軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

何から何を防衛するのか?

 防大時代に、“戦後”民主主義国になったわが国の自衛隊は「何から何を守るのか?」との題でよく討論させられたものだ。
「わが国の平和と独立を守る」「民主主義体制を守る」といってもピントこない。「国民の生命・財産を守る」ことが任務だとすれば、警察や地方自治体の仕事を“奪い”兼ねない!
天皇の軍隊」から「国民の軍隊」になったのだ!と指導官に言われても、天皇は「万世一系」といわれていたから何と無く従えても、守る対象が「一般国民」となれば、「反自衛隊の塊みたいな連中」や、「強盗・暴力団」も含まれているから、何でそんな奴らのために命をかけるのか?という疑問が浮かび、質問すると指導官は答えられない!。
「民主主義下の軍隊」だから、合法的に選挙次第では「共産主義政権」が樹立されることも考えられるが、その場合「自衛隊」は「シビリアン・コントロール」に従うべきか否か?という質問にも指導官は口ごもる。

 模範解答なんぞ、一枚の紙切れに過ぎない。問題は人間集団の行動をどう律するかであろう。思想信条から、それに従えない者は「制服を脱ぐべきだ」と指導官は言ったが「それでは国家の危機に背を向けて逃避することになるのではないか?」「民主主義体制を守るのであれば、共産主義は相容れないのだから戦うべきではないか?」という質問にも、指導官は答えられなかった。昭和35年、私が2年生当時の防大の「ディスカッション(いわばホームルームとでも言うか、討論会とでも言うべきか)」風景である。
 
 あれから既に48年経つ。「日本国憲法」も「国防の基本方針」も不磨の大典!畏れ多くて誰も手をつけないまま今日に至ったが、世界中の混乱に拍車がかかり、争いは激化している。にもかかわらず、わが国では「何から何を守るのか?」について全うな意見は交わされない。

 今朝の産経5面片隅に、総裁選続行中の自民党5氏の行動が報じられているが、佐賀市内での街頭演説で、麻生氏が北朝鮮情勢について「日本の安全に脅威となりかねないとの見方を示し」、「更に、朝鮮半島の不安定化を念頭に『対応する備えをしておかねばならない』と述べ、外交・安全保障体制を整える考えを示した。石破氏も防衛「関連法整備の必要性を訴えた」そうだが、遊説中の掛け声だけに終わりはせぬか?


 他方、国民生活を脅かす事態は深刻である。政府が「毒入りギョーザ事件」の解決に真剣に取り組まなかったツケが噴出して、メタミドホスばかりか、メラミン入り乳製品で国民の食に対する安全意識は“完全に”危険水域に達した。

 今朝の産経一面トップは、丸大食品大阪府高槻市)の食品汚染問題だが、BBCやCNNでは中国粉ミルク、乳製品の危険性についてはるか以前から大問題になっていることを報じていた。三笠フーズ大阪市)問題も、全て「中国からの違法食品輸入」に問題がある。

 29面の「あきれ顔・・・『また中国産』」という社会面記事に、厚労省幹部が「・・・次に何が出てくるか分からない中で、検査をするのは費用に加え、技術面でも不可能。日本の輸入業者が、中国の工場に衛生管理者を常駐させて、原料から製品まで一括管理するか、自主検査を徹底するしかない」と、あきれた発言をしているが、国の管理責任を放棄して、民間会社に責任転嫁、検査までまる投げしているのはみっともない。何のための「厚労省」なのかじっくり考えてみるが良い。費用も人員も足りないのは理解できるが、まる投げするのは無責任ではないか?
 事の本質と重大性が認識できなかった農水相が次官共々「更迭」されたが、こんな低レベルの意識しかない幹部がいるのでは、次は厚労省次官更迭か?

