軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

愛国心は消え失せた?

 有名企業の倒産やトラブルの実態を分析してみると、その根本に「愛国心が消え失せた」ことがあると気づく。
 トヨタは、有名な「看板方式」で一躍世界のトップに上り詰めたが、つまるところ「クオリティーコントロール=品質管理」がうまくいったことにあった。


 昭和58年、私が防衛研究所の研修生だったころ、日産自動車座間工場を見学したことがあった。そのとき、ラインに並んだロボット達がいっせいに溶接作業をしていて、流れるようなその中で監督官が作業の具合を点検し、不具合が見つかると直ちにラインから外してタグをつけ、人間の手で確実に修復したあとラインに戻していたが、その丁寧な作業を見た防研同期の米軍人が私にこう言ったことが忘れられない。


「クオリティーコントロール」とは米国が開発した品質管理方式だが、能力にばらつきがある工員達を抱えた米国の自動車産業界に根付くことはなかった。ところがこれは一定の高度な能力と、日本人らしい粋目の細かい作業慣れした作業員がいる日本の工場で開花した。これは驚きだが、やがて米国の自動車産業は必ず日本を凌駕するだろう。それは不景気で能力の低い作業員をどんどん解雇し、優秀な「マイスター」を手元に残しているからである。10年後を見ていて欲しい」と。そしてその10年後、座間工場は消滅し、米国の自動車産業は復活した。


 この世は「苦あれば楽あり」、奢る平家は久しからず・・で、常に「サインカーブ」を描く。
 その後再び日本は米国の自動車産業を凌駕したが、米国側は二度と屈辱を味あわぬよう巧妙な仕掛けを講じた。それが「緊要な部品(信頼性ある)」を日本から持ち込むことは、現地生産方式とはいえないから、すべて現地部品を採用せよ、という自国民の福利厚生を主眼にした国益上からの要求であった。

 自信に溢れていた?当時のトヨタはその要求を呑んだが、さて、肝心な部品の「信頼性チェック」に抜かりはなかったのか?言語も文化も違う「外地」で、相手の勢いに押されて「ま〜いいか」と譲歩したことはなかったか?

 その結果がこの有様である。今回のトラブルの原因が米国製部品の信頼性欠如が原因であったら、(米国自動車産業界の“謀略”だとは思わないが・・・)開き直って「だからわれわれは精度の高い日本製の部品を使用すると言ったのだ!世界一の軍事力を誇る米国の製品の信頼性も落ちたものだ!」と言い返すべきだろう。

 ましてや中国においておや、「HONGDA」などコピー製品の氾濫で「ホンダ」は多大な被害を蒙ったが、これも確実な決着を見ないままうやむや?に終わったのではなかったか?だから相手は味を占めた。

 そんな教訓を生かしもせず、世界に冠たる「ハイブリッド方式」の車をトヨタ現地生産したから、高度な最新技術はすべてとられてしまった・・・。そして今や中国でも「反日」ならぬ「反トヨタ」である。

 危機管理欠如などと私はいう気はしないが、要は「戦いの原則」に関する知識欠如だとはいえよう。

 軍事技術の漏洩や流出は国の命運を左右する。空自が装備するF−15戦闘機は、確かに当時の米空軍が使用する第一線機であったが、それを日本やサウジアラビアなどに「輸出」する決断を米国がした時点で、F−15は第2線機に属するものと評価するのが軍事常識である。

 もちろん、これは米国のみならず世界の軍事常識であり、ロシアが中国に「輸出」したS−27などもそうである。
 少なくとも外見は同一でも中身は全く違うことを知る必要があろう。車だって同様で自国(会社)の最新鋭技術を使った製品を、販売しただけでも技術は流出するのだから、ましてやそれを現地で生産するというのであれば、作業員の教育を通じて、すべての技術が相手国に流出する覚悟がなくてはなるまい。それも「敵性国家」にである。


 私が言いたいのは、そんな経済論の基礎的議論ではなく、その根底に「愛国心」がなければならない、という事である。武器には愛国心が常に作用するが、民製品にはそれが伴わなくてもよいというはずはなかろう。
 つまり、車でも衣料品でも、現地生産する目的は「人件費が安い」などという商売上の儲け理論が根底にあるからで、その結果、肝心要の自国の青年達の職場が奪われ、大学は卒業したけれど・・・という大正時代の不景気状態が現出する。

 優秀で、真面目な自国青年達の大部分が、安定した職業に就けず、不安定な人生の船出をしていることを、これまで日本の政治家達は放置してきた。その結果、大卒女性が「キャバクラ嬢」に変身し、将来ある若き男性たちは「派遣=アルバイト」生活で、家庭も築けない惨憺たる有様に陥った。

 財界人は、自国青年達に安定した「職場」を与えて始めて存在価値があると自覚すべきだろうがその根底は「愛国心」である。それを自覚することなく、ひたすら外国人たちに生活安定の場を提供し、相手国の国益に貢献しているのは、まさに「愛国心欠如」から来ている、と私は感じる。


 あまり深刻に考えると、またまた胃が痛くなるからこの辺で止めようと思ったら、産経新聞の7面「透明な歳月の光」欄の曽野綾子女史の文章を見つけた。そんな現場を知らないわが国の薄っぺらな政治家達を痛烈に皮肉った文章だったので大笑いした。紙数がないので貼り付けるからご一読あれ。


 同時に6面の「歴史人物講座」に、日本政策センターの岡田幹彦氏が和気清麻呂が「危機で見せた渾身の忠節」について紹介している。≪慎みを失い、分を忘れ、傲慢増長の極みに達し、権力欲の権化≫となって皇位を窺った野心家・道鏡にまつわる話である。

 このところ、天皇陛下の体調が優れずお休みなさっているという。魑魅魍魎の権力闘争が、如何に陛下の御宸襟を悩ましていることだろうか。国家の一大事だと感じるのは私だけか?
 四面楚歌に陥りつつある今、われわれは今一度「愛国心」を取り戻すべきだろう!
 和気清麻呂が得た神命は現状にも全く通じるものに思えてならないが、これも貼り付けたのでご一読あれ。

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