軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

破たんした?中朝関係

12月15日、≪北朝鮮朝鮮労働党の金国泰政治局員(中央委員会検閲委員長)が13日、急性心不全などのため死去した。89歳。朝鮮中央通信が14日、伝えた≫という共同電に、私以外で驚いた方は少ないのではないか?
記事はこう続く。
≪16日に国葬が行われる。葬儀委員には、12日に処刑された張成沢元国防副委員長の妻で金正恩第1書記の叔母の金敬姫政治局員や、韓国メディアが中国に亡命したと報じていた盧斗哲副首相も名を連ねていることが同通信の報道で確認された。
 韓国統一省によると、(金国泰氏は)1924年咸鏡北道生まれ。故金日成主席が抗日パルチザン闘争を繰り広げた時期の盟友、金策元副首相の長男。党中央委と国会に当たる最高人民会議常任委員会は14日、共同の訃告で、金国泰氏が「反党反革命分子」の弊害を清算する戦いを繰り広げたと称賛した。(共同)≫

≪産経から≫


実はまだ金策の二男が残っているのだが、彼は韓国の金大中大統領の葬儀に、北朝鮮から弔問団を引率して現れ、当時の李ミョンバク韓国大統領と握手したと写真入りで報じられた事がある。この時も北朝鮮ウォッチャーでさえも気が付かなかったと思われる。彼が何者であるか?について…

産経新聞から。金大中氏にも日本人の血が流れているという…≫


2009年10月に講談社から「金正日は日本人だった」を上梓する契機になったのが、謎に包まれた「金策」の存在であった。

能登半島沖の不審船事件後に、突如日本海に表れた「金策号」=防衛省のHPから≫


2002年9月4日に、日本海に出現した不審船にはハングルで「金策」と書かれていた。しかしこの「謎」に気が付いたものはほとんどいなかったから、私はあらゆる資料を駆使して追求した。
そして達した結論が表題だったのである。
しかも「金策号」出現の2週間後には、日朝首脳会談が控えていた。そして、この会談で金正日は予想もしなかった「日本人拉致」を認めたのであった。
この時、全くだらしなかったのが当時のわが小泉首相だったが、この年の5月には朴ウネ・現韓国大統領を、彼女の父・朴正煕大統領を尊敬する金正日平壌に招待して、彼女を恋人のように優遇した上で「韓国を訪問することができたら真っ先に朴大統領の墓参りをしたい」とまで語っていた。
さらに金正日は、彼女の母親が北の特殊機関員・文世光の犠牲になったことを謝罪したのだが、彼女はその後9月の日朝首脳会談が終わるまで何故かこれを公表しなかった。


この時点で金正日が9月の日朝首脳会談に期待するものが覗えたのだが、NSCがなかった我が国は、金正日が出した一連のシグナルに気が付かず、みすみす拉致被害者全員救出という絶好のチャンスを逃してしまった…というのが私の所感であった。

その観点からしても、朴ウネ女史の大統領就任後の大変身ぶりは理解できないのだが、それはさておき、今後の中朝関係を占うとすれば、まず“金王朝”の家系図を読み取る必要がある。


金日成以来、ファミリーには多くの血が入り混じっていて、複雑な人間関係は小説よりも奇である。
“近親憎悪”という観点から、作家・猪瀬知事に書いてほしいものだが、冗談はさておき、現実を直視すると、粛清された張成沢は、日本海側にある羅津港に続いて清津港も中国に開放した時の責任者である。
中国はこの港を租借することによって、日本海から上海までの海上ルートを確立しようと狙っていた。つまり、対馬海峡を支配し、日本海ににらみを利かせるという戦略である。
2012年9月11日の東亜日報は、
羅津港から南に約100キロメートル離れた清津港も開放され、「借港出海(港を借りて海に出て行く)」という中国の150年間の願いが叶うかどうかに関心が集まっている。…中国吉林省図們市の延辺海華グループは1日、平壌北朝鮮港湾総会社と清津港の使用に関する契約を結び、「清津港海運港湾合作経営会社」を共同設立した。…中国側が清津港の埠頭の使用権を確保するという話は2010年に流れ、このため図們と清津をつなぐ鉄道約140キロメートルの改・補修作業も進行中だという≫と報じた。
その清津港の南西約130キロに「金策」という、金日成によって“偉大な”彼の名前に改名された港町、旧城津港がある。


張成沢粛清によって、中国の“野望”は見直さねばならなくなるのではないか?


中国共産党の“隠し玉”であり、張成沢が担いだ金正男マカオで暮らしているが、これで北からの送金が途絶えるだろうから、中国にとってはお荷物になるだろう。案外送還されるかもしれない…


ところでその中国共産党だが、北が親中派のナンバー2を処刑したことにかなり動揺しているらしい。
26日に予定されていた毛沢東生誕120周年記念行事が突然中止になり、毛沢東をたたえた≪赤い太陽…≫ではなく「祖国〜」という歌に変更されたらしいが、これは10月の習主席の父親の式典で歌われたものだ、と共産党左派が怒っているらしい。

さらに中国共産党も、北朝鮮並みに周永康を殺す気か?と注目されているらしく、ウォッチャーに聞くと、あり得るがその場合には公表しないだろうという。
下手すると軍事クーデターが起きかねないからだそうだが、この粛清事件以降、中南海はクーデター防止に一生懸命だというから、興味深い。


しかし、人民には習政権下での外交成果を示さねばならず、前駐日大使だった王毅外相が「成果」を発表したが人民は全く信じてはいない。むしろ今の首脳部には「カルシュームが足りないらしい!」と揶揄しているという。

≪中国外相成果発表? 米国の中国牽制策が隣接しているところが産経らしい!≫



おまけにハルピンはもとより、雲南省一帯でも悪天候と大雪に見舞われれているようで、弱り目に祟り目、天からも見放されつつある!というのがウォッチャーの感想。

そこで届いた本のPR
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≪自らの目で見て取材をする宮崎正弘氏の最新刊。氏は3年以内に…としているが、私にはどうも来年あたりがおかしいのじゃないか?と思われる。
安倍首相には、準備怠りなくしておいてほしいものだ…≫



防空識別圏…」などですっかり忘れられている感がある「憲法問題」だが、全ての根底には“これ”がある。日本政策研究センターが「改正反対論」を10本に絞って、徹底的に論破しているのが面白い。わずか63ページのブックレットで、¥500+税というのは少し高く感じる向きもあろうが、手軽に読めるので理論武装に適している。


このところ話題になっている「防空識別圏」や「領空」、それに「飛行情報区」などについては、「正論」2月号(1月上旬販売)と、「丸」3月号(1月下旬発売)に解説しておいたのでご参考まで。
案外中国国防部・外交部が買ってくれて、質問が来たりして……!

からたちの小径

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