軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

田母神前空幕長「退官式!」

 昨日は午後から、明治記念館で行われた表記の会合に出席してきた。
 会場に入りきれないほどの参加者で、政界からは安倍元総理と小池元防衛大臣が参加し所見を述べた。田母神氏も元気に参集者に感謝していたが、何よりも自衛隊で行われる「通常の退官パーティ」は、身内だけの閉鎖社会の集まりだが、一般国民がこれほど多数参加した退官パーティは初めてではないか?


 私が広報室長を命ぜられた時“塀の中”だけに閉じこもっている閉鎖集団を世に公開しようと決意して、私以下8人の小所帯の広報室員が踏ん張ったものであった。

 主担当であるマスコミ関係者はもとより、大学教授や特に大学生や学生達に組織に触れてもらいたいと努力したものだが、順調に滑り出したところで、例の日航機事故が発生し、いつものように≪自衛隊叩き≫が沸き起こった。
 報道があまりにも常軌を逸しているので、私は実名入りでこれに反論したのだったが、報道記者や新聞記者が暗躍するのはまだ計算に入っていたものの、まさか彼に弱みを握られた上官から「反論行為」を咎められるとは思わなかった。
戦闘機乗りとしては、後ろから編隊員にミサイルを撃たれたようなもので衝撃であった。
こんな上司の下ではやっていけないと悟り辞表を出したのだが、部下たちに詰問され説得されて「広報室長更迭」を上申するというぶざまなことになったが、直属上司の預かりとなり、そして突然三沢に“飛んだ”のだが、とにかく、遣り残した計画に「後ろ髪」を曳かれる思いでみちのくへと旅立ったものである。


 あれから20年余、私よりもはるかに陰湿な更迭劇で、現任の空幕長が1階級降格処分の上、即日首を切られ、退官式も行わせないという「非人道的」かつ前代未聞の仕打ちを国から受けたのであった。

 空自のトップが、理由なき更迭処分を受けたのだから、部下達は憤慨した。あれから一年も経たないのに、彼を処分した政府は大敗北を喫し、最高指揮官と大臣は野に下り、次の選挙では相当な苦戦が予想されているというから、まさに天網恢恢・・・である。この問題に火をつけた事務次官と統幕長はどこに≪天下り≫したのか・・・


 そんなことより、“被害者”である田母神氏の「退官式」が、明治記念館で堂々と挙行された意味のほうが大きいと思う。その裏には同期生達の結束があり、多くの支援者達の協力があった。会場には各地から駆けつけた方々がいて、私の古巣である三沢からの参加者もいたので感動した。


 会場には音楽隊も儀仗隊もいなかったが、国歌斉唱の後、同期の粋な計らいで、スクリーンに音楽隊が映し出され、堂々の栄誉礼が奏されると田母神前空幕長は壇上に立って“私服姿で”挙手の敬礼をした。
“訓示”の後の栄誉礼中に、私は会場を見渡したが、自衛隊OB以外の一般参加者達は、始めて見る自衛隊の≪式典≫を感動の面持ちで凝視していたから、私はこれでやっとわれわれ当時の広報室員が目指した、「開かれた自衛隊」の目的を達した様に感じた。

 この様子は、チャンネル桜で放映されるのだろうが、離任の辞を聞けなかった現役隊員たちもやっと一区切りつくことだろう。強力な武器を持った武装集団を構成するのは「人間」である。その人間の本質をつかむ努力なくして戦場という残虐無比な場所で戦うことは出来ない。


○戦場で困るものの一つが「恐怖心」である。
○戦場とは錯誤が連続する場所である。
○「戦場と平時」では道徳が逆転する。
○「見敵必殺」=「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、一歩踏み込めそこが極楽」
○敵は常に大きく見えるもの、敵が強そうだからや〜めたでは戦争には勝てない。

 そんな特殊な環境下でも、将帥の意のままに動く「人間」を育成する、それが国を守る武装集団に課せられた「究極の人間関係」である。田母神空幕長の首を切った「シビリアン」たちにその心構えがなかったのは止むを得ないことだと私は理解しているが、ユニホームがその中に加わっていたという事がいかにも残念である。

 尤も、危険な場所から遠ざけられている武装集団だから、きらびやかな金モールは巻いていても中身は「シビリアン」なのかもしれない。「ボロは着てても心は錦・・・」の精神は期待できないのかもしれない・・・

 明治記念館で行われた前代未聞の「空幕長の退官式」は、今まで≪塀の中≫に隠されてきたものだったし、退官パーティも現役やOB、防衛産業界などに限られてきた。故に今回の参加者たちにとっては、初体験の感動的な一幕だったのではないか?

 散開後、引き出物をもらったが、その中に制服をまとった田母神空幕長“人形”がついた携帯ストラップがあった。
ブルーリボンには「日本はいい国だ!」と書かれている。A商会の製品で非売品だというが「MADE IN CHINA」とある。
とうとう田母神旋風は、中国人に日本国航空自衛隊最高指揮官の制服人形を作らせ、「日本は良い国だ!」と書かせるまでになったか、と感慨無量だった!
改めて40年間の祖国防衛任務、ご苦労様でしたと田母神君に申し上げたい。

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