昨日は靖国神社に昇殿参拝の後、台湾の元教授の話を聞いた。228事件に参加したため拷問投獄、政治犯として火焼島での獄中生活14年7ヶ月。
獄中は勿論、出獄後も渡米して勉学に励み、宝石学の教授となる。ところが皮肉にも、新聞に掲載された宝石に関する論文が、中国(大陸)政府要人の目に留まり、1983年に北京の中国地質大学に副教授として招聘される。
意を決して“敵本陣”に渡り、その後8年間、共産主義国の“本場”でつぶさに生活を観察し唯物史観の国の実態を体感する。
台湾に帰国後も、80歳の身ながら意気軒昂、主権国家建設のために日夜活動する。
そんな経歴の先生だから、淡々とした語り口ながら、自己の体験談には迫力がある。神経の集中する体の一部に火のついたタバコを押し付けられると、我慢の限界に達すること、そんな環境下にあっても、自分の家族の安全を第一に考えること・・・。
人間性の限界を14年間も体験したのだから、日本に蔓延る頭でっかちで“変な左翼主義者”の様に斜に構えた見方をすることもなく、明朗闊達、笑顔を絶やさず2時間はあっという間に過ぎたが、質疑応答も熱が入った。
私は昨年来、2008年危機と題して、台湾問題の行方はアジアの将来を占うものと重視してきたが、台湾は議会はもとより、総統までもが国民党に復帰したので、再び「白色テロ時代」が到来するのでは?と危惧した。
大勝した馬総統の支持率は急激に低下して、彼に投票した多くの台湾人、特に婦人たちの失望感は大きく、今ではデモが相次いでいるというが、一時的なムードに酔って自ら彼に政権を与えたのだから、その責任は自ら取る以外にはあるまい。
これが“未熟な”民主主義の陥る落とし穴であるということに、“選挙民”はどうやら気がついたようだが「時既に遅し!」の感がある。
教授によると、前政権中枢部にいた要人たちが次々に「召しだされ」、陳水扁前総統の「違法行為」を次々に“自白”させられていたようで、ついに陳総統と夫人は逮捕された。台湾人は「228事件」で十分に体験したことだろうに、今再びその体験を繰り返すとは、何とも情けないかぎりである。
12月5日の産経新聞に、金美齢女史は「『母国に捨てられる』寂しさ」と題して、レオナール・フジタの絵に「母国を離れ異国の生活を選んだ意地の中、一抹の寂しさと悲しさを感じる」「母国を捨てるのか、捨てられるのか。悩ましい問題だ」「テレビで、陳水扁前総統が手錠をかけられた両手を高々と上げて『台湾万歳』と叫んだシーンを見て、9歳の孫娘がショックを受けていたと、娘が電話をかけてきた」「民進党系の政治家が相次いで逮捕されている。戦後60余年、台湾人も中国式に汚染されている」「中国への傾斜を予言していたが、まさかこんなに早く、恥も外部もなくとは。中国人馬候補の甘い言葉を信じた多くの台湾人は、今頃何を考えているのだろうか。台湾を捨てるのか、台湾に捨てられるのか。それが問題だ」と書いた。
しかしこの言葉は決して『他人事』ではない。今国内で密かに進行しているもろもろの『間接侵略』を分析すれば、日本人にとって『明日はわが身』になる公算は極めて大きいといわねばならない。
「中国への傾斜を予言していたが、まさかこんなに早く、恥も外部もなく」と今度は日本人が嘆くときが来ないようにするにはどうすべきか。
国籍法の改正?もすんなりと通り、国民が知らない間にこの国の大本が変質していく。せめて『白色テロ』を避け、国に見捨てられた台湾人に、どんどん『日本国籍』を与えて欲しい!と、講演を聞きながら思った次第。
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