軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

新テロ法成立!

 年末から正月にかけて、5本の原稿依頼が来て時間がなく大変だった。30枚の台湾関係分はどうなるか予定が立たないようだが、「防衛省の情報関連」に関する所見は、次のHPに掲載したと連絡があった。http://www.japancm.com/sekitei/

 他はミニ新聞の「年頭所感」、今朝送稿を終了したのが今月末に発行される「SAPIO」の分で、「利権争いと航空疑惑」が主題。コメントにもあったが、航空自衛隊は昭和46年の雫石事件で、作家・佐藤優氏の言葉を借りれば「国策捜査」を受け、冤罪をかぶせられた苦い経験を持つ。それもこれもと言えば言いすぎだが、これなどは、航空疑惑と同様に戦力なき軍隊の悲哀であろうか?
 紙面の都合でさわりだけになったが、今まで闇の世界に閉じ込められてきた問題が、ようやく国民の目に触れる気配が感じられる。例えば「C型肝炎」問題で、被害者であった一般主婦やOLが立ち上がって、ついに全会一致で新法を成立させるところまでいった事は画期的だったと思う。昔ならばさしずめ「農民一揆」か「226」でしか果たしえなかった一種の「政治革命」ではなかったのか?
 今まで、政府のやりたい放題、強権を発動して国民を黙らせてきた旧弊が通用しなくなりつつあるのだと私は思っている。横田めぐみさんに象徴される拉致被害者救出活動も、今まで同様な「紳士的な交渉」をしていたのでは解決するまいと悲観的になる。当時の関係者を1人残らず引っ張り出して、徹底的に糾弾する、たとえは悪いが「文化大革命」方式で政府を動かさねば進展しないのではないか?とさえ思う。政治家や一部の官僚たちの「やり得」を放任してきた悪弊を改めねばなるまい。
「SAPIO」の原稿を書きつつそれを痛感した。

 さて、昨日「テロ法」が、予想通り参院で否決され、衆院で再議決されて成立した。参院では「賛成106:反対133」で、衆院では「賛成340:反対133」だったそうだが、自分勝手で国益を無視する状況は「民主主義とは何か?」と疑問を抱かせるに十分であった。
 こんなことでは参院不要論が再び高まることだろう。そんなさなか、不倫姫が出版記念でサイン会をしているところがTVで報道されたが、わが目を疑った。彼女も反対の一票だったわけで、彼女がテロ特の重要性についていかほど理解しているか疑問であるが、それよりもこんな議員に6年間にわたって年総額一億もの税金が支給されるかと思うとやりきれない。
 肝炎被害者はじめ、拉致被害者に対しては、税金を免除してはどうか?国家から何にもしてもらえないどころか、人生を狂わされたのだから・・・。不倫姫のような連中を「税金で養う」必要はないのではないか?と思った次第。

 ところで、安倍総理が辞任するという、あれほど異常な政治展開を見せてきた「テロ特法」問題に火をつけた主役の小沢氏が「衆院本会議を途中退席し、採決を棄権した」というからわが耳を疑った。理由は大阪府知事選挙応援だそうだから、これまた信じられない。
 今日行われる台湾の立法委員選挙は、野党の国民党が優勢であり、その結果が総統選挙にどう響くか?と心配されている。大阪府知事選挙よりもことは重大である!
 産経新聞によると「無責任だ!」「小沢氏の本心は法案に賛成じゃないのか!」などと与党から激しい野次が飛んだそうだが、「唐突なトップの“失踪”に民主党議員は呆然とした。鳩山由紀夫幹事長は、小沢氏は『再議決をやるべきではない』ことを多くの国民の皆さんに聞いていただくために大阪に向かったのだ」と強弁したが、ある民主党幹部は本会議場を出るなり『今まで積み上げたことが全部ぶち壊しだ』と地団太を踏んだ。他の野党も怒り心頭だ」という。
 福田首相が記者会見で「小沢氏にご都合があったわけでしょう。私からとやかく言えません」と言っているそのころ、当の小沢氏は「浪速のギャルの握手攻めにあい、笑顔を振りまいて『皆さんの大阪を何とかしなきゃいけない。どうもありがとう』」と言っていたそうだが、気は確かか?
 国家よりも一地方の『大阪』の方がそんなに大事ならば、大阪府知事に立候補すればいいじゃないか!これが野党第一党の党首だと言うのだからこの国も落ちたもの、昔だったら○○ものだが、それほどの重大問題だとの認識も国民にはなさそうである。
 海自部隊では補給艦「おうみ」と護衛艦「むらさめ」の2隻と隊員300名が“出師準備”に入った。部隊は1月下旬に出港し、3週間ほどで現地に達し、7月末まで補給活動を実施するという。
 これが戦後の「シビリアン・コントロール」の実態なのだが、実は「シビリ・アンコントロール」であることが国民にも理解できたのではないか?
 富岡定俊元海軍軍令部作戦部長は「開戦と終戦」という著書の中で、戦争を省みて、日本には「作戦研究」はあったが、「戦争研究」はなかった。「私達軍人は政治に関与すべからず」というしつけを、いやというほど叩き込まれてきたが、「これはしまった」と今でも痛感する。なぜかというと「陸軍はさほどではないが、海軍はことさら『サイレントネービー』に徹することを心がけて、政治に対し、すっかり臆病になってしまったからだ」と反省している。
 そして「海軍生活を振り返ってみて、軍人はもっと政治を理解しなければいけないと痛感しているのである」というのだが、政治家達がこのような児戯にも悖る行動を正当化しいつまでも続けていたら、いつか来た道に戻りはしまいか?
 いや、皆さん御安心あれ、富岡少将は政治を理解すべきは「軍人」だと言っているのであって、「国家公務員特別職」とは言っていないのだから・・・
 冗談はさておき、再びはるかインド洋上に進出する海自部隊300名の「武運長久」を祈りたい。

参議院なんかいらない (幻冬舎新書)

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開戦と終戦―人と機構と計画 (1968年)

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国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

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日本への遺言―福田恒存語録 (文春文庫)

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福田恆存評論集〈第8卷〉教育の普及は浮薄の普及なり

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