軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

自信を持った中国!

 27日の下妻での≪防衛漫談≫は、会場である社務所の広間をはみ出して、玄関の上がり口までパイプ椅子を並べた100名を越す熱心な方々に囲まれたアットホームな講演会になった。講師紹介で、69年前のこの日に、私は樺太で生まれた、今日が私の誕生日だ、というと皆さん驚いて一斉に拍手、祝意を表された。花束は間に合わなかった?らしいが、帰り際にご当地名物のおせんべいをたくさん頂いた!
航空自衛隊は中国空軍に勝てますか?」という率直な質問には困惑したが、国民が等しく関心を持っていることなのであろう。「イージス艦事故」の実情も、実は皆さんはよく理解しているようで、正当な事故の経緯と評価、イージス艦に対する同情を感じたのだが、報道で一方的に苛められた現役諸官は自信を失っているのかもしれない。どちらがどうか、知っている方が多いのだから、メディアが何と言おうと元気を出して欲しいものである。
 自宅から片道3時間かかるというところが難点?だったが、「筑波エキスプレス」という「便利な」交通機関も出来ていて、関東平野も近代化?されている!のに感心した。最も守谷駅を降りてから更に45分も車に揺られたが・・・
 広大な関東平野の村々には、今でも鎮守様が根付いていて、地域住民の八幡様に対する敬意が受け継がれているのが嬉しかった。ここには確かな「日本」が残っている!

 講演後、再び逆ルートをたどって都心に引き返し、北京社会科学院・軍事科学院一行の歓迎夕食会に旨く間に合った。昨年北京で激論を戦わせた陸軍少将と、2000年9月以降「口げんか?」を続けている中佐(今や上級大佐)と再開して旧交を温めたが、ここでも今日が私の誕生日だと分かると、一斉に祝意を表された。「日中友好」である!

 昨日は一日中彼らと会議をしたが、東シナ海(彼らは「東海」と呼ぶ)問題、尖閣問題で激論が続いて時間オーバー、会議終了時には険悪な雰囲気になったが、“公式会議”を終えると、人間として普通の会話になる。
 夕食会には大使館の現役武官も参加したが、あまりにも「本音の会議」だったから、少し戸惑っていたようであった。
媚中派”“親中派”ばかりと応対していても、得られるものが少ない、判断を誤る?と思ったかどうかは知らないが、一行は今日は防衛研究所との公式会議、その後は“加藤さん”などを訪問するらしい。
 岡崎研や防研と「どんな話をしたの?」などと彼が尋ね、彼独自のコメントなどを付け加えられたら不愉快だが、防衛省管轄の防研はともかく、民間機関である岡崎研にとっては「指図されるいわれはない」から、私は気にしていない。

 ところで、今回の会議全体で感じたのは、中国は五輪成功で自信満々だ、ということである。早速胡錦濤主席は、五輪閉幕直後の25日には韓国を訪問、タジキスタントルクメニスタンを精力的に歴訪しているから、彼ら国家機関の職員や軍人も、単なる「挨拶外交」ではなく、資源獲得外交、勢力拡大外交を展開している様に思われるのだが、とにかく国を挙げて“したたか”である。したたかというより、機を失せずに直ちに影響力を拡大するという、これが普通の外交なのだが、日本にはまねが出来ないのが不思議である。 今回の胡錦濤主席の外遊で注目すべきことは、28日の上海協力機構の会議で、有力なメンバー国であるロシアと微妙な一線を画したといわれる点である。グルジア問題を中国はどう受け止め、どう利用しようと思っているのか?
 五輪後のアジアは「中国」が、欧州は「米とEU」で、その欧州と米と険悪な関係になりつつある「ロシア」とは一線を画す・・・。中国は米国への接近ルートを残しておきたいということなのだろうが、ロシアがそれにどう対抗するか? 米国も中国を取り込んでロシアと対峙したいのだろう。国際関係の力学?は、大きく動き出した感がある。

 会議では予想通り「対日関係は今後予断を許さない」と痛感したが、それに対する戦略が日本政府にあるのだろうか?と心配になる。北朝鮮でさえも、最初から小ばかにしていた米国務省下級官僚を切り捨てて、6カ国協議を「ご破算」にする挙に出た。ヒルさんもライスさんも、大いに目算が狂ってあわてているに違いない。
 その昔、『蒋介石政権を相手にせず!』と表明して、シナ事変を拡大させた近衛声明にも似て、北の対応は「ブッシュ政権を相手にせず」という意思表示なのだろう。大国・アメリカも舐められたものだ。最も、そんなことは当初から分かっていたのだが、ヒルさんの放言に振り回されて真相がつかめなかったメディアが気の毒である。
 米国国務省はどうしてこんなに下手なアジア外交をするのだろうか?とこれまた不思議に思う。その昔、蒋介石に入れあげて、まんまと毛沢東を太らせ、日本と戦ってスターリンを増長させ、世界を不安定にしたにもかかわらず、これらの歴史的事実から全くといっていいほど教訓を学んでいない。台湾問題然り、越南問題然り、そして今回の6者協議という名の北朝鮮問題、全てアジア外交は失敗しているといっても過言ではあるまい。
 米国産の優秀な戦闘機に搭載されている「敵味方識別機」をホワイトハウスは装備していないように見える!
ならず者国家」の首領様に、中近東、中央アジアなどで身動きできないこと、大統領選で権力が薄まっているという足下を見透かされた結果だろうが、北の外交はこれまた「したたか」である。米国は舐めていたのじゃないか?
 ところがアジア唯一?の信頼できる大国で、同盟国である日本もまた頼りにならない。むしろ足手まといのところがある。こんな“四面楚歌”状態だからアジア外交がうまくいかないのだろうが、この局面を「次期大統領」はどう切り抜けようとするのか?いずれにせよ11月には結果が出るが、それまでの間、果たして「四方の海は波穏やか」かどうか・・・

 軍事戦略知識“抜き”でも大臣が務まる「いびつな」日本の政治“屋”には、流動する世界情勢は理解できまい。
 タンカーが襲われ、邦人がアフガンで拉致殺害されても打つ手はなさそうだし、南西方面海域は「自分のもの!」という中国にもやり返すだけの勇気がない。
 こんな体たらくに、国民の不満は(中国ほどではないにせよ)相当鬱積していることを各地を廻ってみて痛感する。五輪成功で自信を持った隣国・中国に、自信がなさそうな日本政府はどう対処する気か?

 刺激的だった今回の「闘論会」は、いずれ正式報告書作成後、何らかの形で徐々に発信していかねばならないと思うが、国内政治情勢報道の“異次元さ”を見ていると、情けなくて十二指腸潰瘍が再発するような悪い予感がする。
 昨夜の天地を揺るがす雷鳴と豪雨は、弛みきった日本国に対する神々からの警告ではないか?と心配になるほど、神がかりになりそうな今日この頃である。

存亡 UNIFORMED OPERATIONS

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崩壊日本国再生論

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アメリカは日本をどう報じてきたか―日米関係二〇〇年

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