軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国国内情勢に注目

 今朝の産経新聞6面に中国が「社会主義と決別か」という記事が出た。3月5日から始まる中国の全国人民代表大会で「私有財産の保護を明記した『物権法』が採択されれば、資本主義化が加速されるのは必至で、社会主義国家のレゾンデトールを問われかねないと強い反発が出ている」というのである。保守派勢力は「同法は憲法違反」として反対要望書をインターネット上に発表したらしいが、この動きは注目に値する。中嶋嶺雄・国際教養大教授は「物件法が可決されれば、社会主義市場経済と称してきた中国が、実質的には資本主義経済体制になることを意味する。中国が、ますます社会主義から遠い地点に向かうのかもしれない。しかし、言論の自由もない共産党一党独裁下での私有財産の保護は、中国社会の格差をさらに広げる恐れがあるだろう」とコメントしているが同感である。
 上海の研究者達との気軽な会話では「どう見ても今の情勢を分析すれば、中国は資本主義、日本は社会主義ですよ」と冗談ともつかない本音の会話が平気で飛び交っているのだが、特に過去の歴史上から「上海」という特殊な土地柄もあって、ここで過ごす者にとってはそう思えても、一歩上海を出るとそうはいかない。北京はもとより、地方では一党独裁の影響が非常に大きいと感じられる。
 同じ産経一面に「訒小平秘録」が連載されているが、これと重ね合わせて中国を読むと、実に面白い。
 7面には「核問題・私はこう見る」というコラムがあり、今日は中嶋氏と同じ大学のウイリー・ラム氏が「『6カ国』中国、アメとムチで北説得」と述べているが、これも中国と北朝鮮の「弱み」を突いたものとして大変面白い。
ラム教授は「胡国家主席の本音は北朝鮮問題を穏便に解決したいということだ。隣国の北朝鮮で異変が起きれば、これまで続けてきた改革・開放路線による経済的繁栄が台無しになる」という北京の外交筋の指摘を伝えているが、裏を返せば、これは「台湾」との関係にも通じる事である。中国にとって、北と南で一気に問題が噴出する様なことがあれば胡錦濤主席の政策は破綻し、政権内で「異変」が起きることは勿論、国内暴動にも繋がりかねない。この様な「苦境?」に立っている胡錦濤主席を人民はどう支持するのか?いや、共産党員はどう支えるつもりなのか?
 権力闘争を「お家芸?」にするこの国の今後の動きは、近隣国である我が国に直接影響しかねない。そんな状況であるにもかかわらず、国内の政治情勢は至ってのんびりしている。教育問題や、国内改革に懸命なのは、安倍総理とそれを支える若手議員達ぐらいなもので、自民党内の老人たち始め、野党もマスコミも若い安倍総理の足を引っ張ろうと懸命である。民主党に至っては、東京都知事の候補者さえも擁立できない体たらく、指導者たる3人が難破船で手を取り合う党のコマーシャルそっくりで滑稽を通り過ぎて哀れを覚える。これが政権奪取を目指す野党の姿だろうか?「民主党」は早い段階でシャッフルし直して、「民主党」の看板に隠れた極左勢力と、それに飽き足らない、民主・自由主義をとる「旧自民党系列議員」とに一日も早く解体して出直すべきだろう。4月、7月、そして年末と、歴史の転換点になる恐れがある期限が迫っている。政界再編成は急がれるべきだと思う。こんなことだから国民の既成政党離れが加速し、東京都知事に「建築専門家」が名乗りをあげるような事態を招くのである。
 ところで来週早々、上海国際問題研究所から岡崎研究所との会合を持ちたいと申し込みがあった。年に一度の会議を持つことが原則になっていて、今年は我々が上海・北京を訪問して、侃々諤々の本音の討議をする予定だったのだが、今回は急な申し込みである。勿論「NPO団体」である我々は、誰に気兼ねすることもないので融通無碍に対応するが、歳費で活動している現役の議員さん達にも、もっと緊迫する国際情勢に注意を向けて欲しいと思う。