軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

中国の言論弾圧

 今朝の産経トップは「中国の言論弾圧懸念」の見出しで、ウイグル自治区カシュガルの襲撃事件を取材していた邦人記者二人が拘束され、暴行を受けたことを重視している。
 問題は日本政府の対応だが、「これを受け、直ちに抗議し、中国側は5日、遺憾の意を表明した」とあるものの、「北京の日本大使館の抗議を受けた中国外務省の秦報道官は、『現地で起きたことは遺憾に思う』とのコメントを伝え」ただけであり、町村官房長官は「事実であることは間違いないと思っている。関係当局への情報収集に努め、事実であれば中国側に強く抗議する」「現時点で中国政府からの回答はない」と述べ、8日に予定されている福田首相胡錦濤主席との首脳会談で「抗議するかどうかについては『事実関係を把握しなければいけない。そこまで方針が決まっているわけではない』と述べるに留まった」という。記事を読む限り、日本政府の対応はまるで他人事のように受け取られるが、真実はどうなのか?確かにCNNなどでは日本人ジャーナリストに対する暴行事件として大きく取り上げ、現地警察署副所長がホテル?に謝罪に行ったと伝えているが、日本政府の「情報収集」はどうなっているのか、実にまどろっこしい。
 最も、上空から地上に要求しても「現在情報確認中!」などといわれて、ぼんやり待っている余裕などない生活をしてきた元戦闘機乗りの私だから、こんなやり取りがまどろっこしくて仕方ないのだが、外交交渉にも「タイミング」と云うものがあるはずである。
 少なくとも、日本テレビの男性記者(37)と東京新聞の男性カメラマン(38)の二人が、言われなき暴行を受けたのだから、政府は毅然として中国政府に謝罪を要求し、補償させるべきである。これが昔だったら、邦人保護で陸戦隊が上陸!して処置していただろうが、言葉と紙のやり取りだけで実行が伴わない以上、ギョーザ事件並みに扱われるのが当たり前なのかもしれない。何せ相手はムチを使わぬ日本国なんぞ少しも怖くはなかろうから。せめて8日に行われる「首脳会談」で、胡錦濤主席が開口一番「非礼を謝罪」するべきであり、それを受けて福田首相は「再発防止」を厳重に申し入れなければならない。8日の首脳会談を注目しておこう!若しそうしなければ、9日の長崎原爆式典には参加するが、15日に靖国には参拝しない、という首相は、れっきとした「反日分子」であるといわれても仕方なかろう。そうなれば多分、英霊の怒りは「鉄砲水」となって福田政権を押し流すだろう!野党・民主党のみならず、色々な方面でそれを待っている方々がいる雰囲気が伝わってくるが、危機に直面している日本としては政界のこれ以上の混乱は決して得策ではないのだが、仕方あるまいと思う。

大東亜戦争中の「朝日新聞」記事」

「無実の罪で処刑された向井少尉の遺書」

大西瀧治郎中将の遺書」


 ところで、記者暴行事件はこれだけではないという情報もある。四川大地震取材中の日本はじめ外国の記者団の中には、中国側官憲から混乱にまぎれて?相当な「拘束・暴行」を受けた事件があったようだが、オリンピックムードに配慮?してか、表ざたになっていないという。確かにメディアは2日後に迫った五輪報道に熱中していて、その裏に隠された重大な問題点を報道していないように感じられる。資本主義国のメディアの欠点は金に弱いことにあり、紙面や画面では「正義」を主張するものの、その実裏では「スポンサーに弱い」のだから、彼らが唱える『正義』にも限界がある。視聴者たるわれわれはその点に十分配慮して見ておく必要があろう。
 一面左「東亜春秋」欄の、山本編集委員の「中国リスクに備えはあるか」はその点で示唆に富んでいる。五輪ムードは人工的に操作されて高まっているが、既にこの国の経済状態は急降下している。
中国経済は厳しい試練と挑戦を受け、困難が増している。中国が直面する矛盾や問題の規模と複雑さは世界に類例がない」と書けば、日本の中国ウォッチャーの発言だと思うだろうが、誰あろう1日に外国メディアと会見した胡錦濤国家主席自身の言葉である!
 これは極めて重要な内容を含んでいると私は思っている。山本編集委員は「さまざまな角度から中国リスクへの対策を急ぐ時だ」と警告したが、11面の「正論」欄には、中嶋嶺雄国際教養大学長が「北京五輪と中国危機の深層」と題して、「やがて15億にもなんなんとする人口を抱えたまま、一党独裁体制で経済の市場化と政治の非民主化を継続しようとする無理が、いよいよ臨界点に達しつつある」と分析し、「やがて2012年の次期党大会で現在の胡錦濤指導部が交代する頃には、現在の中国共産党体制では中国の危機を乗り切れなくなるかもしれない」とし、あくまで「反革命」を根こそぎ鎮圧する強圧体制で徹底的に押さえつけるか、それとも「マルクス・レーニン主義毛沢東思想の限界を自覚して、共産党一党独裁体制を自ら解体するという上からの『反革命』の可能性」をあげている。私は前掲の胡錦濤主席の“異例の”発言は、五輪後の「上海派による巻き返しを意識した発言ではなかろうか?」と思っているが、昨日の「正論」欄では、「北京五輪と中国のしたたかさ」と題して、クライン孝子女史が過去の五輪の歴史から見て、日本が如何に中国に利用されてきたか、それは日本には『政府直径の諜報・防諜機関がなく、参加各国を説得するとっておきの情報を持ち合わせていないから」とし、「日本は自らの欠陥を棚に挙げ他国のせいにしている場合ではない」と説教している。
 この状況を勘ぐると、福田・胡首脳会談は注目すべきものだと思う。胡主席福田首相に「どんな謎」をほのめかすのか?又それに福田首相は気がつくのか?同席するだろう宮本大使に大いに期待したいと思っている。

 ところで毎度の事ながら、五輪でいくら金メダルを取るか?と各紙揃って大きく紙面を割いているが、水泳の北島康介選手が、テレビ朝日のインタビューで語ったように「選手にとっては戦争」なのである。国家にとっても莫大な費用をかけて“参加する”だけの運動会ではなく、一種の戦争である事を自覚すべきだろう。
 7面下の「ハロランの眼」欄に、ハロラン氏は、中国学者がニューズウイーク誌に「北京五輪は、英国とのアヘン戦争での敗北に始まった中国の『国民的劣等感』からの脱却を画するものと意図されている」と書いたことを紹介しているが、中国にとっての『五輪』は、江沢民前主席によって大々的に組織された『反日運動』が、日中戦争に無残な敗北を喫した劣等感を払拭するための“道具”であったと同様、単なる“運動会”や『平和の祭典』では決してないのである。
 自衛隊の連絡機でお出かけになる福田首相は、運動会に顔を出す父兄の様な感覚で出かけてはならない。北島選手が戦おうとしている『戦場』に出掛けて、前線兵士を激励する将軍の意識で出かけてもらいたいのだが、根っからのサラリーマン?である首相には、一国の最高指揮官であるにもかかわらず、ブーゲンビルに飛んだ山本五十六元帥のような覚悟が見られないのがまことに残念である。
 とまれ改造福田内閣には「祭りの後」に襲ってくるであろう「鉄砲水」に対する備えは確立しているのか否か?国民は静かに見守っている。

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