軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

台湾は独立国である!

 昨日は猛暑の中、都心に出て、台湾独立建国連盟主席・黄昭堂博士の「台湾の行方を決める総統選挙」と題する講演を聞いた。100名を超える熱心な台湾関係者が集まり、講演後熱心な討議が続いた。
 日本のマスコミなどは「台湾独立」を、中国大陸からの「独立」だと勘違いしているのだが、大陸も「独立という言葉は使わせない」というものだから、日本人は誤解しているのである。
 台湾は既に立派な独立国なのだが、「国名」「憲法」「国際関係」上不具合があるから、それを修正しようといっているに過ぎないのである。
 聴衆の中に、94歳の門脇翁もいて、若々しいスタイルに「若者ファッションですね!」とからかうと、「徴兵検査を受けにきました!」と返された。氏が主催する「あけぼの」8月号に「台湾にとっての大問題」と題して氏はこう書いている。
カイロ宣言には国際的存在価値はない。一九四三年暮れ、チャーチルルーズベルトは、エジプトのカイロで会談した。これに蒋介石夫妻は、その第一次会議に参加した。戦後蒋介石はこの宣言に基づいて台湾に進駐した。ただしカイロでは単なる合議が行われただけで国際条約としての拘束力はないと、昨年11月アメリカ政府を被告とする訴訟が、米国法院に採り上げられた。主権は台湾人民に属し、それを怠ったのは米国政府の責任であるという台湾住民が原告で。中華民国政府の台湾統治は、国際法違反で、半ば米国の占領下にあるという根拠で」。更に台湾人のDNAも大陸とは違うという結果が出ているという。
 1949年、国共内戦に敗れた蒋介石は「中華民国政府」という看板を背負って、旧日本領であった台湾に進駐してきた。つまり「敗残兵が亡命政府」を台湾に樹立したに過ぎなかった。いずれ大陸に「反抗する」との意気込みでこの島を統治したが、それはかなわぬ夢であった。そして228事件で、日本時代の教養人や将来「敵」になりかねない優秀な台湾人を“虐殺”し戒厳令を敷いて恐怖統治を続けた。それにもかかわらず、彼らは依然として「大陸を支配しているのだ」と国民に無理に教え続けている。
 確かに戦後は連合国憲章設立にも加わり、「戦勝国」として常任理事国の一員であったから、中華民国という名称は未だに連合国憲章に残っているのは事実である。その点では“戦勝国”に当たらない「中華人民共和国」の常任理事国入りがおかしい、といわざるを得まい。
 人口の80%以上を占める台湾人は、大陸から逃げてきた「外省人」に武力で強制されて勝手に「中華民国」という国名に変更され、教科書も地図も、全て「中華民国国民」として大陸の教育をされているのだから、台湾人にとっては迷惑も甚だしかろう。台湾人にとって「大陸の歴史」や、「地図」は無関係なのであり有難迷惑であろう。いや、中華人民共和国にとっても「内政干渉」に当たり不愉快なのではないか? だから台湾は、正式に「台湾」という国名に変え、現実的な台湾の歴史伝統を踏まえた自分達の憲法を作り地図を作り、国際的に認めてもらいたい、といっているだけなのである。
 1949年、毛沢東が大陸を統一したとき、「中華人民共和国」と云う国名にせず、蒋介石を駆逐したという意味でそのまま「中華民国」という「国名」を継承していれば、台湾は間違いなく「大陸の一部」だと国際的に認識されたに違いなかった。それをやらなかったことは毛沢東の一生の不覚?であった。
 大陸から、何ら統治されていない台湾は、国共内戦の敗残兵「中華民国」に不法に支配されただけであった。だから国名を「台湾」に戻し、大陸をも包含する憲法を破棄して自分達の憲法を作り、改めて台湾本島とその周辺を統治する「台湾国」に認知されたいだけなのである。
中華民国の勢力範囲を示す「地図」を見るが良い。
 こんな非現実的なことを台湾国民に強いていた国民党政権はいまや野党であり、台湾人の民進党が政権をとっている。今こそ、「中華民国」という過去の呪縛から解き放たれたい、というのが「台湾独立」の真相なのである。それを「絶対に阻止する」と大陸が息巻くのは、万一我領土だと叫んできた台湾の「独立」を認めたら、少数民族ウイグルチベット、モンゴルなどが、右へ倣えで「独立する」その恐怖を防ごうとしているだけなのである。その意味でも大陸政府は、台湾は「毛外の地だ」といっておくべきだった。

 来年1月22日の立法院議員(国会議員)選挙、そして3月の総統選挙は、その意味で正に「台湾の行方」を決める選挙である。つまり、国民党の馬英九候補は、2012年に大陸と統一することを公約している。彼が勝てば、台湾は、国民党政権時代よりも更に過酷な状況に置かれるであろうし、それに接する沖縄周辺は、緊張が高まるだろう。
 米国も今までと違って「台湾を大陸と同等な“敵”」として扱わざるを得なくなるからである。
 与野党のねじれ現象、憲法改正問題などなど、台湾の実情は実に我が国とよく似ていると改めて感じさせられる。
しかも「若い陳水扁総統」は、ねじれ現象ゆえに政策を進展させることが出来ないまま、国民に不満を残したまま期待を裏切って?任期を終了する。
 我が国も、国民の期待を一身に受けて登場した若い安倍政権は、歴代内閣では見られなかったほどの数々の法律を成立させ、積極的外交を展開したが、マスコミの意図的報道で窮地に立ち、参院ではねじれ現象が生じる結果になった。その安倍総理は、午後には内閣を改造して再出発する。国難を乗り切れる強力内閣が誕生するのか、それとも変哲もない単なる入れ替わり内閣になるだけなのか?
 2008年危機に向けて、ゆるぎない内閣の誕生を期待するばかりだが、マスコミは、国益を度外視して、虎視眈々と“難癖をつける準備”をしていることだろうから、今度こそ国民はこれに騙されない用心が必要である。
台湾も、我日本も、極めて重大な時期に突き当たっている。国家非常事態に望む台湾人の熱心さに比べて、我が国の一部の、興味本位程度の姿勢が気になった一日だった。

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