軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

戦友、逝く!

 昨日は突然訃報が入り、四谷まで通夜に行ってきた。最後の勤務地沖縄で、四面楚歌の中、一致協力して任務を果たし、ともに現地で「退役」した防大同期、村田秀信元陸将補である。学生時代から決断が早く、潔癖だったから「軍神・村田」といわれていたが、少女暴行事件が契機で非難囂々(マスコミ中心の)の沖縄で窮地に立っていた米軍を陰で支えた。海兵隊とは密接な協力関係にあった第一混成団長として、彼はローリングス海兵司令官の信頼が厚かった。
 基地問題で大揺れの現地では、奇妙な県民投票が実施されたがこれを「無意味・・・」と本音を語ったのがマスコミに伝わって袋叩きにあった。しかし、彼の発言を支持する沖縄県民の方々は実に多く、「よく言ってくれた!」という電話がひっきりなしであったが、本土のマスコミはこれを無視、それに引きづられたか陸幕も防衛庁も腰が引けていた。
 私はすぐに彼の部屋に行って「一週間、蛸壺に入っておれ!」と“元広報室長”としてのアドヴァイスをしたが、同時に彼の上司である同期の西方総監に現場の状況を説明し「慌てふためいて村田を斬るなよ!」と“脅迫”したものである。

 平成9年7月1日付で同時に「退官」となったが、米軍指揮官達との送別会で、ローリングス司令官は「前任地欧州で次は日本だ、といわれた時、シメタ!侍に会える、と喜んだ。しかし着任してみるとどこにもサムライは居ず、アマチュアのゴルファーとシンガー、それにチェーンスモーカーしか居なかった。だが、ジェネラル・村田はサムライだった。私も15日に帰国するが、帰ったら日本で侍に会った!と胸を張っていえる」と語り村田の手を取ったものである。
 膵臓癌だったらしいが、彼らしく激痩せした姿で7月の同期生会に出席していたという。同期にお別れを言いに参加したのであろう。「貴様、来るか?」と電話があったが、私も退院後だったから欠席したのが悔やまれる。しかし、いずれ黄泉の世界で会える。その時にゆっくり思い出を語り合おうと思っている。私もそろそろ後始末にかからねばならない。金子由香利 の歌ではないが、最近いたずらに「時はすぎてゆく」。
戦友・村田の冥福を心からお祈りする。

元大隊指導教官・桑江閣下と村田団長(退官パーティで)


 今朝の産経「主張」欄は、海自隊員死亡を取り上げ「精鋭部隊なればの規律を」と説いたが、確かに昨今の海自部隊の事故は多すぎる。「精強な部隊には厳しい訓練が不可欠だ。特警隊と第一術科学校は国民の信頼を取り戻す努力を続けてもらいたい」と書き、同時に「ことに臨んでは危険をも顧みず、身を持って専心責務の完遂に勤める」自衛官に対して、「国家・国民は社会的処遇を十分に行っているだろうか。これまでの処遇もまた、自衛官のモラルを低くしてきた要因の一つであることを忘れてはならない」と付け加えたが、私に言わせれば、無理解な国家・国民を作り出しているのは一に「メディア」だといいたい。広報室長時代に、その理不尽を身を持って体験した私は、メディアを替えない限り、国民に正当な理解は得られまいと思う。
 整備不良の民航機が墜落しても「自衛隊の救難が遅かったからだ」とか、中には『自衛隊無人機が衝突したのだ』などというデマが公然と一人歩きする異常なメディアの世界が自衛隊に対する国民の『無理解』を助長しているのだと思っている。

 そこに漸く「日本文化放送『桜』(チャンネル・桜)」が誕生したのだが、草莽たちの支援はあっても、なかなか大手からの支援はない。ついにCS放送も中断のやむなきに至っているが、それが現状である。


 防大卒業時に後輩から色紙をせがまれた私は『見る人の、心心に任せおきて、高嶺に澄める秋の夜の月』と書いたのだが、あれは昭和38年3月のことであった。以来45年経つ。
 既に今の自衛隊を構成するほぼ全員は、日教組による戦後教育を“十分に”受けて育った若者達であり、それは何も自衛隊だけに限らない。武器を持つ実力集団である警察も、海上保安庁も、恐るべきことに行政を取り仕切る官僚社会も法曹界も、皆その世代で占められている。
 海自の特警隊だけに「精鋭なればの規律」維持を呼びかけても、かなり無理があるというべきであろう。おまけに募集難は続いている・・・

 ただ、一OBとしては、自衛隊は『外国勢力』が目標であり、その外国勢力はつねに君たちの“実力”を見つめているのだ、という自覚を忘れないでもらいたいということである。今は亡き戦友・村田は、世界一の精強さを誇る米海兵隊司令官から「侍」と認められ、尊敬された男であった。「ボロは着てても心は錦!」、我々(失礼!君たち現役諸官)が『身を持って専心』倒すべき相手は外国からの侵略勢力であるということをゆめゆめお忘れ無き様。そのためには、貴重な戦力を、八甲田山の雪中行軍の悲劇のように、むざむざ“訓練”で葬っていて良い筈はない、と助言しておきたい。海幕長以下、幹部諸官の猛省を促したい。

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