軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

自衛隊も人民解放軍も募集難!

 土曜日は大阪で講演してきた。便利になったもので、新幹線で2時間半で大阪に着く。700型という最新式の列車に乗ったが振動も少なく快適だった。16両編成のうち喫煙車は「自由席3号車のみ」だという。時代は変わったものだ。そのうちに飛行機並みに「全車禁煙」になるのだろう。
 大阪の講演は「関西防衛を支える会」が主宰で多くのかたがたが集まったが、関西方面の自衛隊は部隊が少ない。特に航空自衛隊は縁がなく、奈良の幹部候補生学校だけだが、この日は中方総監部から幕僚長等、海自は阪神基地隊司令等、空自からは奈良の幹部候補生学校教育部長等、その他募集などを担当する地方本部長等多数が招かれていて、懇親会では久しぶりに3自衛隊の現役に会って楽しいひと時を過ごしたが、少子化の影響で「隊員がなかなか集まらない」と聞いて残念に思った。兵士不足から、米海軍のように「外人」を採用するとタクシー運転手殺人事件を引き起こすのであって、なによりも「強大な武器」を預ける兵士が日本人以外の青年や、日本人であっても質の悪い若者?で良い筈はないから、これは先行き深刻な問題である。政府は真剣に考えるべきである。
 実は中国人民解放軍一人っ子政策と、党幹部などの徴兵忌避などの影響で、なかなか兵士が集まらない。胡錦濤主席は思い切って軍人の給料を一斉に2倍にし、制服なども上質のものに替えたがそれでも困難らしい。近々再び軍人の給料を上げる?らしいが、そうなると一般の役人が黙っては居まいから、舵取りは難しかろう。
 そんな中での四川大地震、解放軍兵士の活躍がやけに国内宣伝されているようだが、これで募集もやりやすくなる?のかも知れない。
 最新器材を持った日本の救援隊が、人民解放軍よりも人民救済によい実績を挙げたら困る?かのような指図をされたとの報道があるが、そんなことよりも、現地は常に大混乱することを知るべきである。だから「指揮官」は大切なのであって、人民解放軍には今回のような災害に備えた、統一された指揮監督の経験がなかった?からであろう。
 数年前に、中国人民解放軍は、上海協力機構を通じて大規模な「ロシア軍との共同作戦」をしたが、その担当者は「共同作戦」という考え方が人民解放軍にはなかったので、分隊、小隊、中隊・・・という小規模の組織から組み立てて教育するのに大変だった、と私に語ってくれたことがあった。
 ソ連を仮想的として訓練されていた大日本帝国陸軍の将校たちは、大陸での大会戦を頭に叩き込まれていたが、実際開戦になると、思いもしなかった南方での「離島作戦」になり、実力が発揮されなかった例によく似ている。おまけにガダルカナルまで運んでくれた海軍のほうが一足先に戦力を失ったから、その後は島で自給自足、“餓島”になったことは戦史が示している。
 混乱は戦場の常態である。その混乱を如何に素早く収拾して戦力を発揮するかが、勝敗の分かれ目なのである。それには上級指揮官の「能力」がものを言う。村山さんではとてもとても・・・阪神淡大路震災で“それ”が証明されたではないか。
 19日の産経には、「日本隊、早く帰れって感じだ」という「解放軍の複雑な思い」が記事になっていた。日本隊を見たある解放軍兵士が「あれは日本隊だろ。早く帰れよっていう感じだ」と口走った。ある中国筋は「軍が仕切る現場で日本隊に生存者を発見させると思うか」と話したそうだが、「軍などが一旦捜索し救助活動を既に終えた現場で、若し日本隊が生存者を発見したら、それこそメンツが立たない」ともいったそうだが、これがあの国の一面を語っているのだろう。
 被災地では二次災害が起きているようだが、炭鉱の坑道内の状況や、核施設の被害状況に関する情報なども、そろそろ出てくるのではないか?
 中国政府が一番配慮しているのはそこだと思うのだが、目的外?使用された日本隊は、それなりに成果を挙げたと思う。胸を張って帰国して欲しい。
 被害者も7万人を越えるといわれ始めている。遺体の処理、伝染病予防など、これから中国政府は大変な問題に直面するのだろうが、片方で「オリンピック」を継続するというのだから流石は大国である。最も、3月に突発したチベット騒乱で、鎮圧に向かっていたところで起きた災害だから、人民解放軍兵士達にも「やる気」が起きなかったのかも知れない、などと現地の兵士の活動を論評する人も居る。
 何せ、過去の大戦では、南京陥落後の短期間に30万人(今や5万人増えて35万人になっているそうだが)も“殺された”経験を持つ国だから、7万なんて大した数ではないのかもしれない、と勘ぐりたくなる。
 この震災を通じて日本人は、「人民解放軍」が人民の軍隊ではなく、党の軍隊であることがよく分かったのではなかろうか?

 ところで話はがらりと変わるが、昨日は家内の「薔薇友達」に誘われて、2軒の御宅にお邪魔し見事な薔薇を鑑賞して来た。がさつな元パイロットたる私は、薔薇の花の美しさは感じても、その謂れや各品種の名前などにはさっぱり関心がない。長ったらしい名前なんぞは、最初から覚える気もない!
 ところが転居してきた昨年以降、家内は40種類もの薔薇を育てているのだが、家内の薔薇友達の御宅にはそれぞれ見事な花園が作られていて圧倒された。世代もほぼ同様の世代、リタイヤーして悠々自適?の環境、豊かな自然に恵まれた環境に感謝しつつデッキでコーヒーを頂くのは至福のひと時である。しかもそのお相手は、初対面の方々で、全く見ず知らずの方々なのだが、瞬時にして旧知の仲になるのだからから不思議である。
 これも薔薇が取り持つ縁、次回はわれわれがお招きするのだが、とても薔薇暦では同列ではないから家内はしり込み! しかし、お互い人生を楽しむ会話の時間を得ることだから、有意義なことではある。
 特に、年がら年中「軍事・軍事」で家内から愛想つかされそうな私だから、今回の薔薇で得た方々との出会いに感謝!

 帰宅したら、本が届いていた。憂国の同志、古賀俊昭氏と土屋たかゆき氏の共著である。是非御一読をお勧めする。

強制退去アメリカ人研究者の中国はこれほど戦争を好む

強制退去アメリカ人研究者の中国はこれほど戦争を好む

知られざる隣人たちの素顔

知られざる隣人たちの素顔