軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

上海会議・その7

 昨日はチャンネル桜の「今日の自衛隊」で、恒例の防衛漫談をしてきたが、時間が少なかったので「ギョーザ事件と食の安全保障」だけで終了した。
 問題になっている食品工場は国営企業だから、北京政府は相当気を使っているだろう。生産ライン上の問題ではなく、おそらく怨恨?による一部の仕業だろうが、そうなると、例えば航空事故で原因を「パイロットミス」にしてしまえば運行に支障なく“営業”に影響が出ないで解決できるから損失は少なくて済むが、民主主義国ではないかの国では逆に一大事である。オリンピックにそんな「反政府行動」でも起こされれば甚大な被害を蒙ることになる。北京政府は痛し痒しであろう。

さて、だらだらと続けてきた「日中安保対話」の所感を、一応今日で終結させておきたい。正規の調書は研究所に保管されていて、これはあくまでも私個人の記録に過ぎない。

(承前)
 午後の市内観光コースはY前所長がセットしてくれたものだそうだが、最初は清真寺という、イスラム教のモスクであった。イスラム教徒は上海には5万人、全中国では2100万人だという。
 モスクの管長が自ら案内してくれたが、多分ウイグル人であろう。笑顔の中にも目つきが精悍だったから、私はそう思ったのだが、金曜日とあって、続々信者がお参りに集まってきていた。
 ここもご他聞にもれず、文化大革命では江衛兵によって破壊されたそうで、1985年に上海市が60万元かけて修復したという。
 15時半に方塔園という9重の塔があるお寺に向かった。この塔は東に若干傾いて建てられているそうで、その理由は土地柄東風が強いのでそれに対応させるためにはじめから傾けて建設されたのだという。確かに地面に接する部分を見ると、地面と塔の基底部に傾きがあり東側に傾いているように見える。しかし、塔を建設した大工からその説明を聞いた王が、科学的施策?に感心して相当な褒美を与えたと聞いて、我々はすぐに調査に入った。
 その結果、それは「トリック」であり、地面と基底部に傾きがある様に見えるのは、意図的に地面が東側に盛り上がっているからであり、塔は直立していると思われた。
 塔の周囲を廻りながら、周辺を囲っている塀の上部と、軒下の水平部を四方向にわたって重ね合わせるように観察した結果、屋根と塀の上部に傾きはなく水平に一致したからである。大工が王様を騙して褒美をせしめたのではないか?何せこの国は歴史的に、コピー商品に見られるように、騙しのテクニックでは世界一なのだから・・・
 4時過ぎ、寺を出発して黄浦遊覧観光所に向かったが、意外に渋滞が少なく5時半に到着した。乗船すると、食堂入り口に、台湾の連戦氏夫妻、宋祖兪氏夫妻と、中国の宇宙飛行士の写真が掲げてあった。


     

 18時から船内で夕食会、開始直前に上海経済学院?に講義に行った吉崎氏が教授に送られて帰ってきて合流、学生約100名に講義したが、学生達は若くて明るくて楽しそうで、これでは日本の学生は勝てない!とショックを受けたという。日本人、特に経済人は、ハゲタカにはなれない!と感じた?らしい。
 やがて船は出航し、揚子江の夜のイルミネーションを楽しんだが、節電で日曜日以外は控えめなのだとのこと、しかしなかなか見事な夜景だった。
 ところが、甲板で夜風に吹かれていると、ホテルの風呂場と同じ匂いが漂っていることに気がついた。暗い水面を見ると、かなりのゴミと雑草類が浮かんでいる。特に水草が多く水面から異臭が漂っている。当然のことながら、各家庭は勿論、ホテルなどでもこの水を使っているのだろうから、共通の匂いがするのは当たり前だと気がついた。
 上流の『三峡ダム』によって、水がせき止められ、下流では相当の被害が出ているとインターネットなどで紹介されているが、多分それは事実なのであろう。上海は海に近いから、まだ水量はあるほうだが上流は枯渇しているところもあるに違いない。自然破壊の最たるものにならなければいいのだが・・・午後8時に上陸し、8時半にホテルに戻った。

 翌日は0700にホテルを出発したが、L室長自ら見送りに来てくれていたのには恐縮した。挨拶後、彼女はドイツ首相が非難されている新聞記事を私に示して、『彼がチベットダライ・ラマに会ったからだ』と言った。とにかく、チベットなどの少数民族問題、人権問題にはかなり神経を尖らせているようだ。
 高速道路は順調で、時々広大な建設現場が見える。これは2010年の上海万博会場の土地で、整備に入っているのだという。ここも300万人以上の『季節労働者』が流入しているようで、建設ラッシュなのは良いにしても、万博が終わったらどうなるのだろう?と気になった。吉崎氏によると、データ上では既に上海は『バブルは崩壊』しているという。
 上海国際空港は早朝なのに大混雑、原因は、中国人と思しき家族連れなどが、異様なほどの手荷物を持参していることと、カウンター要員の事務処理能力がよくないことにあるようだ。特に込んでいたのは我々が利用している格安のNWのカウンターで、列の中から中国人の係り官がランダムに乗客を検査するのも混雑に拍車をかけているように思える。
 出国審査を無事終了、北京でもそうだったが、今回は入国・出国管理官のカウンター上に見慣れないマークが書かれた表示があって、ボタンを押すようになっている。良く見ると、笑顔マークから泣き顔マークまであって、担当官の「対応振り」を評価するシステム?らしい。とても評価する水準ではなかったので、私は一度も押さなかったが・・・
 上海空港の待合室は大混雑、既にゲート前には大行列が出来ている。そんな具合だから、椅子に座っている余裕はなく、行列に加わった。
 座席は後部だったが、私の前列と後列に、日本人男性と結婚した中国人女性たちが陣取った。はじめは子供も女性も日本語を話すので、日本人家族だと思っていたのだが、窓際の座席に座った中国語をしゃべる女性二人と、夫人が中国語で会話しているから気になって観察したところ、日本人男性と結婚した中国人の妻、それに子供、他の二人の中国人女性は彼女の親戚か友人?らしい。
 驚いたことに後部座席も全く同様な家族構成だった。こうすれば、彼女達の日本入国も簡単なのだろう。銀座や新宿のデパートで催されている『中国人感謝フェアー』の買い物に出かけるのかもしれない。『日中友好』を一番「有効」活用しているのが彼女達かもしれない。
 0955に離陸、強烈な追い風に乗って3時間で成田に着いたが、やはり、成田空港の空気は私には最も適している!とホッとした。入国管理など、少しサービス過剰な気がしないでもないが・・・
 

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