軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

過去に学ぶのも悪くない。

 今までは、中国人、ブラジル人などによる凶悪犯罪で日本人が被害者になることが多かったので悔しく思っていたのだが、このところ、日本人による犯罪が報じられ恥ずかしい限りである。28歳の異常な日本人青年に殺害された英国人英会話教師・リンゼイさんのご両親と婚約者には心からお悔やみ申し上げたい。
 一方、横浜を出航した豪華客船「オーロラ号」にただ乗りしてハワイまで行った40歳の日本人が逮捕され強制送還されたが、動機は「大きな客船に乗りたかった」からだそうで、その未熟さにはあきれるばかりである。40才にもなって「料金を払わないで乗れる」とでも思っていたのだろうか?
 異常性格者や殺人者、彼のような幼稚な大人が我が国に増えたことが情けない。

 
 昨日はイラン武装勢力に「拉致されて拘束された英海軍兵士」を奪還するため、英国は勿論、米国までもが威嚇のための軍事演習を開始したこと、空母・ステニス艦長の「脅威を与えるような行動は取らないよう注意した方がいいとの強いメッセージだ」という発言も紹介した。
 つまり、自国民が「拉致」されたり不法に拘束された場合、普通の国はこうした行動を取るのだ、という実例を紹介したのだが、2名の兵士を誘拐されたイスラエルが、軍事攻撃したことも忘れてはなるまい。成功不成功は別にして、これが「自国の納税者に対する政府の果たすべき責任」だということを今の日本人は忘れている。つまり、軍事力なき外交の限界である。

 
 ところで昨日のブログに「暴支鷹懲」と書いたら、早速ある先輩から「今の若い者に分からないだろうから解説をつけるべきだった」と助言されたが「何のことですか?」という後輩からの問い合わせがあって面食らった。やはり先輩の心配は的中した!
「暴支鷹懲」とは、一言で言えば「乱暴で度が過ぎる中国に鉄槌を下す、征伐して懲らしめる」という意味である。
 私が理解している限りでは、昭和12年7月7日に中国の北京近辺の盧溝橋で共産党が主導した発砲事件が起き、これがやがて大東亜戦争に発展してしまうのだが、そのとき東京朝日新聞は「不法支那兵わが駐屯地に発砲」「暴戻南京政府断乎鷹懲」という見出しでこれを伝えた。その後現地停戦協定が出来たにもかかわらず、中国側の一方的な違反が続き、ついに近衛首相の「重慶政府を相手にせず」との談話が発表され我が国は泥沼にのめりこんで行ったのだが、その最初の対中煽動記事がこれである。参考までに言うと蒋介石側は「日軍背信向我進攻」と書いた。 つまり「日中両軍に発砲者はいないのになぜか銃声がとどろいて互いに『お前が犯人だ』と言い合っている」状態だったのである。
 戦争なんてこんな些細なこと(といってもこの時はコミンテルンの壮大な罠が仕掛けられていたのだが)で、双方の大衆意識に火がついて、誰も止められなくなるものである。メディアの恐ろしさはここにある。そこで今日は、ご参考までに再び手元の古い資料をご紹介しておこう。
 大東亜戦争(ここでは太平洋戦争とあるが)中の新聞記事の代表的なものを集めた本『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』を取り上げてみよう。


 日米開戦を最初に伝えたのは有名な12月8日午前6時の大本営発表で、午前7時にNHKラジオがそれを伝えた。実は開戦を9日の朝刊で伝えたのは当時の東京日日新聞(現毎日新聞)で、朝日は9日の夕刊であった。それが原因だったからかどうか知らないが、両紙の報道合戦はその後エスカレートしていく。
 17年8月1日の朝日新聞には、時の東條首相を持ち上げた記事が出ているのが面白い。『日本の強さを象徴する首相』として、首相の一日を紹介しているのだが、『東條さん』と親しげに呼び「国民は東條さんとともにどこまでも、勇敢に、明朗に大東亜戦争を戦い抜かう」と結んでいる!


 また、日本政府は17年5月に兵力不足を補うため、朝鮮における徴兵制施行を決め、昭和19年度から実施すると発表するが「澎湃たる民意に応ふ」と書き、「多年の念願実現。半島同胞・徴兵制施行に歓喜」「朝鮮・徴兵制に感激の波高し。上京して宮城奉拝。一死・応え奉らん。感謝の手紙数千通」と書き、さらに17年6月11日付の夕刊には「朝鮮人からの感謝の手紙が殺到している」と写真つきで報道しているのである。ノムヒョンさんや金さん、マイケル・ホンダさんに見てもらいたいものである。
 戦況が悪化してくると、今度は「敵来らば『一億特攻』で追い落とそう」と婦女子まで煽る。20年4月16日の朝刊社説には、何と『老人も女も来るべき日に備えよ』として『手榴弾の構造を図示し、投げ方が早いと危険』と詳細な手榴弾の使用法を丁寧に解説しているのである。反戦護憲派人権派、特に女性の人権にうるさい社民党系女性代議士に是非読んでもらいたいものだが、“男女同権”“ジェンダーフリー”だから文句はなさそうである!


 今更同社に「反省」を求めるつもりは無いが、当時をもう一度振り返って見ることも無駄ではあるまい。戦後、中国政府は一貫して日本に「歴史認識」を強要している。同政府と懇意な、日本を代表する朝日新聞社も「己の過去を振り返ってみること」も決して無駄ではあるまい。