軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

守屋“事件”が教えるもの

 昨日は午前午後とも国会中継に見入った。国の防衛をあずかる重要な役所内の乱れが浮き彫りになってきて、OBの1人としていたたまれない気持ちである。民主党はこれでテロ特措法を「阻止」出来ると息巻いているが、山田洋行という小さな商社が、これほどまで“実力”を持った防衛商社に急成長したのは、旧自民党時代の金丸―小沢ラインであった、と裏でささやかれているから、民主党にも火の子が及ぶのは時間の問題だろう。
 今回、民主党浅尾慶一郎氏が「何事も包み隠さず・・・」と切り込んだから、守屋氏の口から「久間、額賀」の両元防衛庁長官の名前が出たとメディアは大騒ぎしているが、浅尾氏は「藪をつついて蛇を出」したことになるのではなかろうか?
 それにしても「チャフフレアーディスペンサー」を「チェフ・・・」という議員さんがいて、軍事用語は難しいとはいえ、素人談義が多すぎるうえ、やたらとお説教が多く、貴重な時間の無駄使いであった。事の真相は特捜が詰めているだろうから一任するが、この際徹底的にこの組織の膿を出して、精強な国防組織作りを目指して欲しいと思う。

 ところで、こんな茶番?に気を取られている隙に、世界は急展開しつつある。韓国の大統領選挙、アジア諸国パキスタンの政変、米国大統領選の行方など、予断を許さない。北朝鮮問題では、ついに米国政府が北朝鮮を「テロ指定国家」からはずす動きが出て、被害者家族はじめ議員団が訪米して“陳情”しているが、その本国では、徹底して米国の政策に反対し、海自艦艇を引き上げ、米国からの防衛装備品納入問題で紛糾し、沖縄の米軍基地問題は10年以上も進展しないばかりか、その利権を巡って泥仕合が生じている。そんな「同盟国」から、拉致被害者を抱える日本人一行が、米政府に“陳情”する図は、いかにも奇妙である。自国民の一人も自ら救済できず、その意思もなく、厄介な問題が起きるとすぐ米国に依頼する。
 中近東からの油の輸入さえ、自国で守る意思もなく、米海軍任せなのに、反米意識は人一倍強い、となると、一般の米国人は日本をどう評価するだろうか? 映画「サルの惑星」そのままじゃないか!日米分断一歩手前、と喜んでいるのは中国とロシアであろう。
 守屋“事件”をめぐって緊張しているのは我国会だけではない。関連する米国は、相当神経を尖らせている。錯綜する携帯電話の周波数は、各種傍受装置や通信衛星を通じて集約されていることを、官僚も政治家もよもやお忘れではあるまい。
 大東亜戦争の敗因の大きな一つに「情報の筒抜け」が指摘され、ミッドウェイ作戦の失敗はその例としてよく挙げられる。守屋“事件”を見ていると、情報に対する関心度は、当時も今もちっとも変わっていないなあ〜と失望する。在日米大使館はじめ、各国大使館通信部は情報収集で大忙しであろう。

 そんな中、14日の産経トップに「日本へ機密漏洩の疑い」で、「元中国大使館員に死刑」判決が下ったという記事があった。複数の日中関係筋が13日までに明らかにしたというが、何故今この時期に報道されたのか、極めて興味深い。
 守屋“事件”で表面化するこの役所の役人達と業者達との相関関係を見ていると、機密保持がどこまで徹底されているか疑問に思われる。
 ゴルフ、マージャン、カラオケ、焼肉・・・の機会につけこんで、情報収集するのはその筋の常套手段である。山田洋行という会社は、今のところ「日本人」の会社らしいからいいとして、宮崎・秋山というような“胡散臭い”「エージェント」が、市ヶ谷台の周辺に山ほど事務所を構えて活動しているいる、といわれている。地方においても、例えば焼肉屋とか中華料理屋は「和食」料理屋でない以上外国筋の情報収集の場だといわれていたし、パチンコ屋などはその代表であった。
 三沢基地司令時代、4万人しかいない町に10軒を越える店があって、民団系が開店すると総連系が直ちに開店する。人口一万人に一軒というのが相場だといわれていたが、当時13軒あった。
 カラオケバーや焼肉店はハニートラップの恰好の場でもあったが、これは大陸がそうであったことが判明し、外務省の電信官や海自隊員などが引っかかったから、国民に少しは認識されていた。
 近年、イージス情報に代表される情報漏洩が問題になったが、国家防衛の中枢にこんな接待漬けがまかり通っているようでは実に心もとない。
 
 今朝の産経29面の片隅に「配線ミス原因=戦闘機墜落」というベタ記事があった。10月31日に名古屋空港で離陸に失敗したF−2戦闘機が墜落した原因のことである。
 この日NHKで録画の一部を見せられて原因推定の解説を依頼されたのだが、確たる証拠が不足していたので「推力が減退した」という現場関係者の証言から、エンジントラブルが考えられると解説したのであったが、時期が時期だけにGEエンジンに結びつきかねない、と危惧したものである。
 その後このブログに「操縦系統のトラブル」を気にした解説をしたのは、放映された画像の中の“異常なピッチ変化”が気になっていたからである。F−2は、国産初の「フライバイ・ワイヤー」方式の操縦系統を持っている。つまりコンピューター制御である。
 民間機でも自動操縦装置のトラブルで危険状態に陥ることがあるのだが、F−2の様に精緻なコンピューター系統、ソフト、配線などで構成されている機体の整備は、今回のような整備ミスは命取りになりかねない。飛行前にテスターで厳重な回路テストをしていたはずだから、検査体制は十分だったのか疑問が残る。
 そこで、以前書いようにこの会社に搬入された機体が、サボタージュ?で10機以上も配線が切断された“事件”があったことが気にかかる。勘ぐれば、今や会社の下請け作業員も「国際化」される御時勢。万一「配線ミス」が人為的なものであったら、相当根が深いといわざるを得ない、と、今朝ある方から電話があったがその通りである。
 我が国の防衛力を減退させるには、トップのスキャンダル、政官業界癒着、そして運び込まれる「直接戦力」に手を加えるだけでよい。産軍癒着とはいうものの、こんな機密保持に弱い状態だから、世界最高峰の機密の塊である「F−22」の導入を米国は渋るのである。
 守屋“事件”が単なる疑獄事件ではないことを、国民がしっかり認識しないと、2008年危機にはとても対処できないだろう。軍事を統制する立場にある「シビリアン(役人ではない)」が“チェフフレヤー”などといっているのを笑っている場合ではない。この国の防衛の実態は、心もとないこと甚だしい。

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対日工作の回想

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