軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

上海会議=台湾問題

 聊か間が抜けた感があるが、台湾問題を書いたついでに、昨年の上海での会議を掲載しておこう。
 私は日中安保対話ではいつものことだが、台湾海峡の安定について、「中国側が大国らしく自制すべし」という論を展開したのだが、研究者達にはどうも台湾に対して消極的な対応をとることは許されていないようだ。
 今回の北京でも上海でも、会議の冒頭から中国が抱える最大の問題は「党の腐敗」「経済問題」そして「台湾問題」だといったように、かなり神経質な対応が見られた。
 私の発言の後、吉崎氏が9月に訪台したときの感想を述べ、「馬・謝候補は10%の差で差がつけがたいこと。台湾の国連加入問題、公民投票は実現するだろう。そうなったとき、これは『現状維持の変更』に当たるのか否か?」と質問すると、若い研究者が「代表的意見として三つある。1、武力解決。2、平和統一。3、独立。日本は『武力行使』を強調するが、原因は日台間のエスニック『本省人外省人の理解の差である。鄭成功以降の台湾人の問題を理解していない。『台湾独立』の主張のみだが、中国は『領土の問題』としてスタートしなければ誤解することになる。『大陸が武力で解放する』という日本の表現にも大きな問題がある。『中台』ではなく『両岸』関係である』として、中国人は『日清戦争時の下関条約第二次世界大戦後の『カイロ宣言』を基準としている」と述べた。
 他の研究者も私の意見に賛同できない点として「1、台湾島内の人々の気持ちをどう見るか。60%以上が現状維持で、独立は20%に過ぎない。現状維持が一番である。2、中国の台湾政策をどう見るか。17回党大会における胡錦濤発言は十分自信を持っている。前向きに解決したいと決心してきた。3、戦争が発生したら誰が責任を取るのか。両岸間の武力行使は『陳水扁とごく僅かの独立派』によるものである。国民投票、国連入りは民心党の選挙を有利にしようという策で、腐敗行為から目をそらすもの。民進党が敗れた場合には陳水扁は監獄に入るからである。陳水扁らがトラブルメーカーであり危険人物である。ブッシュは独立反対の意思を表示している。この点で日本は米国よりも遅れている。日本も、台湾の独立にも国連入りにもはっきりした(反対の)態度を示すべきである。中国が軍事抑止力を発展させているのは独立派に対するもので、台湾人民に対するものではない
 この発言は興味深い。『現状維持』に固執したことと、台湾の反中ターゲットとして『陳水扁と一部の独立派』に絞ったことである。これは、日本に対して、『日本人に対するものではない。一部の軍国主義者に対するものである』という理論に合致している。
 滑稽なのは民進党が腐敗していると言ったが、更にひどい腐敗政党である国民党には触れなかったことである。ついで、米国の『態度』を強調しつつ、我が国に対しても同調するよう働きかけている点である。
 彼らの欠点は、中国と台湾の国家体制の違いを認識していない点である。台湾は自由諸国の一員として、主権在民言論の自由、行動の自由を堅持しているが、一党独裁国家である中国にはその自由がないということである。中国と違って日本も台湾も『民意』を重視する。
 鈴木女史がこの点について補足説明したが、その日本でさえも『政府支持率は日に日に変化しているのであって、民意を読むのは困難』と彼女は指摘した。
 吉崎氏も台湾に対する日本政府の立場は『一貫している』と強調、武貞氏も「台湾の国連加盟は『独立か?』」と質問、楊所長がここで発言、「中国清朝の地図(領土)に戻りたくない。失われた領土に関わってくる第二次世界大戦終了後の地図を維持したい。70%以上の人民が現状維持を希望している。台湾が国であるかどうかについては、四つの規準がある。1、政府。2、人口。3、領土。4、国際承認である。4については既に165カ国が中共の主張を認めている。従って、台湾は一国としては認められていない。日本にも理解と尊重を希望する。国際的に守られるべき問題である。机の脚が一本欠けたら一つの机か二つの机か?このような機会を通じて理解を深めることは良いことである」
 ここで潮君が『平和的に解決する』ということと『平和統一』との違いについて質問すると、「武力行使の“平和性”は反国家分裂法に基づく」という奇妙な論理が示された。

 立法院選挙が終わった現在、中国政府は次の展開をどのように読み、どのように分析し対応しているのだろうか?何度もいうが、台湾問題は我が国の鏡であり我が国の将来を決定付けるものである。
 仮に台湾が赤くなれば、北方領土問題を抱えるロシア、拉致問題核武装問題を抱える北朝鮮、やがて大統領が交代するとはいえ、竹島問題を抱える韓国、東シナ海尖閣列島に狙いをつけている中国と、我が国は「反日勢力」と直接向かい合うことになる。
 後方には、鯨で反発する豪州が極めて強い反日感情をむき出しにしてきており、安倍政権時代の友好関係は既に消滅した。同盟国であるはずの米国の次期大統領にはヒラリー女史か、オバマ氏という民主党が有利だそうだから、万一そうなればまさに「四面楚歌」、米国のご機嫌を取りつづけて51番目の州に甘んずるか?、それとも中国ににじり寄って属国扱いしてもらうか?いずれにせ「一つの山に2頭の虎は住めない」のである。
 それともいっそのこと本来の日本国に戻るため、国内騒乱をものともせず、平成維新を断行して憲法を変えて再軍備し、全うな独立国に「脱皮」するか?
 懸命に体制を維持しようとしている中国政府に比べて、自由と民主をうたい文句にしてはいるが、実質は幼稚で未成熟な?政治屋サンたちが緊張感もなく「ガソリン国会」で遊んでいるのを見ると、「そんな場合じゃないでしょう?」と悲しくなる。中国では地方政府が腐敗堕落しているといわれているが、この国では中央政府がそうらしいから、上海閥との緊張した戦いを続けている胡錦濤主席の態度を見習ったらどうだ?といいたくなるほどである・・・。

 連日、各方面から色々なパンフや資料が送られてくるが、今日は終戦秘話とも言うべき映画「明日への遺言」と「南京の真実」の試写会案内、それに私の所感を書いた「月刊日本」と「SAPIO」新年特大号をご紹介しておく。