軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

虚しい“建前”?

 貧乏暇なし、とはよく言ったもので、このところ調査会などの評議員会や、ライオンズクラブでの卓話など、チョコチョコと都心に出かけるので落ち着かなかった。勿論、薔薇に入れあげている家内の「運転手」として、御近所の薔薇愛好家を訪ねて親交を暖めたりしていたせいもあるが・・・。

 ところでコメントの中には「700型」という“古典的”な私の表現を近代的な「N700系」だと修正してくださる方もいて、コメント欄は大変参考になるし、貴重な情報も多く感謝している。
 先日、新宿駅前を通っているとき、十数人の婦人の一団が「ミャンマーサイクロン被害と四川省地震の復興義援金」を募金していたが、様子を見ていたところ全員中国人!。彼女らは統一されたジャージー姿で“和気藹々”、車椅子に座った老人がお金を入れると嬉しそうに大声で「トーもありカとネ!」と声を掛ける。
 その隣には、ミャンマー人と日本の支援者?が並んで、これまた「サイクロン被害義援金」を集めている。更に京王デパート周辺では別の団体が募金活動をしている。いつもだったら“気が弱い”私には素通りできない雰囲気なのだが、コメント情報で四川省地震募金団体の中にイカサマ?団体があることを知っていたので、今回は素通りできた!
 そのせいで、いつも立っている托鉢のお坊さんも“無視”してしまい、申し訳なかったと反省している。
 日本の各種支援金募集団体にもイカサマが多いと聞いているが、その昔、高校時代の同級生が大学のサークルで学生運動の一環として「カンパ」活動に参加したとき、集まった募金を勝手に交通費や飲食代に使っているのに腹を立て、左翼活動から手を引いたと語ってくれたことがあった。脱会した彼はメンバーに脅迫され、殴り込みを受けたそうだが、剣道部主将で2段の腕前だったから、竹刀一本で撃退したという。その後左翼活動家達が鉄パイプで武装し始めたのは彼のせいだったのでは?などと思ったものである。
 詐欺まがいの募金活動の典型は、最近では「拉致被害者救う会」を装ったグループの例があるが、ことほど左様にこの手の活動の裏は不明朗なものが多い。私が見たグループがそうだとは言わないが、中国各地を旅して、彼らは「弱肉強食、他人に道を譲っていては生きてはいけない」「金儲けのチャンスは絶対に見逃さない」というガイドの言葉が今でも耳に残っているから、そう感じたのである。お人よしの日本人が「詐欺」にかかるのが多いのは、性善説からか、はたまた「小金?持ち」が多いからか・・・

 ところで今朝の産経新聞11面の「土日曜日に書く」欄の、長辻論説委員の記事は興味深かった。「なまずでなく竜が暴れた」という四川省地震に関するものだが、中でも「地震湖と核兵器工場」という項目は注目すべきである。
 長辻論説委員は「四川省の巨大地震で、発生直後から気になっていることがもうひとつある。中国の宇宙基地と核兵器の製造・研究施設が同省にあることだ。西昌衛星発射センターや周辺に核ミサイルは配備されていなかったのか。中国政府は核関連施設は無事だったとしていたが、一部の被災を認め始めていた。大震災からの早期復旧には災害情報の透明化が必要だ。中国政府にそれを期待したい」と結んでいるが、当初から私は警告していたが、一部メディアも既に16日付でそのことに注目し、共同は「被災地に核研究施設・地震の影響に懸念強まる」との香港発情報を伝えている。香港の軍事研究者によると、相当数の研究者が犠牲になった上、一部の研究者は混乱にまぎれて国外に脱出を試みているそうで、軍はこれを懸命に阻止している、ともいう。地震復興支援に「剣つき鉄砲」持参で兵士が警備するのは「戒厳令」並みだから、案外事実なのかもしれない。
 核保有国、特に米露は、綿陽地区にある中国の核施設をほぼ正確に握っているから、衛星などを使ってその被害状況などを入念に偵察していると考えられるが、軍事音痴のわが政府にはそんなことを気にする風潮さえないようだ。やがて来年の「黄砂」の時期に“異常な放射能”が探知されてはじめて気がつくのでは?今でも異常なほどの化学物質を含んだ黄砂で、私の車も塗装に被害を受けているが、洗車専用のシャンプーに「黄砂専用」の製品が出回っていることを政治家たちは御存知あるまい。ガソリンだけが車の必需品では無いのである。

 冷戦時代、米ソ間の核論議で賑わっていた頃、毛沢東ソ連の核を恐れ、米国からの攻撃を恐れて、この地区の峻険な山岳地一帯に、巨大な地下核施設を建設したことは、中国情勢に詳しい平松教授の論文にも書かれている。その巨大な地下施設が今どのような状態になっているのか非常に気がかりである。  
 以前、中国国産のAWACS機のテスト中に、墜落して多くの先端技術を受け持つ科学者達が犠牲になり、開発が相当遅れるだろう、といわれているが、今回の地震で核技術者に多数の犠牲が出ているとすれば、中国政府にとっては大きな痛手だろう。その上、地下に秘匿して建設されているICBMのサイロや、移動式ミサイルの中に被害が出ていれば、それは即刻中国の核戦力の低下であり、米・露との核戦力バランスが崩壊することだから、国際政治の場での中国の発言力にも影響する。これは中国政府にとっては致命的だから、最高度の機密として絶対に公表しないであろう。
 わが政府は、そのような「国際軍事関係」に無関心で、人命救助、被災者治療などの支援に熱心なようだが、救助隊は十分な働きが出来ないまま帰国し、代わって派遣された医療チームも、総合病院での「した働き」を余儀なくされている。
 その上、そんな傲慢ともいえる中国政府の態度を、予想を超えた甚大な被害を伴った未知の経験だからだとか、一部の中国人は「感謝」しているなどと、中国側を弁護し、現場の状況を「友好」基調で針小棒大?に伝える日本のメディアの素地にも、そんな軍事音痴があるように思う。
 長辻論説委員は「中国政府」に透明さを期待したが、軍事最優先の今の中国には、まず“絶対に”あり得ないであろう。現場を中心にした地図を見れば明らかなように、この地区は、毛沢東ソ連からも米国からも容易く攻撃されない様に選んだのであって、そこに住んでいる原住民の危険性などは歯牙にもかけてはいないのである。万一サイロが狙われて破壊されても、仮に事故が起きても国家としての被害は極限できるし、周辺の少数民族が絶滅しようがお構いなし、むしろその方が好都合だと彼らは思っているに違いない。
 そんな専制国家に“軍事的”透明性を期待するのは、単なる“外交辞令”か、それとも新聞社としての“建前”なのか、いずれにせよ私にはこの最後の一文は虚しく響くのだが・・・

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トウ小平秘録 [下]

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