軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

『君のため』とは?

 昨日は都心のホテルで友人と会ったのだが、ロビーも喫茶室も、中国語が溢れていたから、上海のホテルに滞在している錯覚に陥った。安全な食を求めて来日している?のかもしれない。
 夕方はそのまま勉強会に出たのだが、軽く夕食をとろうと、蕎麦屋に入った。飯田橋駅界隈は、一歩裏通りに入るとまさに『3丁目の夕日』そのままの雰囲気が残っている。この蕎麦屋も老舗らしかったが、5時ちょっとすぎだったから、私のほかには7名の御老人方の「小宴会」が入っているだけだった。
 蕎麦を待つ間、テレビの相撲中継を見ていたが、店の片隅で盛り上がっている小宴会の、元気な話し声がどうしても耳に入る。紛糾していた話題は「“君のために”の“君”とは誰を指すのか?」というもので、例の特攻隊映画鑑賞後の意見交換会のようであった。見たところ年齢は80歳前後、もしかして・・・?と耳を澄ましていたところ、やはり「特攻隊体験者」らしい。
 「あれじゃ『君の為』の『君』とは『恋人やお袋』に限られていて、まるで『愛人』じゃないか!」という意見が大半で、当を得てない!とクレームがついている。「我々は家族、妻を通して『国民』つまり『同胞』を意識していた。あれじゃ我々の青春時代が誤解される」というのに対し、「犬死だとか、特攻隊員はマインドコントロールされていたとか、評論家や朝日新聞が勝手に書きやがる。すべては朝日が悪い。あの新聞は売国新聞だ!」と意気軒昂である。
 一人が「“君のため”を英語にすると『I go and die for defend my loved one』となり、愛人、愛、恋が優先する。ペトリオットの意味に解釈されない。まるで特攻隊員は『恋に体当たりした』とアメ公は思う。冗談じゃない!」と解説が入った。
 私の隣の席に一人が“脱出?”して来てテレビを見ていると、「オイ、戦線離脱か!」と仲間が迎えに来た。『いや、相撲だ』と彼が答えたとき、丁度テレビは控えの二人の横綱を大写しにした。『相撲もつまんねー』と迎えに来た仲間は「戦線に復帰」していったが、横綱二人が『モンゴル人』じゃつまらないのであろう。
 蕎麦を食べ終え、勘定を払いにレジに行き「あの方々は・・・」と女将さんに尋ねると、一瞬私が煩かったとクレームを付けると思ったらしいが「軍人さん方ですね?私も元自衛隊パイロットでしたから勉強になりました」と言った途端、笑顔で「特攻隊の生き残りの方々で、年に何回かああして集まっていらっしゃいます」という答え。
「皆さんは海軍ですか?陸軍ですか?」と尋ねたが「特攻隊です。それまでは学生さんだったそうです」と言ったから、英語が得意な方もいたし「勝手に海軍の予備学生だったのだろう」と理解した。
 女将さんが「出撃直前に終戦になり、生き残ってしまった、といつも言っておられます」というので、「戦中戦後のご苦労に対し、お酒を出したいのですが」というと、「もうずいぶん召し上がっているので要らないでしょう・・・」とテーブルのほうに目配せする。見るとコップ酒が溢れている!。
 お元気なことは良い事だ、とその場は失礼したが、やはり「特攻隊員たちの心情」を現代人が表現するのは無理だと言うことだろう。貴重な青春を同胞のために捧げた方々が、何時までもお元気で酒盛りを続けて下さることを念じつつ蕎麦屋を後にした。

 ところで今日は今から「武士道」についての、拓大オープンカレッジの「シンポジウム」に、パネラーとして参加する。戦後の「航空自衛隊の一戦闘機乗りに過ぎない」私には、偉そうなことを語る資格はないが、体験談を御披露したいと思っている。

シンポジウム「武士道の復活は可能か」
 第一部 基調講演「私の武士道と死生観」
           エリー・コーヘン駐イスラエル国特命全権大使
 第二部  パネルディスカッション
     エリー・コーヘン大使:井尻千男中村彰彦藤井厳喜佐藤守

 日時 7月21日(土)1330〜1630
 場所 ホテル東京ガーデンパレス・高千穂の間(御茶ノ水

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