883人水増しして申請し、少なくとも8830元(約13万3000円)を詐取したという」というくだりである。

昨年11月、ロシアと国境を接する町で、川に有毒物質が流れ出し、温家宝首相が自ら現地に飛んで指揮をとっている姿を、滞在中の北京のホテルのテレビで見たが、首相は「人民が飲料水に困っている」と聞き、直ちに県幹部に飲料水を補給するよう指示したと報じられていた。そのため、各地でミネラルウォーターの「ペットボトル」が大量に消費され、手に入りにくくなるという影響が出たらしいが、私はこれを思い出した。あの時も、キット「ミネラルウォーター」配給をめぐって、県の幹部たちは「いい思い」をしたに違いない。

以前中国の地方をめぐったとき、各地で面白い話を聞いた。李鵬首相は、地方視察で必ずゴマすり幹部から揮毫を頼まれる。李鵬氏は気軽に応じて揮毫するらしいが「字が下手」なため?、通常は「倉庫入り」して日の目を見ないという。しかし、本人が視察に来るとなると、直ちに目立つところに掲げられて、ご機嫌を取り結ぶのが「地方幹部」の任務?だというのである。李鵬首相は「裸の王様」だと言ってしまえばそれっきりだが、中国人の本性を良く表現している、と感心したものであった。
ちなみに桂林空港についてホテルに向かったとき、立派な舗装道路であるにもかかわらず、異常にマイクロバスが揺れて、メモも取れない。ガイドに聞くと「この道路は汚職道路だから」と平然と言い放った。観光地でもホテルでも、このことを聞くと、人民は『汚職道路だ』とはっきり“認定”しているのである。
多分、今回の上蔡県での出来事も、楊一派の横領行為は人民の周知の事実だったに違ない。中国メディアが取り上げたから表面化したに過ぎず、桂林でも「こんなことにいちいち驚いていては生きてはいけないのが中国の実態」だとガイドは言った。
人民の「本音を知るのはどうしたらよいか?」と聞くと、ある研究者が「人民が陰で言っている言葉を分析することです」といい、「中国ではこんな話があります」とこっそり教えてくれた。
「ある時、江主席と李首相、朱副首相、それに小学生の4人が飛行機に乗っていました。ところが飛行機が故障して墜落することになりました。しかし、落下傘は3つしかありません。江主席は、『私は主席だから死ぬわけには行かない』といって飛び降りました。李首相も『私も首相だから・・・』と言って飛び降りました。朱副首相は『私は年寄りだから、君がこれを使って飛び降りなさい』と言って、小学生に落下傘を渡そうとしました。ところが小学生は『おじさん、僕も落下傘を持っている』と言いました。
朱副首相が『どうして?』と聞くと、小学生は『前に飛び降りたおじさんが、僕のランドセルを背負って飛び降りたのです』といいました」
これを聞いたわれわれは、『誰がランドセルを背負って飛び降りたのか』についてしつこく確認したが、彼は笑って教えてくれなかった。江主席なのか、李首相なのか・・・大変関心ある話だが、そこをぼかすのがいかにも『大人?』らしいと感心する。
いずれにせよ、3人の中では『朱副首相はそれだけ人民に好かれているというたとえ話・・・』ということであった。この話は、ソ連共産主義社会で流行した事例に共通している。現在、胡錦濤温家宝体制が人民にどう評価されているのか知りたいものだが、この記事を見る限りでは、少なくとも温家宝首相は、上蔡地方の共産党幹部からは『コケ』にされていたように思われる。
2年後に迫った北京オリンピックはうまく開けるのかどうか、何よりもオリンピックを『食い物』にして、巨額の金を稼いで国外逃亡する党幹部が出現することは、ありえない話ではなさそうに思える。
この国は、水も病気も経済も“危険水域”にあるようだから、その実態に触れた各国記者たちの報道合戦が楽しみだが、彼らが帰国後に、HIVを全世界にばら撒く『運びや』になることだけは絶対に避けてほしいものである。


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