軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

『仁』こそ軍人精神の基本・・・蒋介石

『武士道』について、色々なコメントで賑わっているが、今日は蒋介石の持論?を御紹介しておこう。
 日本に留学して陸士教育を受けたからか、蒋介石は「王陽明を学ぶ日本人将校達」に感心した日記を書いている。(蒋介石秘録・1)
「私が日本で留学していたとき、旅行に出かけると、汽車や渡し舟の中で、本を読む日本人をたくさん見かけたものだ。その人たちの多くは、ひとしきり本を読んだあと、眼を閉じて静かに座り、精神を集中して、哲学的奥義の思索にふけっているように見えた。特に陸海軍の将校達は、ひと時も本を手放さずに、一心に学び取ろうとしていた。これほどまでに読まれていたものは、実は王陽明の「伝習録」であった。
 私はその後、書店へ行き、王陽明哲学に関する本が非常に多くあるのを発見した。中には、我が国(中国)で見かけることが出来ないものさえあった。私は、陽明哲学に関係ある本を、財布の許す限り買って研究してみた。その結果、私自身もこの哲学の神髄に触れ、心酔するようになって、ついに悟るところがあった。すなわち、一小国である日本が、このように強大になり得たのは、実は王陽明の『致良知』及び『即知即行』の哲学がもたらした結果である」。
(「蒋介石秘録・1」から)
 そして彼は「日本の明治維新に力強い支柱となったのは、この王陽明の『即知即行』『知行合一』の哲学であり、王陽明の説いたことこそ、実に『大和魂』『武士道』をかたちづくるもので、日本の立国精神そのものにつながってくる」として『日本人は、武士道を、国家民族の魂のありかと見なし、これを大和魂と称して篤く信仰して疑わず、王陽明知行合一の学説を実践した。(中略)これが『明治維新ののち、よく西欧の物質文明を吸収し、列強に追いつき、くつわを並べることが出来た理由である』
 だから米国始め連合国側は、東京裁判という『報復劇』で、『国家民族の魂のありかであった大和魂』を除去すれば、日本民族征服はいともたやすい、と見たのであろう。見事なまでの成果が生まれつつある・・・

 ところで蒋介石は、連戦連敗の自分の軍が余程不甲斐なく思えたのか、『士道とは本来中国の精神である』と書いている。
「日本人は明治維新前に何でも我々中国から学び取ったもので、この武士道までもがそうであった。彼ら(日本軍)の武士道は、中国固有の道徳の一部分と、中国固有の軍人精神の一部分とを取り入れたものである」というのである。
 今の韓国もそうであるが、中国にも「良いものは自分達の発明、悪い物は日本の文化」と決め付ける悪い癖がある。
「中国の古人のいう『三達徳』は『智仁勇』であり、中国古来の軍人精神は『智・信・仁・勇・厳』の五つの徳である。・・・両者とも『仁』の一字が中央にあることを知らなくてはならない」と蒋介石は言い、「『仁』こそは我々の軍人精神の基本であり、中国の一切の固有道徳の一つの中心」だと説いた。

支那戦線で中国軍の無名戦士の墓を建てて参拝する日本軍将兵:インターネットから)
 長くなるから解説は控えるが、西安事件で部下の張学良に裏切られ、天下の大総統ともあろう者が、寝巻き姿の裸足のままで裏山に逃げたが無残にも捕らえられた事、その後毛沢東などの陰謀に屈して『命だけは』救われたこと、南京攻略戦での不手際、自分の部下達を信用出来ず、「督戦隊」という特殊な部隊を配備して後退して来る自分の部下を殺させたことなど、本来、中国軍人精神であったはずの『仁』に悖る行為をあえてしなければ戦えなかった実態、米軍に敗れた日本国が降伏したため、支那派遣軍天皇の命令で『降伏』せざるを得なかったのだが、逃げ込んでいた重慶から南京に進出する際、『敗戦軍?』の日本軍の庇護下で進出した事実。これが「士道を本来の中国精神」とする中国軍の実態だった。そこで彼は「以徳報怨」を掲げて中国軍の『士道精神』をアピールしたのだろうが、事実は日本軍の『膨大な戦利品』を取り上げ、次の『共産軍』との戦いに備える心積もりだったのではないか? 彼はこの本の中で、スターリンと「毛沢東の偽装政策」を非難し、「東北3省にある100億ドル以上の工業設備(大日本帝国の資産)」をすべてソ連の戦利品と強要されたことに抵抗した米大使・ハーレイが、米国政府内に潜伏していた共産党に通じていた者たちによって解任されたことを怨んでいる。
「このようにして共産軍がソ連の手を経て日本軍の武器を入手したことは、公然の秘密とされてきたが、1967年にタス通信がこれを公開した」として彼は「歩兵銃70万、軽機関銃1万一千、重機関銃三千丁、大砲千八百、迫撃砲二千五百、戦車七百、飛行機九百機等」が共産軍に流れたと書いているのだが、これが「以徳報怨」の裏に隠されていた彼の本音だったのでは?と思わざるを得ない。
 彼に本当にそのような「軍人精神」が育っていたのであれば、1949年に国共内戦に破れて台湾に逃亡したとき、3万余の台湾人を虐殺し、以後50年余の間『戒厳令』を敷いて台湾人の自由を奪う独裁政治を続けることは出来なかった筈である。これらの明白な歴史上の事実は、中国古来の『仁』の精神を、彼自身が身に着けていなかったからか、意図的に踏みにじっていたからに他なるまい。
 彼の日記を読む限りにおいては、やはり中国人には王陽明の思想を実践できる素地はないと断言できる。確かに中国の“古人”には偉大な哲学者が存在していたようであるが、特に現代共産主義政権下ではその復活を期待することは出来ないであろう。
 
 情報によれば、胡錦濤主席は軍の掌握に成功したという。他方、温家宝首相が『辞意』を表明したとも言われている。「秋の党大会を控え、激化する権力闘争。経済政策への反発に温一族批判も絡み、誰が漁夫の利を・・・」と月刊誌「FACTA」の広告に出ていたが、インターネット上では「曾慶紅副主席」の子息が、汚職がらみで豪州に亡命?したとも伝わっている。現代中国が拝金主義に犯され、中国古来の「士道精神」を失っている証拠であろう。
胡錦濤と曾慶紅:インターネットから)
「士道精神」を明らかに失っている本家?と、中国から学び取って?大和魂を生み出した「分家」の、どちらが先に「復活」するのか、あるいは「滅亡」するのか。
 今週末の日本の参院選、そして中国の党大会、翌一月の台湾国会議員選挙、3月の総統選挙、5月の総統就任式、ロシア大統領選挙、8月の北京オリンピック、そして年末の米国大統領選挙・・・
 国際的な政治“変動期”である2008年を前に、その鬩ぎ合いは始まっている。

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