 32歳の主婦は「加工品は原料をどう確認したらいいのか。(産地や原料を)分かりやすく大きく表示して欲しい」といい、68歳の男性は「『なぜ、そんなものを外国から輸入しなければならないのか』と首を傾げ」、30歳の主婦は「・・・チルド食品に頼る機会が多いので不安。ギョーザ事件以降、袋の裏をチェックする。自分の身は自分で守らなければ」と語っているが、その下に『中国国家品質監督検査権益総局』が、「日本の事故米が原料に使われたアサヒビールの焼酎を輸入停止にするとともに、日本から輸入される酒類の安全検査を強化すると発表した」とある。どこかおかしいのじゃないか?
 三笠フーズの拝金主義とモラル欠如が引き起こした問題ではあるが、その大元は『ミニマムアクセス米』として受け入れた「中国米」にある。盗人猛々しい、というべきだが、農水省は規定だから受け入れざるを得ないのだ、と言い訳する気だろう。しかし、それに対する処置としては、中国政府の対策の方がしっかりしているのではないか?
何時から日本の官庁は、中国以下のレベルに落ち込んだのか!

 11面の『土日曜日に書く』欄に、宮野シンガポール支局長は「日本の政治家にないもの」と題して書き、背番号制があるシンガポールとわが国の年金制度の比較をした上で、
「日本は背番号制がないから管理できないというのが彼ら(厚労省の担当課長)の言い分だが、ことの本質は勝手に流用したり、改竄したことにある。問題はシステムではない。今の日本の政治家や官僚に欠けているのは職務への誇りと責任感ではないのか」と結んだが、全く同感である。

 メラミン入り事件で厚労省幹部は「次に何が出てくるか分からない中で、検査をするのは費用に加え、技術面でも不可能」と言ったが、では防衛省自衛隊が「敵がどう出てくるか分からない中で、防衛するのは防衛費も足りず、技術力でも不可能」だから、国民は「自分の身は自分で守ってくれ」と防衛白書に書いたらどうなるか?防衛省は袋叩きにあって崩壊するだろう!

 宮野氏が言ったとおり、この国の政治家と官僚は「無責任に過ぎる」。中国のほうがよほどメリハリがつき始めた!というとお怒りになる向きもあろうから、その中国人民が、どんな「自己防衛手段」をとっているか、大紀元報からご参考までに引用しておく。

 これは中国人現代詩だそうで、そのテーマは「ごく普通の中国サラリーマンの一日。朝の起床から夜の就寝まで、サラリーマンが直面する有毒製品、環境汚染、偽物商品などが分かりやすく詠まれているもの」だという。

以下引用・・・ 
「朝起きたら、ジエチレングリコール (diethylene glycol、有毒の有機化合物)混入の『田七・歯磨き粉』で歯をみがき、藍藻に汚染された水で顔を洗う。息子には、メラミン混入の『三鹿・乳児用粉ミルク』を飲ませ、自分は闇工場でつくった豆乳と硫黄で漂白した蒸しパン、あるいはダンボールで作られた「肉まん」を食べる。お腹がいっぱいになったら家を出る。大きく深呼吸して究極の汚染空気を思い切り吸い込み、二つに折れた「九江大橋」のそばを通って会社へ行く。

 昼は、同僚とスーダンレッド(発がん性のある合成着色料)で染められたフライド・チキンを主食に、ベンゼン含有のコーラを飲む。夕方は、友人とレストランで飲み会だ。下水道から回収した廃棄油で作った野菜炒めと、避妊薬で育ったアナゴの煮込み、排水溝に生息したザリガニの唐辛子味噌炒めを注文し、ホルムアルデヒド有機化合物)混入のビールを飲み干す。食後、オーナーからは重金属が安全基準の100倍にも達する中国茶をサービスされる。精算の際、不運にもつり銭に偽札が混じっていた。

 ようやく家に着き、寝床に入ろうとしたら、リフォームしたばかりの部屋はホルムアルデヒドが充満、涙とくしゃみがとまらない。仕方なく、頭まで『黒い再生綿』で作られた布団にもぐりこむ。40万元も残る家のローンを考えると、なかなか寝付けない・・・」
 大紀元報によると、「このほど発覚した乳児用粉ミルクの有毒物質混入事件後、多くのネット利用者から、いまや「国産」と聞いただけで怖くなる、などのコメントが寄せられている」そうだが、日本の優秀な“はずの”官庁幹部がこの程度の認識だったら、いずれ日本国内にも、これと同様な「現代詩」が流行ることになるのかもしれない・・・。

 防衛省のみならず、政治家と官僚各位には「何から何を守るのか?」について、この際しっかり勉強してもっと「防衛意識」を高めてもらいたい。

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