軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

北京会議こぼれ話・その7

 歳末に入って、殺人事件などのニュースで気が重くなるが、とにかくロシアも、イランも、6者協議も、水面下の動きが気になるところである。そんなさなか、我が国の政情だけは「笑い話」にもならない。やはり、額賀大臣は、別会合でタカラジェンヌと会っていたというのが真相らしく、こうなると民主党とは一体なんだ?ということになる。
 二大政党が悲願だという小沢党首だが、今度は中国共産党との「大連立話」に機嫌を良くしているのかも・・・

 さて、日中安保対話の報告書作業で時間が取られているが、今日は最終日の締めくくりを書いておくことにする。


(承前)上級大佐が衛星破壊実験について「大国が持つものを(中国が)持っていてもおかしくないと思う。宇宙の非軍事化を主張するのが目的である。超大国の米国だけではアンバランスである。中国とロシアは、非軍事化について交渉中である」と発言したが、宇宙の非軍事化なんて、ロシアと中国だけで話し合っても、進歩する筈はなかろう。
 その後、蒋所長が台湾との交流が気になるらしく、私に「日台防衛交流の現状」について質問し、各人が、それぞれの質問に対して回答した。
 会議は、当初計画の12時を30分間延長することとなり、引き続いて金田氏が「東シナ海の日中共同開発と日中間の信頼醸成措置」について約30分間発表した。
 質疑の時間は省略されたが、閉会の挨拶で、蒋所長が「東シナ海をわれわれは東海と呼ぶ。シナという言葉には心理的抵抗感がある。安全保障上の相互理解を図ることには賛成である」と発言、我方から「東海」は韓国との問題があるので、今後は「東“中国”海」とでもいうことにするか!という意見が出て笑いを誘った。中国が印刷している地図にも「イースト・チャイナ・シー」と英語で記入されている。これを日本語に訳すと「東シナ海なのだ」と言っても理解してくれない(しようとはしない)。そこで「東=中国=海」とするか、「東=チャイナ=海」とするかと言う意見が出る始末。とにかく大国らしくないこだわり方である。
 閉めの挨拶で、蒋所長は「今回の会議は、熱のこもった会議で双方とも深い理解が得られ、過去より一歩前進したと思う。われわれは、成果を上層部に報告すると共に発表したいと思っている。日本側も成果を持ち帰って、双方でマスコミにPRすれば前進すると思う」と、異例とも言える熱意溢れる挨拶をした。そこで安心して私のブログに一部公開しているのである・・・
 これに対して川村団長が答辞して、12時40分に北京会議は終了した。

 この日、会議に出かける前にニューステレビで胡錦濤主席がモンゴルを訪問して、一民家に立ち寄って家族と面談しているシーンが流れた。会話の内容は不明だったが、雰囲気から、いかにも人民と親しく接している演出であることは間違いなく、しばし会話の後、胡錦濤主席は少年が差し出したノートにサインしていた。相当モンゴルに気を使っている・・・
 他方温家宝首相はシンガポールで会議に出席、「通商中国(ビジネス・チャイナ)」というタイトルが画面に出ていたが、主席は人民との親密さをアピールし、首相はビジネス奨励に邁進するため、共に国外に出かけていることが大変興味深かった。

 さて既に書いたが、台湾「独立」が、周辺のウイグルチベット、モンゴルなどの「独立志向」を誘発する危険性をはらんでいると言う事実が、今回始めて政府高官の口から出たことは重要である。 中国は「台湾海峡の安定を維持する」ためにその手法について迷っているようで、相当焦っているようにも思われたが、解決のキッカケをどこに求めるのか?我々に対して「台湾独立派に説得して欲しい」と言ったことからも伺える。
 会議での発言は「政府の立場=公式見解」に統一されていることも伺うことができた。台湾を「国家」と発言することにもかなり神経質であることも確認できた。また、台湾への武力侵攻の法的根拠を「反国家分裂法」に求めていることも明白になった。
 日中関係においては、いつものことだが「信頼醸成」を強調したが、国内で「反日映画」を堂々と放映しているようでは、口先だけに過ぎまい。
 今回、中国政府が最も関心を抱いているのは「地方政府の腐敗」と「台湾独立」問題であることが浮き彫りになった。更に腐敗は金銭に絡むものであるから「バブル崩壊」を一番恐れていることは自明であり、相当神経を使っていると感じた。そろそろ・・・??

