軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

反革命暴乱をでっちあげよ!(トウ小平秘録)

 小冊子や月刊誌などが送られてくるので、それに目を通していると半日過ぎてしまう。昨日は都心での研究会に出て夜帰宅したのだが、あきる野市の清水様から貴重な本(非売品)が届いていた。
 昨年書いた「昭和史の生き証人・瀬島氏死去」を私のブログ読者である娘さんが届けてくれたのだそうで、『私のこの本を贈ることを決めました。お読みいただければ幸甚です』とあった。
 お手紙には「昭和18年陸軍に志願し、翌19年3月に日本の生命線である満州防衛の守備につく・・・」との書き出しで、満州各地での訓練を経たあと、ソ連の不法侵攻を体験し、精鋭部隊が南方に抽出されてはいたものの「関東軍ソ連軍を要撃して善戦していた。しかし、8月15日に天皇陛下終戦詔勅が下り、やむを得ず全軍は武器を措き、ソ連軍の支配下に入らざるを得なかった」との無念の告白がある。そして「その結果関東軍60万の将兵ソ連全土に強制連行され、獄中や重労働に服する羽目となった上に、8万余の尊い犠牲者を出すに至った」と、北欧のマルシャンスク収容所での苦闘を記録しておられる。

 たまたま偶然に私は、この時のブログの最後に、清水氏の著書「短歌(うた)で辿るソ連抑留記」を紹介している。何かのご縁だと思うので機会をとらえてお話を伺いたいものだと思っている。

 次は日本政策センター発行の「明日への選択・2月号」である。40ページ程度の読みやすい冊子だが、今月号は特に充実している。伊藤所長の「今月の主張:日本を救ったハーン」には、占領期の秘話が紹介されている。ギリシャ人を母としたラフカディオ・ハーンと日本の関係の意外なつながりである。更にたまたま偶然か、伊藤所長は「『食糧自給率39%』をどうするのか」と鋭い警告を発している。今回のギョーザ事件発生前の記事である。そして、これまた偶然か「在日中国人による共産中国研究グループ」の清流氏が『中国汚染工場の真実』と題して食糧に限らず、環境が如何に汚染されているかという実態を報告している。是非ご一読をお勧めする。

 日本青年協議会が発行する『祖国と青年・2月号』にも読ませる記事が多いが、今月はジャーナリスト・恵隆之介氏の『皇室と沖縄』が面白い。明治・昭和・今上天皇の沖縄に寄せられた御心を語っているが、沖縄県人に是非呼んでほしいものである。

 さて、ギョーザ事件は、中国側が「反攻」に出ているようだ。今朝の産経新聞は製造元の天洋食品の幹部が石家荘市内で記者会見して安全管理体制の『厳格さ』を強調したそうだが、『中国国内で汚染される可能性は存在しない』とまで述べたという。
 今までの溢れかえる情報を丹念に見ていけば、残留農薬以上の高濃度薬品が検出されたのだから、製造、保管過程上で、何らかの“人為的な”混入があったことはほぼ明らかであろう。インターネット上では、この工場で肉処理施設内に「携帯電話」を忘れて取りに入った女性従業員が、釜が運転されたため中で蒸し焼きにあって死亡したという。家族には和解金が渡されて口止めされているそうだが、まさか彼女の肉が混入した筈はなかろうが、問題は「携帯電話」が持ち込めていたという事実である。薬品の小瓶なんぞ、簡単に持ち込めるではないか!という内容の記事だが考えさせられる。
 今回の混入の真相が、日本人殺害目的などという大それたものとは考えられず、工場幹部に対する“怨恨”が絡んでいるのでは?と考えるのが妥当であって、それが判明すれば、天洋食品で製造されたある一定時期の製品を回収すれば、かなりの安全性は確保できよう。しかし、共産主義国家であり情報は制限され、我が国のような自由な報道が許されていない中国では、常に政府は『反国家体制の動き』に敏感だと解釈すべきで、“テロ行為?”であるとすれば胡錦濤態勢の弱点が浮き彫りになるからこれだけは避けなければならない。
 ただでさえも今や、大陸南部の大寒波による被害は想像を絶する状況下にあり、この問題を解決しなければ政権維持さえ危ぶまれる。優先順位は勿論寒波対策である。
 この国の人民階層は、エリート階層と呼ばれる管理者などは5%弱、中間層と呼ばれる技術者、公務員などが約30%、基層階層と呼ばれる農民・労働者が65%強を占めていて、これを束ねている共産党員は約5%強の6600万人だといわれているから、いわば「少数民族」、政府は戦々恐々なのだといっても過言ではない。昨年の安保対話でも「地方政府の腐敗はひどく、40倍を超える格差是正も急務である」という発言があったが、現政権の国内体制引き締めは、我が国のような『お遊び政治』とはわけが違うのである。
 そんな状況下である事を考慮すると、中国政府は天洋食品工場の“事件”を何とか穏便に処理し、国内騒乱に結び付けないように配慮する必要がある。万一『犯人』が特定出来たととしても、人事上などの個人的な怨恨が目的であり、反政府活動ではなかったことにしなければならない。8月にはオリンピックが控えている。世界中が注目する中で、“意図的な”食中毒事件でも起きれば、取り返しのつかない打撃を被ることになる。
 わが政府は、そんな中国の状況を十分に承知した上で、妥協することなく真相解明を進めなければならないのだが、相手は『謀略』を得意とする国である。果たして「食の安全確保」を主眼にした善意に基づく交渉で大丈夫だろうか?
 産経が連載している『トウ小平秘録』2月3日付に、天安門広場事件に関してこんなことが書いてある。「『人民の軍』が人民に銃を向ける。軍創設以来前例のない命令には、将兵の間に疑問と動揺が起こり、出動命令への抵抗事件が続発していた。全国の人民の反発も必至だった。国際社会は成り行きを注視、北京には1000人近い外国人記者もいた」そんな中、矢吹横浜市大名誉教授の「天安門事件の真相」や、当時の西日本新聞北京市局長、坂田氏の「トウ小平の世界」は、武力行使の正当化に謀略があったとの説を採る、として「それは6月2日未明から3日午後にかけての不可解な部隊側の動きによる。丸腰部隊は市中進軍を試みて阻止され、軍用車両からやすやす武器が奪われ、変装した兵士がつるし上げられるなどは『反革命暴乱事件』として武力鎮圧を正当化する陽動作戦だったというわけだ」。そして李先念政治協商会議主席が「反革命暴乱をでっちあげればいい」と提案したという。
 さて、事の真相はさておき、今回の問題解決に当たって、日本側はよほどふんどしを締めてかからないと、いつの間にか日本国内における「日本人民」による「反中活動」であったかのようにすり替えられてしまう可能性がある。日本のテレビも何と無くその方向にもっていこうとしているように感じるのは私だけであろうか?「中国に弱いと」言われて久しい我外務省の汚名挽回を期待したい!

短歌(うた)で辿るソ連抑留記

短歌(うた)で辿るソ連抑留記