軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中東、台湾情勢に注目

 6者協議は一応終わった。北は一息ついた形だが、核施設の無力化を“誠実”に履行するかどうかは不明である。
 中国はこれでオリンピックに総力を挙げられる。韓国はこれまでどおり“支援”出来る。米国は、ひとまずイラク問題に集中出来ることだろう。何せ、ブッシュ大統領の“名誉”がかかっている。そこで我が国だが、100人もの拉致被害者を抱えている以上、おいそれとは北に譲歩できない。安倍総理はそこを明言した。その意味では、ぶれない安倍総理の態度と今回の外務省の努力は一応評価できよう。問題はこれからである。
 今回の6者協議を通じて「自分の国は自分で守る」、これが原則であることを、お人よしな日本人も少しは理解したことだろう。友好国から同情はされても、誰も血まで流す決意はしてくれない。それが国際関係というものである。
 ところで選挙を控えた政府には、弱点がある。やがてなし崩し的に北に迎合し、国交正常化を急ぐようなことがないように、国民はしっかりと監視しなければならない。政府が「なし崩し」になる最大の要素は、この国に潜伏している“外国的要素”の動きである。北朝鮮やロシアと結託している「オーム」や、パチンコ業界に代表される「半島勢力と政治の癒着」などである。その意味では、予算委員会における亀井氏の公明党創価学会問題追及発言が尻切れトンボだったことは残念であった。発言を始めた亀井氏は、若い総理を窘めるのではなく、いじめる?様な発言態度ではあったが、日本政治の最も不透明な点である、自民・公明の連合政権について突っ込んだ。何せ、選挙のたびに住民票を移動する“民族大移動”ならぬ票の集中をする宗教団体の、民主主義を逆手に取った行為が「合法?」だと言うのだから、まじめな国民にはさっぱり理解できない。とにかく憲法の「政教分離原則」に堂々と違反しているのだから、有権者はばかばかしくなって投票に行かなくなる。しかし、票だけが生きがいの候補者達は、ご利益を求めて「思想信条を捨てて」この票に群がる!それがこの集団の狙いなのだろうが、我が国の民主主義の根本が問われていた。亀井氏はそこを切り込んだのだが、時間の制約もあり不完全燃焼に終わった。しかし、彼の質問はもっと大きく報道されてしかるべきだったろう。
 ところで、台湾情勢が緊迫してきた。台湾の馬英九国民党主席が、藪から出た蛇、横領罪で起訴されて辞職したが、これから台湾の総統選挙はますます水面下での激しい戦いが始まるだろう。台湾人は、折角手にした「自由と民主主義」を手放してはならないのだが、李登輝前総統の尽力で民進党が政権を握りはしたが、長年の国民党政権による「愚民化政策」の影響と、金もマスコミもすべて「敵方」の手中にあったため、政治も外交も、ましてや軍事に関しても全くの素人集団が手探り状態でこれまで運営してきた。陳水扁総統が苦戦するのも当然であったと言える。これからは民進党内の改革と人材育成が急務となろう。
 次に注目すべきはイラク情勢である。イラクの「内戦状態」の背後には、イランがいることは明白であるから、米国はひとまず朝鮮半島から手を引き?、イラク問題に全力を傾けることになろう。それが北の狙いでもあった。
 今朝の産経にも、米軍が武装勢力の拠点攻撃で、最近イランがオーストリアから輸入した「高性能ライフル銃」100丁以上が発見されたらしいし、イラン指導部公認の元でイラン製高性能爆弾がイラクに密輸出されていることも暴露されたという。英国のフィナンシャルタイムズ紙もEUの内部報告書が「イランは核兵器に使用可能な兵器級核物質の製造を可能にし、それを拒むことはほぼ不可能」と結論づけたと伝えた。当然のことながら、米軍はイラク国内で限定的行動をしているが、テロリスト達はイランの公式、非公式の支援を得つつイラク国内に侵入して行動している。つまり、イラン国内がテロリスト達にとって「安全地帯」である以上テロを根絶できるわけがない。それはちょうどベトナム戦争で、米国が勝手に聖域を設けてベトコンの“体力回復”を援助した戦例に似ている。ベトナムでは、米国は自分で自分の手足を縛って戦争して、その結果“大敗”した。
 2万人の増派戦力が今後これにどう対処するのか?失敗すればイスラエルサウジアラビアをはじめ中東の不安定さは増大する。石油事情もロシア有利に展開するだろう。これから夏にかけては、中東情勢と台湾情勢からは目が離せない。