軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「冥王星除外」も良いけれど

今朝の産経新聞を開いて悲しくなった。一面トップは「冥王星を除外」とする国際天文学連合の決定記事だが、広大な宇宙の神秘を覗いてみても、所詮人間には限界がある、という証明だろう。せいぜい80年弱しか生きない人類が、数億年も存在している大宇宙のあり方を「決める」ことなんぞ、天に対して傲岸無礼ではないのか?などと思ってしまう。
そんなことよりも、現実にわが国で起きていることのほうがよほど気にかかる。
30,31面のいわゆる「社会面」のものすごさ!
「談合摘発高い能力・日本の検察を表彰」などというどうでも良い記事もありはするが、そのほとんどが「凶悪事件のオンパレード」だ。
直木賞作家・坂東真砂子氏の「子猫殺し」のエッセーは、人間性を疑うに十分だが、当然抗議が殺到したという。
新宿のデパートで女子店員を「傘で突いた女(31)」が逮捕されたが、精神障害者だったという。被害者はなんともお気の毒である。
「富士山麓絶えぬ不法投棄」を「監視カメラで撲滅」するという。世界文化遺産の富士山頂やその山麓に、不法投棄する業者らが後を絶たず、静岡県が監視カメラを設置して追放に乗り出したというのだが、設置費用はどうするのだろう?静岡県民だけの負担なのだろうか?モラル退廃も極まった。
知的障害者施設」で「ナシ4200個が盗難」にあったという記事も情けない。大分県での出来事だが、「弱者」の喜びを奪う悪質さ!。
シュレッダー事故が大きく取り上げられ、「リコー機でも重傷」だそうだが、安全意識欠如、安全管理無視の実態は三菱自動車パロマガス器具、ふじみ野市のプール管理などなど、とにかく戦後日本人の脳裏から「危機意識」が消滅した産物だろう。
シュレッダーなんて、官庁や特別の会社などが主用していたに過ぎないものが、一般家庭に入り込んだのは「個人情報保護法制定」による。一気に「儲けようと」量産したメーカーは、一般家庭には幼児や使い方を知らない主婦などがいて、危険この上ないことをすっかり忘れていたに違いない。「想定していなかった」とは笑わせる。
裁断口に金属が入り込めば、刃を傷つけるから、ホッチキスの針は取り除けとか、使用上の注意書きがあるはずだが、ならば「裁断口」を深くしたり、紙を取り込む部分に「リードのためのガイド(プリンターにつける)」を付けさえすれば、金属片はおろか、子供の指を切断する悲劇は救われたのに。「拡販一辺倒」が招いた悲劇だろう。
31面はもっとひどい。「無資格で助産行為」をしていた横浜の産婦人科病院、「エレベーター点検」中に「同僚」が「誤操作」したため「検査員が挟まれ死亡」したという。基本が全くなっていない。
埼玉での「中一放火、弟焼死」事件は、「自宅全焼・親困らせようと」した13歳の長男の犯行だったという。
愛媛では「いじめで中一自殺」、宮崎では「刃物男」が「高1刺殺」「高2女子重傷」だそうだが、犯人は20歳の薬物中毒患者?だという。言語道断の事件だが、発生時刻が「24日午前0時45分ころ」とあるから、たむろしていた5人の高校生たちにも落ち度はある。「現場の堤防では深夜に若者が花火や飲酒をして騒ぐことが問題視されていたが、延岡署によると、5人が花火をしたり、飲酒をしたりしていた状況は無かった」というが、最近の風潮から、未成年の深夜徘徊は全く放置されている。親は「殺される?」のが怖いからかしつけもせず、社会一般も見てみぬ振りをしている。
昔は「門限」が厳しかった。我々の防大時代はさらに厳しく、成人になっても!一分でも遅れれば「訓戒」が待っていたから、這ってでも帰校したものである。今は懐かしい思い出だが、若いころに厳しいしつけをすることは大切だと思う。
事件を知った教頭先生が号泣したそうだが、「君子、危うき似近寄らず」という格言を教え、学生たちにもっと社会性を身に着けるよう指導すべきだと思う。勿論「キチガイに刃物」を野放しにしている状態を事前に取り除くのは、社会全体の責任なのだが。

そんな中、「葬送」欄の、作家・吉村昭氏の記事は胸を打った。「吉村昭さんの最後を妻で作家の津村節子さんが語ったとき、わが耳を疑った。闘病の床にあって、自ら点滴の管などを引き抜き、看護師に『もういいです』と言ったのだという。津村さんは『自分の死を決めたことは、彼にとっては良かったかもしれません。でも、私は目の前で自決する姿をみとったのです。あまりに勝手な人だと思います』と泣き崩れた」という。
自分の最後を自分で決められないもどかしさが現代の象徴だが、「昭和2年、東京・日暮里生まれ。東京の下町を愛した」作家は、自分で自分の人生に決着をつけたというから、なんとも見事である。未亡人が「自決」と言ったのも古きよき時代感覚?を偲ばせる。私も次の日曜日で67歳を迎える。子供たちが「誕生日の夕食会?を開いてくれる」そうだが、そろそろ自分で自分に決着をつけ、大宇宙に飛び立つ「別れ際」を学んでおく必要がある、と感じたのである。