軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

ハルノートが突きつけられた!

「北譲らず6カ国協議膠着状態」と産経は報じた。今朝のテレビでは、午前4時ころまで会議が続いていたらしいが、北朝鮮は「見返りに重油200万トンよこせ!」と「法外な要求を突きつけている」という。この会議の様子を私はかっての「日米交渉」と重ね合わせてみているのだが、野村大使の懸命な努力にもかかわらず、米国務省の対応は「木で鼻を括る」ようなもので、時間稼ぎのあと最後通牒とも言うべき「ハルノート」が突きつけられ、ついに日本海軍が真珠湾攻撃に踏み切った。6者協議もこれに何と無く似ている。
 最もあの時は、ハル国務長官が自ら書いた「ノート」ではなく、共産主義者の手によって、ソ連が有利になるような日米共倒れを狙って書かれたノートであり、日米共にコミンテルンの罠にはまったのだったが、金正日の立場を考えれば、今回のような結論は当然分かっていそうなものだ。北から「核兵器開発」を取り上げる行為は、彼らの自滅を意味する。ちょうど人質強盗から拳銃を取り上げたら、あとは警官に射殺されるだけだ、と強盗が居直るのに似ている。大体あの“国”は、もともと「山賊国家」なのであって、常識が通用する“集団”ではない。それをあたかも「西洋並みの国家」として待遇しているところから間違っている。
 その昔、連合赤軍が、浅間山荘に立てこもって家人を人質にして銃撃してきたとき、わが警察官には「武器の使用」が認められず、第一線では出さなくてもいい犠牲者を出したことがあった。この様子を見ていた外人の一人が「何故日本の警官隊は銃撃しないのか?シュート、シュート!」と叫んでいたことを思い出す。
 北は重油も金もほしい。しかしその代償となるべき唯一のものは「核」であるから、これは絶対に手放せない。
 米国も東アジアの非核化なんぞ、実はどうでもいいのだが、ならず者国家に指定した北であるから懲らしめねば済まない。しかし、中東で手一杯。
 中国は気に食わないが一応北とは「友邦」であり、米国の言いなりにはなれない。それより国内問題、特にオリンピックを成功させる必要がある。
 韓国は下手に北に「崩壊される」と困るから、何とか延命策を講じたい。それも他国の援助で。
 ロシアは適度なお付き合い程度・・・。
 こうなると拉致被害者を抱えている我が国がイニシアティブをとらねばならないのだが、今や「真珠湾奇襲攻撃」をする力はない。金で解決できれば・・・などと甘い考えを抱いているものが極めて多い。
 いずれにしても、北にはこれ以上失うものがない以上、国際常識抜きの抵抗を試みるだろう。しかし彼らにも弱点はある。北が一番困ること、それは金正日政権の崩壊であり、それを「えさ」に、中国とロシアを天秤にかけている。しかし、最も怖いのは、金正日個人に対する国内からの離反行動である。経済制裁も効いてきたころだから、そろそろ彼の側近の中からも離反者が出てもおかしくない状態である。その意味で近々予定されている「お誕生日祝い」を注目しておく必要があろうが、その前に、嫌気がさした米国が、クリントン大統領の時のように適当な「妥協策」で逃げを打たないよう、外務省はしっかり米国の動きを監視しておいてほしいものである。
 日米開戦時の日米交渉において、「対米通告文第14部」の翻訳遅れ?による不始末が、真珠湾攻撃を「卑怯なだまし討ち」にしてしまった。外務省内では今でも米国勤務が発令されると、密かに「リメンバー・パールハーバー」と囁かれている筈だが、当時を思い出して、2度と同じ過ちを繰り返さないためにも、ここ一番をしっかりと対応してほしいものである。