軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

苦は楽の種

 昨夜は恒例のサロンで「ABC青山ブックセンター」と題する話を聞いたが、講師の浅井輝久氏は、防大5期卒、元第3師団長だった方である。陸自出身の軍事専門家が、営業停止に追い込まれた一書店の営業に関する問題点を洗い出し、その再建に貢献したというのだから興味深かった。詳細は浅井先輩の著書「ABCブックセンターの再生」(新風者文庫)に詳しいから省略するが、素人の発想がバカに出来ないという感想には同感であった。岡目八目と昔から言う。「軍事専門家?」ぶるのも程々にしよう・・・。
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 浅井先輩の話しの始まりも面白かった。日本は「太平洋側に対する台風と水害」「日本海側に対する地震災害」と連続して国難に襲われたが、今度は月末に「自民大敗という選挙“災害?”」が起きた。これのほうはまだ被害がどの程度か、余震があるのかどうか不明だが、日本は3連続でパンチを受けた。どう復旧するか?というのである。

 さて、選挙の結果についてはコメント始め色々解説されているから詳しくは書かないが、nasi氏が紹介してくれた
http://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke』は、まとめとしては大変面白いと思う。御一読をお勧めする。
 私は、以前このブログに、安倍首相では都合が悪い一部メディアが『安倍政権打倒』を掲げて、北朝鮮などの国外勢力と共同して奮戦している、と書いたが、彼らにとって残念なことに安倍首相は『続投』を宣言して、敢えて困難に立ち向かう決意をしたから、彼らの目論見はもろくも費え去った。拉致問題を風化させようとしてがそれが出来なくなった今、この勢力は次の作戦を考えているに違いない。
 大勝した小沢代表率いる民主党も、聊か想定外の喜び?だったところもあったようだから、今後のマニュフェスト実行段階で、色々内部から齟齬が出てくるに違いない。「敵失」で得た勝利、次は自民党に「敵失」を与えないよう、二大政党の勇らしく、支持者を失望させないように出来るか否か?そこが今後の問題だろう。
 今回の選挙結果に対する中国の反応は、安倍首相の指導力は低下し、政権の不安定化は必至だが、相互の『戦略的互恵関係』に影響はないと見ているという。中国側も、今日本の政治環境が急変することには慎重だったというところだろうか。オリンピックを控えた胡錦濤主席も、国内安定が第一なのであって実は動きが取れないのである。

 ところで今朝の産経新聞31面に、大阪選挙区で「知名度・地盤ゼロ。でも128万票」取った「うめむらさん」のことが出ていた。民主党新人の梅村聡さん(32)のことである。
 平成13年3月、大阪大学医学部卒、まだ阪大大学院在籍の内科医で、親族などに政治家はいないという。民主党の公募公認候補にチャレンジした結果だそうだが、「医療現場を知らない人間が法律、制度をつくっている。被害を受けるのは患者さん。こんな状態はおかしい」と立候補したそうだが、阪大では出馬を歓迎しない教授に「(政治的な)要求なら自民党を通じてすればいい」「黙って仕事をしとったらええんや」と言われ、新米医師が文句を言うなといわんばかりの罵声を浴びせられることもあり、母親からも猛反対された。個人演説会では、内科の勤務医時代に診療報酬を「稼ぐ」ことが求められた体験などを紹介。白衣を着て街頭に立ち、現場で感じた医療改革を訴え続けたという。彼の願いは「医療と社会保障が世界一になり、子供達に残せる日本を作りたい」というのだから、その精神はむしろ安倍首相に通じるものだろう。
 以前、私が選挙に出ると勘違いした方がいたが、同姓の「佐藤正久」ひげの隊長も比例6位で当選した。彼にも国際貢献など、軍事の第一線での体験を元に、大いに政治家の防衛意識を向上させて欲しいものである。
「うめむらさん」の記事が示しているように、「現場を知らない人間が法律・制度を作り」旧態依然とした感覚で「黙って仕事しておけ!」という高飛車な態度の時代は終わりつつある。
 他方、安倍首相の続投意思は、アジア周辺に政治的ブランクが生じることを防いだし、何よりも安倍落しを狙った「敵対勢力」にとっては想定外だったであろう。その意味ではむしろ「勝った」と言うべきである。
 昔から「苦労は買ってでもやれ」という。江戸時代の名君、水戸藩徳川光圀は「苦は楽の種、楽は苦の種と知るべし」と言った。今までの総理は、追い詰められると責任を回避して逃げ、苦を回避した。その後は、口をぬぐってまるで「元老」でもあるかのように振る舞い、陰で“現役”を操ることに快感を覚えているかのように私には見えたが、これを「老醜」という。
 最も、細川氏のように窮地に立つや、無責任にも軽々と政権を投げ出して辞職し、今や「陶芸家?」として余生を楽しんでいる方もいるが、大半は「元老気分」で政界のドンとして振舞っている。そんな前近代的なヤクザの世界のような時代は既に終わっているのである。「新米首相、新米医師」には畏れることなく国民をリードし、医療制度はもとより、国家安全保障を確立して、子供達に安心して生活できる国を築き上げて欲しいと思う。