軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

世界の流れに取り残されていいのか

 昨夜は、拓殖大学日本文化研究所主催の公開講座「新日本学」で講師を務めてきた。
参加者は社会人(といってもその“卒業生”が大多数だったが)で約70名、女性も目立ったが実に熱心でこちらの方がついつい引き込まれるような雰囲気があった。
 私の受け持ちは「自衛隊は祖国を守れるか」であったが、5分間の休憩時間を入れて、たっぷり2時間、単なる「元戦闘機乗りの実体験談」如きを、身じろぎもせず聴講されて恐縮した。
 20時半からの質問タイムは、“御時勢柄”他方面への関心も高いのでは?と少々気にしていたが、防衛大学校のカリキュラム、つまり教育の実態と、防大校長の選出基準についてだったから、少し“安心?”して個人的見解を述べた。
 私は現役時代に「防衛茶碗蒸し論」を唱えてよく部下に話したものだが、創立以来50年を過ぎた自衛隊という武力集団は、「防衛」に熱心なだけで、軍事全般から遠く逸脱しつつあるような危惧を覚えている。茶碗蒸し論についてはいずれ解説したいが、要は、戦を離れた軍隊の宿命について私論を述べたものである。

 ところで、高みの見物中だった我政界の混乱は、またまた「裸の王様」を地で行く茶番で、久々に腹の底から笑えた。笑うことは健康に大変良いことである!今のような暗いご時世だからこそ特に必要である。私が綾小路きみまろのCDを時たま聞いて健康管理する理由もそこにある!
 さてこの茶番劇についての大方の感想は、「もう飽きたよ、という読者の皆さんの声が聞こえてきそうだが・・・」という書き出しで始まる今朝の「産経抄」に凝縮されているのではなかろうか。
「・・・結局小沢氏は(辞任を)翻意したようだが、あの辞任会見は一体なんだったのか。これでは『偽装辞任』の汚名を着せられても仕方あるまい」と産経抄子は書いたが、なんのなんの、またまた「辞任復活」のウルトラ劇も残されている!
 こんな珍現象は既に以前から予測されていたことで驚くには当たらない。読者諸賢も御記憶だろうが、民主党の以前のコマーシャル映像は、大変人気が高かった?!
 小沢、鳩山、菅のお三人が荒れ狂う洋上に船出して、高波に翻弄されるのだが、甲板でこけそうになった代表を二人が支えて、腕を組んで遠くを見つめて終わる、あのコマーシャルである。
 当時は「多分この船は難破する」と揶揄されたものだが、こんなコマーシャルを製作した広報会社がどこかは知らないが、少なくとも民主党の実態を余すところなく見抜いた?シナリオライターがいたということであり、その「作品」を党員皆が承認したのであったから、それが今現実になっただけに過ぎない。
 ところで、こんな乱れた野党第一党を誰がほくそ笑んで裏で見ているのか?その回答が、産経新聞4面に「効いたねぇ!『政権の香り』の一杯は」と題する山田紳氏の漫画である。
 ワイン?の名は「大連立」、多分群馬県高崎産の「ボジョレヌーボー」なのだろうが、どうも醸造元は「いちころ」というらしい。いやはや、これには大笑いした。
 その左に、小泉元首相が「最近、ちょっと『まさか』の頻発が多すぎる」と言った記事があるが、どうしてどうして、まだまだ「まさか!!」という事態は『天・地・人』ともにどんどん続く、と私は見ている。
 そんな中、29面に目にも鮮やかな「水中写真」が目に入った。タイトルは「世界の流れに取り残されていいのか」「海の中からニッポンへ」とある。写真はサイパンで撮った中村征夫氏の作品で、文章が元外交官の岡本行夫氏である。短文だから全文掲載しておこう。
「日本は、世界の流れと関係ない国になってしまったのか。世界では、中国の影響力が強大になり、帝国ロシアが復活し、大ヨーロッパが形成され、巨像インドが動き始め、アフリカ大陸にも新しい息吹がある。他方で、アメリカは信頼性を失墜し、地球の環境は劣化し、中東のテロは拡散している。北朝鮮まで核兵器を持った。
 それなのに、日本の最大テーマは、食品偽装表示と政治家と官僚のスキャンダル。世界の40カ国がアルカイーダらと危険を冒して戦っている中で、日本は、安全このうえない洋上給油活動からも撤退しようとしている。海中では、地上に何が起ころうと関係ない。そう、日本の社会も、海の中のよう。外界と隔絶しているがごとく。世界が激動しても、日本は切迫感を感じない。
 しかし、ときどき葦の髄から天井を覗いては惰眠している間に、太平日本は世界から置き去りにされていく」
 今や食品偽装だけではなく、会社経営も設計も偽装、政治家の“辞任も偽装?”なのだから、葦の髄から天井を除いた日本国民が、仮にそこに何かの動きを察知しても、「またまた偽装だ!」としか反応せず、惰眠を貪り続けるのであろう。そして最後に釣り針に引っかかって海面に引き上げられ、キリギリスのように食材にされて一巻の終わり。その時いくら「私は賞味期限切れ!食用に不適だ!」と叫んでも、日本国以外では「腐っていない限り」食用になるのである。だからいくら偽装しても無駄!
 しかし、完全に腐りきっていたら、釣上げた漁師も口にはするまい。針からはずして海に捨てるだろうから、改めて惰眠を貪ればいい。その意味では完全に腐りきることである!
 英国上院では、女王陛下が「テロ対策の強化などを柱とする政府施政方針」を読み上げた。英国民は、日露戦争当時の同盟国・日本の現在の惨状をどう見ているか、次は岡本氏にその辺を書いて欲しいものである・・・

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