軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

6者協議と朝青龍問題に思う

 講演会でお知り合いになった方々などから色々な出版物が送られてくる。8月を迎えたからか、特に靖国や戦時体験、大陸問題に関する記事が多く、大いに考えさせられる。しかしこれら出版物の発行責任者や会員方は御高齢者が多いので、内容の充実度に比べて組織の規模がどんどん小さくなっていくのが残念である。表現は無礼だが「ごまめの歯軋り」、しかし、その内容は正義と真実に溢れている。

 ところで今朝の産経新聞は「安倍内閣の16閣僚全員が、終戦記念日の15日に靖国神社に参拝しない意向であることが、10日明らかになった」と報じた。島村宣伸元農水相は「なんて意気地がないんだ」とあきれたそうだが、政治屋共が如何に英霊を「集票マシーン」「人気取りの道具」としかとらえていなかったか、これではっきりしただろう。つまり、心から英霊に哀悼の意を表するのではなく、今までは、参拝すると“声なき保守層”の票が何票稼げるか、と考えた打算的な行為に他ならなかったことを証明したようなものであり、大方の政治屋は、初めから“行く気も”「意気地」もなかったのである。
 8月15日に毎年境内で行われる国民集会に、私も招かれて演壇にたったことがあったが、最初に壇上に上がったのは小池現防衛相であった。彼女の話は御遺族の胸に訴える内容であったが、今年「欠席」されるのなら、あの演説は一体なんだったのだろうか?と思う。そんなことは決してあるまい、と私は信じている!

 自衛隊についてもこれと同じで、政治屋たちにとってはこの国の防衛なんぞ“どうでも良かった”のであり、24万の自衛隊は、彼らの単なる集票マシーンであった。
 選挙が近づいたある日の夜、某基地の当直室に某候補の秘書が電話をしてきて「投票についてちゃんと上から指示があったろうな?」と言ったそうだ。受けた下士官は何のことかさっぱりわからず、「何のことですか?」と言った途端、秘書は「これだから自衛隊は頼りにならん!」と偉い剣幕で怒鳴りだしたという。
 翌朝報告を受けてその無神経な態度に驚いたものだが、“トラの威を借りた”馬鹿な秘書を持つと、議員もそのレベルだと有権者は当然考える。電話を受けたのが「基地当直室」だったから、異様な電話があったことは隊員達の間にたちまち広がってしまった。この時当該議員はぎりぎりで当選したから良かった?ものの、その後、議員に対する隊員達の“尊敬の念”が吹き飛んだのは事実であった。
 生身の自衛官が「政争の具」になるのはまだいいとしても、靖国に眠る英霊方を「政争の具」にしたらお終いである。英霊達は、意見を言うことができないからである。一方的に自分の都合で解釈され、行動され、英霊達には「反論の機会」さえないのである。そのことを知ってか知らずか、今回の「天をも恐れぬ不貞の輩の背信行為」に対しては、おそらく「天罰」が下されることになろう。
 8月15日にこだわるか否かは、各人の心の問題である。例大祭が行事の中心なのであるから、それが一番相応しかろう。靖国に祭られている御霊は、今次大戦の英霊方だけではないからである。しかし、今次大戦の英霊方ほど「惨めな思い」をしておられる英霊はなかろう。
 中曽根首相の間違った判断から、外交上と国内政党、メディア間の「政争の具」と化してしまったからである。
 その決着がついていないことが“8月15日にこだわる”混乱の根底にあると思う。今回の閣僚達が、再び軽々に誤判断をするようなことがあれば、国民は今後、与野党を問わず「政治屋共の指導」に従わなくなるだろう。

「指図に従わない」という問題では朝青龍問題が典型的である。彼が仮病を使って地方巡業をサボったことで相撲界は大揉めだが、相撲の素人の私には、朝鮮半島を巡る6者協議に瓜二つだと思えてならない。
  もともと我が国の国技である相撲の精神は、勝つことが全てだとは教えていない。負けるが勝ち!などという精神が、モンゴル力士に理解できる筈がない。そんな異人に「日本風の風格」を求めるほうがどうかしている。
 相撲協会だって、貴乃花関問題で、地に落ちた人気回復の一手段として、一人横綱で踏ん張っていてくれた彼を「腫れ物に触れるような」姿勢で持ち上げてきたのではなかったか? 当然力を信奉する朝青龍は「強い俺が一番」だと認識して、傲慢になることは避けられまい。とにかく、親方が『弟子の説得が出来ない』というのだから、国技たる相撲道は既に消滅している!
 この状況を「力こそが全て!」という半島情勢に重ね合わせてみると良く分かる。力は強いが風格が足りない横綱横綱に適わない親方との関係が、金将軍とヒル次官補の関係に似ているように思えるのである。
 そこには「モラル」なんぞ存在しない。力が全て!だから6カ国協議でも、まるで腫れ物に触るような態度しか取れないのである。あの世界一の軍事力を持つ米国でさえもが!!
 そんな状態を“放置”してきたのが、力に媚びて悪を放置してきた国際間のご都合主義であり、力を放棄して話し合いで解決できると“信じさせられてきた”、隣国の経済大国・日本政治の弱体であった。弱者には傲慢、強者には諂う、政治も経済も、軍事までもがそんな卑屈さを我が国は当然のように身につけてしまったのである。
 部下を指導できない司令官、身の危険が予想される闇の世界に手が出せない司法の世界、票と金になるものならばどんなことにでも恥も外聞もなく手を出す政治屋
 恥知らずな“力持ち!”と全うな道を説得できない親方の姿は、単に文化の相違ではなく「正義なき力は圧制、力なき正義は無効」というパスカルの言葉そのものである。

これだけは伝えたい 武士道のこころ

これだけは伝えたい 武士道のこころ

再現 南京戦

再現 南京戦

中国の黒いワナ (別冊宝島Real 73)

中国の黒いワナ (別冊宝島Real 73)