軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

305飛行隊創隊30周年記念

 7日(土)は、表記行事に参加するため、久々に常磐線に乗って百里基地まで行ってきた。往きの上野駅では特急が強風のため遅延していて停車中で危うく間違えそうになったが、8日の帰京時には今度は踏み切り内に乗用車が立ち往生していて急停車。車の排除に時間がかかって30分遅延。何とも“のんびりした”常磐線の特急列車だった。
 しかしどうしてこの辺の方たちは、あんな畠の中の遮断機がある見通しの良い踏切内で車を止めるのだろう?
 列車内では羽田発の団体旅行に間に合わなくなったご老人が出たりで、車掌も乗客も携帯電話で連絡取るなどてんてこ舞い。上野駅に近づくと今度は通路をぞろぞろとご婦人達が前方車両へ移動する。乗換えなどでかなり時間が切羽詰っている人が多かったようだ。
 たった一人の「おばかさん」のために、どれだけの人が迷惑をこうむっているか、GDP損失もバカになるまい、などと思ったが、私は帰宅するだけだったから特に被害なし、これが講演に出かけるときだったら「頭に」来ていたかも・・・。
 しかし、考えてみると、ほんの少しの悪徳政治家達のおかげで、1億2千万国民が立ち往生しているのだから、それに比べるとこの“事故”は可愛いものである!

 7日の天気予報は「雨」だったのだが、空飛ぶ(今では地を這う?)“照る照る坊主”が出かけると必ず晴れる!というジンクスがあるから、慰霊祭始め式典も無事終了。夜の懇親会も若者達とOBたちで大盛況、2代目隊長だった私も、かっての部下達に囲まれて一気に30年前にタイムスリップした気がした。
 考えてみると20代の若い現役隊員たちは、当時は「海のものとも山のものとも」分からない存在だったのに、今や立派なパイロット、整備士として育っている。F4ファントム5番目の飛行隊として始まった305飛行隊は、粛々とF15で首都圏防空任務についている。こうして崇高な国家防衛事業は営々と受け継がれていると思うと感激した。

 やがて305飛行隊も、F22かF35か、それとも国産の「ニュー零戦?」を装備しつつ、黙々と首都防空を続けるのか、50周年を迎える頃はどうなっているのか興味深々だが、その頃私は90歳、私を看取ってから逝く!といった当時の先任曹長は92歳、お互い頑張ろう!といって別れたが・・・。


 余談だが、たまたま今日の産経11面に宇宙飛行士に選ばれた二人が大きく出ていて、空自出身の油井亀美也2佐が長野県川上村出身というのが気になった。記事には「高校一年の夏、実家近くの御巣鷹山群馬県)に日本航空のジャンボ機が墜落。大勢の犠牲者が出て母校の小学校も捜索隊の拠点となり、空の世界の厳しい一面を見た」とあり、やはり・・・と思った。
 事故当時は夜で、墜落地点が長野か群馬か評定が困難だったため、一部のマスコミや歴史学者から「地点評定も出来ない」「夜は飛べない自衛隊」などと非難されたのだが、彼の実家は長野県、墜落地点は群馬県と込み入った県境だったことがこれでも良く分かる。
 川上村の小学校には、空自の指揮所を開設して中警団副司令の藪口一佐が指揮をとった。任務を終了して帰隊する時、隊員たちと小学生達はカレーライスを囲んでお別れパーティをした。隊員たちは離村を前に校舎を丸ごと水洗いして洗い清めた。その後音楽の先生から子供達に生演奏を・・・といわれ、当時空幕広報室長だった私は中部航空音楽隊を小学校に御礼の演奏のために差し向けたことがあった。
 先生も父兄も勿論小学生達も初めて聞く生演奏に大感激だった、と現地から報告があったが、陸自の同期からは、今までこの地区には募集業務で出かけても自衛隊出入り禁止地区で入れなかった、と聞かされ驚いたものである。日教組が強かったのだという。そんな昔のことを油井君の出身地「川上村」で思い出したのだが、あれから24年、当時星空が好きだった高校1年生の油井君が、何の縁かそのご空自のF−15パイロットになり、今や「星の王子様」、人生いろいろだな〜と痛感する。

 同じ産経の9面には、「F-22めぐり攻防激化」というF22の調達見直しの記事が出ていて、オバマ大統領は「国防費抑制か雇用維持かの判断を迫られている」とあった。

「軍事=悪!」と云う観念から脱却できない日本人には不可解なことだろうが、F22製造に携わっているのはジョージア州や、テキサス州だけでなく、計44州で25000人以上が携わっていて、「製造は年間約120億ドル(約1兆1800億円)の経済効果がある。F22の生産継続は国防上も、経済的な観点からも重要だ」と生産継続を訴える上下両院議員238人は訴えているという。

 オバマ大統領は「国防関係業者に(金額が)空欄の小切手を渡す時代は終わった」と“宣言”したそうだが、さてどうなるか。日本でも防衛装備品をめぐるスキャンダルが続いていたから大きなことは言えないが、それが今ではダムや道路建設業者にも「金額が空欄の小切手」が出されているという、とんでもない事態がばらされて、またまた闇の世界の“犠牲者”が出兼ねない雰囲気だが、やがて裁きを受ける時が来るのだろう。「正義が勝つか、悪が勝つか?」


 大体、命を懸けて訓練に励み「国家防衛任務」に誇りを持って邁進している、若き自衛官たちの装備品から「上前をはねること」に生きがいを覚えているような一部の政治家や業者、それに官僚たちが、法の目を掻い潜っていつまでも裁かれない、というのは奇妙である。
 しかも、防衛装備品調達をめぐっては、高度な国家機密がどんどん「周辺諸国」に漏洩している恐れがあるというのに、現場の隊員だけが処罰され、もっと高度な機密保護を一部政治家や官僚たちが守らなくとも問題視されないようじゃ、この国も終わりである。起訴されている秋山直紀氏の著書「防衛疑獄」を読むが良い。今話題の小沢氏も、金丸氏と共に各所に出てくる。

 ま〜いずれにせよ、特急電車が良く遅れる常磐線沿線のビッグ・カントリーにある百里基地では、上がどうであろうと若い隊員たちが真面目一本やりで健全で、黙々と任務に励んでいる姿を確認することが出来て実に感動した一日だった。

防衛疑獄

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航空自衛隊の戦力 (学研M文庫)

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自衛隊エリートパイロット 激動の時代を生きた5人のファイター・パイロット列伝 (ミリタリー選書 22)

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自らの身は顧みず

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