 午後からは市内を見学、王府井を散策したが、建設中のビルは勿論、解体中のビルも、危険防止のための「覆い」がないので、特に解体中のビルからの埃はひどく気になった。空気が悪いといわれる原因の一つかもしれない。アスベスト問題は大丈夫なのであろうか?
 本屋で日本紹介の本(旅行案内書)を見たところ、御丁寧に「日中戦争時に中国人を斬首している写真(しかもいわゆる捏造写真)」が出ていたのには驚いた。日本案内書にまでこんな写真を掲載する神経が分からない。これを見た人民は、日本に行く気になるのだろうか?それともウソだと知っているから影響はないのだろうか?しかし、それで「日中信頼醸成」とはいやはや・・・
 デパートで、オリンピックのロゴ入りのタオルを45元で買った。オリンピックが不発に終わったら高値がつくだろう!と言う魂胆で購入した次第。しかし、購入方法が、昔モスクワで体験した「カッサ方式」であったから、オリンピック見物客が押し寄せた時に対応できるのか知らん?と思った。つまり、現物を店員があずかり、渡された伝票を持ってカッサに行き代金を支払うと、係りが判子を押してくれる。支払いが済むと今度はその伝票を持って再び店員のところに戻り、確認してもらってタオルを受け取るのだが、昔モスクワで、ヨーロッパの観光客が行列していて、物とカッサの間を行ったりきたりしなければならないから、買いたい物があっても時間がない、と老人がこぼしていたことがあった。今時ソ連方式なんかとっていたら、儲けが少なくなるだろうに!
 16時から17まで、オリンピックのメインスタジアム一帯を見学した。例の「鳥の巣」は完成していなかったが、日本で報道されているよりはるかに広い「平原?」に建設中であることが理解できた。案内役に「間に合うか?」と聞いたら、「大丈夫です。最後は人海戦術がありますから」と笑いながら返事。
 帰途に「中関村」を通過した。ここは、日本の秋葉原のような店が林立するところで、IT販売でこの10年で急激に繁栄したのだという。とにかく「コピー製品」の宝庫だそうで、かなり賑わっていた。こんなことでは「知的財産権問題」なんてあって無きが如しだろう。とにかくIT関連製品は何でも「格安」で手に入るとか!
 中南海トウ小平元主席の邸宅そばを通ったが広大な敷地である。私有地が認められた共産主義国家?とはいい気なものじゃないか?
 夕食会は、1830から宿舎の近辺の餃子屋に我々6人だけで入った。家族連れで賑わっている店と、従業員が手持ち無沙汰の店があったから我々は混んでいる店に入ったのだが正解!安くて旨かった。6人で色々な種類の餃子などを散々堪能したが、とにかく食べきらないほどの量だったにもかかわらず、合計160元(2240円!!)中身は間違いなく食品で、ダンボール餡は入っていなかった・・・。
 店のトイレに入ってみたが、タイルの床に穴が開いているだけの簡素なもの。不潔なことに変わりは無かった・・・。こんなところがこの国の弱点だろう。人民の衛生観念は早急に改善されるものではない。
 夜ホテルでテレビを見る。チャンネルは50以上あるが、軍用のチャンネル(CCTV7)もある。一日中、軍の広報をしているらしい。日本で自衛隊を応援してくれるテレビ局はチャンネル桜くらいしかないが、さすがは軍事大国、堂々と放映されている。しかし、その根底にはなかなか兵隊が集まらないと言うことがあるようだ。

 翌21日は上海に移動することになっていて、朝食はいつもどおりの雰囲気、今朝は50人位の中国人で賑わっていた。同じテーブルについて食事をしている客を観察したが、とにかくマナー不十分、エチケットなし、同じテーブルの客に対する気配り無し・・・。発音が破裂音だから止むを得ないが、会話が騒々しい。しかし、逆に考えれば「活気がある」ということにもなる・・・
 部屋に戻って出発までの間、テレビを見ていたが、相変わらず「反日教育?」が盛んである。日本軍との戦いをドラマ化しているらしいが、日の丸を掲げた日本軍部隊も将校も兵隊も、常に悪役。
 中国人の民家に日本兵二人が押し入り、1人が庭で主人に銃を突きつけている間に、もう1人が屋内で妻を強姦し、強姦された妻が自殺する。夫は復讐を誓ってゲリラになり、八路軍と共に戦う勇士になる・・・と言うような筋書き。日本兵が「バカやロー」しか言わないのが愛嬌か?
 題名は「反日本軍辺之便峡画?」とか言う作品。CCTV重廈?「一正痛憤消貼『嵐又天下』」とか画面にあったが、漢字がないので当て字である。その昔、国民党軍兵士か、たちの悪い八路軍兵士がやったことをそのまま日本兵に転嫁するのだからたまったものではない。
 カメラの電池が切れて画面の日本兵の撮影が出来なかったから前回紹介した写真は勇敢な女性兵士のシーンである。とにかく「政府は『日中友好』を強調しているが、国内テレビではこんなあくどい反日宣伝映画を流しているのだから、友好は「言葉の遊び」にしか過ぎないと思わざるを得ない。
 小沢さんたち、何を感じてくるのだろうか?と気にかかるが、部屋でゆっくりテレビを見る時間などないだろうから気がつくまい。せめて文句を言ってきてくれるとよいのだが・・・

中国の黒いワナ (別冊宝島Real 73)

中国の黒いワナ (別冊宝島Real 73)