軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北京会議こぼれ話・その3

 守屋前防衛次官夫妻逮捕でマスコミははしゃいで?いる。香川の孫娘ら殺人事件並みの取り扱い。世界は米国のリードで中東和平に向けて動き始めたり、ロシアのプーチン院政などなど、大きく動き出しているというのに我が国の政治・社会情勢はこの体たらく。
 勿論、国家防衛の要である防衛省問題は徹底的に政官民の癒着を究明し、今後は、政界のどろどろした関係を持ち込ませないような対策を講じるべきである。その点では産経新聞が「防衛利権の闇」とする連載を始めたから、今までうやむやで終わってきた防衛族といわれる政治家達の利権闘争の闇が、これを契機に明らかにされるのを期待したい。
 ところが31面の「守屋容疑者逮捕」記事には情けなくなる。「おねだり妻」の存在なんて、楊貴妃西太后ではあるまいに、「ふぐ食べたい」「高級化粧品欲しい」という“高貴なお方”の存在があったなどとは情けない。どんな御出身の方なのだろうか?男の社会に女の社会がでしゃばると、常に夫の階級が支配する「女帝の世界」が出現するものである。これが単なる「親睦会」の域を逸れて、夫の出世に敏感に作用するのが世の常、特に控えめな“大和なでしこ”が消滅した現在ではその弊害たるや夥しいものがある。
 ところで、記事の終わりの方に宮崎容疑者は「『空自OBのボス』といわれる田村秀昭参院議員(75)には、当選前から丸抱えのテニス旅行を重ねたり、初出馬の選挙資金に億単位の金を捻出するなど、防衛族を中心に利用価値があると見た政治家には徹底的に厚遇した」とあったが、私も「空自OB」の1人であるからこんな表現は「迷惑」である。「空自田村一派のボス」と書き換えて欲しいものだ。30面の「現場の声」には、「こういった不祥事が起こると、事実確認などの後ろ向きな仕事が増え、大変」とため息をついた幹部のことが書かれているが、全く同感。現役隊員たちには怒りのやり場があるまいと気の毒になる。
 一段落したら関係者の1人によって書かれた“締りのない字体”「防衛省」の看板を書き改めて、再出発して欲しいと思う。
 今日は気分が乗らないが、整理している北京会議の議事記録の中から、適度に「こぼれ話」を掲載しておくことにする。

 

(承前) 午後のセッションは、「中日政治、安全問題」であった。川村団長が「中国の空母保有と海洋進出」と題して、中国の空母保有への動き、空母建造の課題、中国海軍の任務に対する空母の適合性という、かなり露骨な内容について詳細に述べ、結論として「限られた任務にしか効率性が認められない空母を保有するために、巨額の投資をすることは壮大な無駄遣いになる」とやんわり?釘を刺した。
 これに対して元海軍戦闘機パイロットであった李少将が長々と反論した。専門家としては「川村提督の指摘は正鵠を得ている」「中国の軍内部でも不要論と不経済論が大半を占めている」としながらも、呉海軍少将が訪米して米太平洋司令官と会談したとき、司令官は「建造すべきだ」と言った。
 例えば主要国はみな空母を持っている。日本も昔は強大な空母群を持っていた。米・英・仏・伊・・・インド、タイまで持っているのに、どうして中国は持てないのか?訒小平主席は「軍は主権のシンボル」だといった。「空母は軍のシンボル」である。役に立つ立たないは論外、多数の軍人の願望である。米国は10隻の空母をもつのに中国が購入したら何故脅威なのか?
 建造の可不可は、科学技術のシンボルであり、決意次第である。1950年に毛沢東は一万年かかっても必ず原爆を持つと宣言したが、結果的に短期間に原爆を持った。
 艦載機については、今は持たないが、将来は必ず持つ。勿論米国に売ってもらえるものではなくとも、技術的に学び取ることは可能である。自力建造は可能だと信じている、資金の問題についても中国は出せる。巨大な外貨準備高を持っているから造れるのは事実である、と強硬論を述べた。
 そして「自国の空母の姿を見られずに退官したのは残念。国民も空母を持ちたいと思っていると思う。その証拠に、30年前に小学生が空母建造費用として2元寄付したことがある。ある企業家は2000〜3000万元を出した。これこそ中国人民の民意の赴くところであるというのだから恐れ入る。更に空母は台湾問題解決に役に立つといい、あくまで問題を平和裡に解決したいが、万策尽きて必要な場合は、直接的軍事力行使ではなく「封じ込め」策を講じるだろう。空母なしでは台湾を封じ込めることは有効ではない、台湾を攻撃するということではなく、抑止(圧迫して降参させる)戦略である、軍事力が強ければ強いほど、台湾問題は解決する、とまで言った。

 彼はかなり長い論文を用意してきていて真剣に発表したのだが、それを貫くものは「中華思想」そのものであった。長くなるのでここでは省略するが、要は、このような軍事力の効用を信じている高官が軍には他にも存在しているということであろう。その点では大いに参考になる。
「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した」日本国民は、そろそろ根本的に身の安全を考え直す時に来ているのではないか?少なくとも周辺には「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと務めている」国際社会は存在していないことは事実である。それだけでも自覚する必要がある!
 李元少将の意見発表は、歴史認識日米安保に対する“アドヴァイス?”、更に台湾問題に波及し、「台湾問題に介入しない、干渉しないのも日本が取るべき対応である」とまで言及したから日本側の反論希望者が続出したが、時間がなくなったため双方から1人ずつに絞られ、上級大佐が空母について冷静な反応を示し、我方からは武貞氏が「意見を聞いていて、日本も空母を持てると確信できた」と皮肉たっぷりに締めくくって第二セッションを終えた。

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