軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

いまだ鎖国か?

 昨日は恒例のチャンネル桜で「防衛漫談」の収録。ソマリア沖派遣について井上君と論じたが、本当に大丈夫かな〜と思う。まあ、政府のやることに間違いはないだろうから、派遣される自衛官も“淡々と”出撃するのだろうが、家族は心配だろう。夫が海賊に抵抗して射殺したら、帰国後逮捕され国内法で裁かれかねないのだから・・・。

 
 その昔、F−86Fでスクランブルしソ連機を監視中、23mmの旋回銃が編隊長機に狙いを定めてくるのだが、万一火を噴いたら確実に編隊長は撃墜される。そのとき、2番機はどうするか?で激論したものだ。
 直ちに反撃してもこちらは13mm機銃だから更に接近する必要がある。そうなると仮に「仇」を取ってもその時間的差が、正当防衛にも緊急避難にも適合しないだろうから、着陸後自国の警察官によって「逮捕」される。そして外交ルートを通じてモスクワ送り、やがてシベリア送りになるだろう!などと冗談を言ったものだが、だからといって規則を遵守して「仇討ち」をせずに帰還したら、今度は飛行隊仲間には絶対に受け入れられまい。
 そんな現場の心情は、内局の役人にも、ましてや「議員様」「大臣様」に分かりはしない。あれから40年、未だに問題は少しも解決されてはいない!


 今朝の産経トップには北朝鮮が「テポドン発射準備」をしていることを米国の衛星が確認したという。韓国に対する軍事的威嚇も増えている。
 一面左に湯浅記者が「いまだ鎖国を実施中」と題して、「今の日本の政治もまた、鎖国に先祖がえりをしているかのようである」。マサチューセッツ工科大のサミュエルズ教授らが、ヘラルドトリビューン紙に「国際社会で日本がその機会を失うと、大損することが分かっていない」と論じ、「日本がイラクから陸上自衛隊航空自衛隊も撤収させた上、ソマリア海上自衛隊の派遣を決定するだけに数ヶ月を要したと酷評」し、「日本は国内政治の都合で外交が混乱するのを許すつもりらしい」と遠慮なく皮肉る、と書いている。
 今や四面楚歌なのに、国内では与野党(と称する烏合の衆)が、互いの足の引っ張り合いを演じている。21世紀に入っているのに、この国だけは縄文時代らしい。

 サミュエル教授の発言はそれだけらしいが、米軍人たちは「P−3C派遣決定もせず、だらだらと何を考えているか分からない同盟国だが、空軍参謀長の首を切るのは“電光石火”、やっていることが全くわからない!」と嘆いていたことを湯浅氏の文に付け加えておこう。
 いや、私が三沢基地司令時代、湾岸戦争が始まったのだが、そのときも今回同様、米軍人とその夫人達が日本国の対応振りを嘆いたのだが、あれから20年、少しも改善されてはいない。湯浅記者が言うとおり、この国は間違いなく「鎖国中」なのである。

 そんな最中に「黒船」が来る!今月中旬に、クリントン国務長官が、初外遊で日本に来る。
オバマ政権関係者からは『(日米の)連携を確認することで早期に関係修復を図る必要がある』との声が出ていた」そうだが、さて、どんな連携を確認しようとしているのか、しっかり準備しておいたほうが良い。

 ガザ紛争も、オバマ大統領就任式が終わるや、ハマスの攻撃に対してイスラエルは報復攻撃を開始した。そのハマス指導者のミシュアル氏は、テヘランでアフマデネジャロ大統領らと会談し、ハマスへの支援に感謝している。ガザ紛争はイスラエル・イラン戦争の序曲である!


 ところで11面の「正論」に、西原前防大校長が「政治が自衛官の士気低下招く」と題して、実に本質を突いた論を展開している。是非一読願いたいが、「自衛隊は軍隊であるとの政治判断によって制服組に誇りを与えることこそがシビリアン・コントロールの第一歩である」と結んでいる。中には「元制服」なのに、後輩たちの行動を「シビル」と一緒になって非難している者もいるが、この文を熟読玩味すべきである。“こんな連中”のことを私は「三色パン」と呼んでいるのだが、その意は、「ある時はアンパン、そしてある時はクリームパン、又ある時はチョコレートパン」と、カメレオンのように状況によって中身を変えることから来ている。
 しかし、どれ一つとして、自立したそれぞれのパン、即ち「アンパン」でもなく「クリームパン」でもなく、ましてや「チョコレートパン」でもない。やはり「3色パン」なのである。
 西原氏が言うように、少なくとも制服の軸線は「愛国心」にあって揺ぎ無いものであるべきはずだが、制服高官の中にも軸線がブレ、「どうせ戦争はないのだから・・・」と言わんばかりに問題にもせず、制服を着ただけの小役人に成り下がり、ぬるま湯につかってちんまりと“満足”している者もいる。
 だから私は、田母神前空幕長の出現を「防大15期生にして漸く本物の空将が出た」というのである。


 さて閑話休題、なぜか雑誌「正論」の「私の写真館」に取り上げられたので、いろいろな話が飛び込んでくる。「これからはサングラスとマスクが必携ですね!」などはまだ良いほう。「毛髪の変遷が明瞭です!」とか、「表紙ページの右の広告(毛筆巻物広告)には何か意図があるのですか?」には参った。「毛筆」であり「毛髪」ではない!
 その原因も、写真を見れば一目瞭然なように、航空自衛隊34年間の勤務で『帽子とヘルメット』を義務付けられたことが原因、明らかに『公務災害』であることがお分かりだろう!シビリアン・コントロールに従った成果である!
 冗談はさておき、それよりも、特集「これでは日本は守れない」の、田母神論文、現役幹部の匿名座談会、北村淳氏の「米国の例」を挙げた論文は必読である。

 亜細亜地政学研究所代表の福田久氏から著書が送られてきた。制服の端くれだった私には、森鴎外夏目漱石も、ましてや永井荷風も縁遠い存在だが、6篇ある中の「『文弱』ということ、『武弁』ということ・・・「文武両道」に関する私的考察」は興味深いのでご紹介しておく。郁朋社刊(¥1500+税)

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