軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国人の“法観念”

 久間防衛大臣のこのところの発言は聊か気になる。メディアに集中的に「監視」されていることぐらい気がついてもよさそうなものなのに・・・
 今回の沖縄普天間問題に関する発言などは、郷里に帰った安心感からか勇み足だったようだが、沖縄県知事の権限などについては、米国はこの10年間の動きで十二分に承知していることである。問題は「この事業」に関する政治家たちの利権争いであって、この問題に関する歴代防衛庁長官の発言や行動が何を意味しているか、とっくの昔に承知している。両国首脳が“約束”した事が、10年経っても未だに進展しないことに、いまや苛立ちどころか極めて強い不信感を抱いているのである。進展しないことを喜んでいるのはどこかお分かりだろう。
 自民党だけではなく「最大野党」の民主党にしても映画「3バカ…」に例えられる同党のコマーシャルに呆れているのであって、早速角田副議長の辞任問題で馬脚を表し、この党が日本国民の信頼を失っていることも承知済みである。
 米国は「民主党」と言う看板の下に、その昔共産党よりもひどかった左翼の旧社会党員が蠢いている事も承知している。騙されているのは日本国民だけだろう。
 さて、そんな国内での茶番なんぞよりも、このところの中東に対する米国、アジアにおける中国の動きは急展開しつつあるように見える。勿論ロシアの動きも油断できない。安倍政権は国内だけではなく、国際的にも「四面楚歌」になりつつある。これを突破して『美しい日本』を再構築するためには、国内で息を潜めている声なき声の強力な支援が必要である。国民有志の一致団結が期待されるときであろう。

 ところで、昨日の産経新聞に面白いことが出ていた。7面右下の欄に「緯度経度」と言うコラムがあるが、この日は「腐敗進む『官主』社会」という、中国国内問題解説であったが、その書き出しに「ある中国人学者によると、中国人と西洋人の法観念には根本的な違いがあるという。法令が出ると、西洋人は何をやってはいけないかと受け止めるのに対し、中国人は何をやってよいかと考えるというのだ」とあった。
 そこで私は昨年の日中安保対話での出来事を思い出した。私が台湾をめぐる軍事衝突を避けるように「進言」した際、中国側は「核心問題だから絶対に譲れない!」と声高に反論したのだが、その中で「米国のある学者が『問題が発生しても2週間は米国は動けない』と言ったが、これは『2週間以内に台湾を取れ』という意味だと解釈している」と言ったのである。
 米国の誰が言ったかは答えなかったが、1979年2月に「ベトナムに懲罰を加える」として訒小平が軍を侵攻させたとき、その前にさぐりを入れた各国首脳は「中国の侵攻を暗黙のうちに了解している」と訒小平が解釈したことが伝えられた。
 イラククウェート侵攻も、実は当時の米国大使があいまいな答えをしたことに起因していたことは周知のことである。
 今や、軍事力増強、国内不安、その上衛星破壊実験を強行してアジアにとって最大の「懸念材料」になっている、隣国中国の「工作」の最大の焦点は、日米離間工作にある。久間大臣の発言は、単に国内向けに留まらない。26日のプレスクラブでの「ブッシュ批判発言」は「もう少し言い方を注意しないといけない。感想といえども言わない方がいいと思った」「(大統領が)もう少し慎重だったらどうだったかということを、当時思ったと言ったのだが、それが非常に強く伝わった。日本語と英語の違いかもしれないが、もう昔のことは言わないことにした」と釈明したらしいが、軍事をつかさどる責任者としては軽率に過ぎるのではないか?中国では、日米軍事関係に「ひびが入っている」と分析しているに違いない。
 中国だけではなく、諸外国では自分に都合の良い「法解釈」をするのが常識だということを忘れないでほしい。