昭和16年12月7日(現地)、在ワシントンの海軍武官補佐官だった寺井義守少佐は、本能的に「日曜には何かある」と危機を感じていたので、アパートから10分足らずの大使館に車を走らせた。
午前9時ころついてみると門は閉ざされ、門柱のそばの電信受けには、「至急」の罫線が入った電報が5,6通突っ込んだままになっていて、芝生の上には電報の束が投げ入れてあった。
呼び鈴を押しても大使館から反応はなかった。当直の電信官はクリスチャンだったからミサに行ったのである。
こうして対米通告第14部(いわゆる最後通牒)は1時間20分も遅れ、ルーズベルトの罠にはまってしまったのであった。
寺井は私によく言った。
≪文と武は、国家の進路を支える重要な「両輪」であって、互いに理解しあいその足らざるを相補い合わせねばならぬ。
にもかかわらずあの時、あのような国家的重大事を、出先の一文民に「危機管理に対する動物的嗅覚」を求めることは土台無理な話であった。軍においてさえも陸軍と海軍は犬猿の仲であり、決してよく補い合っていたとは言えなかったように、文と武が一枚岩になることは極めて難しい。
それは片やペン、片や剣を持って育ってきた両者の環境が決定的に違うからである。だからこそ両者は密接に補い合わねばならないのだ≫
いささか俗っぽいが、商人は「金のにおい」、外交官は「酒のにおい」、政治家は「女のにおい」には敏感だと思っている私は、現役時代には、寺井のこの言葉をかみしめて、“軍人”は「火薬のにおい」に敏感でなければならぬと、「任務第一、修養第一、健康第一」を唱え率先して奉公してきたつもりである。
ところが昨日夜、たまたまNHKニュースを聞いて愕然とした。
≪政府は、今月11日に沖縄県の尖閣諸島を国有化しました≫と、何か我が国が悪かったかのような切り出しでいうのはこの会社の常だから別に何ともないが、問題はその次の玄葉外務大臣の行為である。
ウラジオストクのAPEC首脳会議の夕食会の場で、玄葉外務大臣は「自分は日中関係は非常に大事だという考えで対応してきており、そのことだけはくれぐれも誤解のないように理解してほしい」と楊外相に述べ、尖閣諸島の国有化については、
≪「自分や野中広務元官房長官のように日中関係のことを真剣に考えている人はこの方法しかないと考えている」と、中国との関係が深い政治家の名前を挙げたうえで、「日本政府による島の購入が、東京都の石原知事による購入を阻む唯一の方法だ」≫と述べたというのである。
彼のような経験不足の“若造”には、国際関係の裏が見えないのは仕方がないが、世にいう「宥和外交」そのものであり、想像通り楊外相は、「いかなる形であれ、中国の領土主権を害する行為を中国政府は受け入れられない。中国は断固たる措置を取る。日本政府によるこのような行為は、一部の日本国民、特に右翼の関心に応えるために行っているものだ」などと繰り返し主張した≫という。
翌日、野田総理が胡錦涛主席と立ち話をしたが、胡錦涛主席も「島の購入は、いかなる形であれ違法かつ無効であり、われわれは強く反対する。野田総理大臣には、大局的な観点から誤った決断をされないようにしていただきたい」と述べたが、野田総理は「尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土であり、われわれはこれを有効に支配している」と述べたというが、当然である。
その時の胡錦濤主席の“微妙な表情”を、伏し目がちの野田総理は見ていなかったから気づかなかったろうが、おそらく胡氏は複雑な心境だったことだろう。
多分、軍の独走を警戒している彼は、10月以降も軍の実権を握っておこうと再考したに違いない。
それは習の方が胡の不在間を狙って、軍の掌握に走りまわっていたからで、2週間の雲隠れの原因だったのではないか?と思われる。
つまり、軍の一部と習の独走に気が付いたのだろう。
≪APEC会場で、情報に耳を傾ける胡主席=産経から≫
ところがわが総理は“官製の”反日デモが起きると、「国有化するということを、再三、いろいろなルートを通じて中国側に説明してきた。一定の摩擦は起こるだろうとは考えていたが、想定を超えている」と述べたらしい。
またまたこの政権は「想定外」だと逃げようとしている。己の能力不足を棚上げして…
この玄葉、野田両大臣の対応が、中国側を勇気づけたに違いない。今朝の情報では、東海艦隊が「出帥準備」に入ったという。
尖閣周辺はにわかにきな臭くなってくるだろうが、これも野田総理にとっては「想定外」なのだろうか?
及び腰外交の付けを一挙に払わねばならない時が近づいてきた。
ここに何度も書いてきたが、次期政権を取る習近平は、中学卒業後下放され、数年間の空白の後に大学を出たという経歴の持ち主である。
このことあるを予測した私は過去10年近く、日中安保対話を通じて、中国の研究者らを“説得”してきたのはこの点にあった。
もちろん文官ばかりではなく、軍人にもこの手の「失われた10年」の被害者がいて、知識がないばかりに「強硬意見」を連発して強がるタイプである。この手のタイプの者が実権を握った時、情勢判断を誤って戦争が起きる、と警告してきた。
驚いたことに、10月以降は、政治家、軍人ともに「失われた10年」の体験者が席に就いた。時代の流れとはいえ、日中双方にとっては好ましくない状況が出現するのである。
≪軍の実権を握ったか?=産経から≫
「暴かれた中国の極秘戦略」の著者、袁紅冰氏は、
≪習近平、愈正声といった「太子党」出身者は、名門のお坊ちゃまたちで、贅沢や遊びは負けないが、国政を動かし天下を統治する才能を持たず、彼らに国政を任せるなど、八百屋で魚を求めるがごときないものねだりであり、台なしにしてしまうのが落ちであろう。
現在の共産党は、無知蒙昧な烏合の衆による魂のない暴政である。こうした状況の元で、ごますりこびへつらいの技と高官への身の程知らずの高望みの慢心をめぐらして、誰もが権力闘争の陰謀の策を弄することばかり考え、大権を争っている。それ故、政策指令の上意下達が滞り、中央の弱体化により下部組織の統制が効かなくなり、権力抗争はとどまるところを知らず熾烈さを加えている≫
いま習近平が考えていることは、同世代の軍人(それも出世と昇任を望む)の、軍事的見積もりを度外視した「進言」を真に受け、“自国領土”である尖閣を奪取しない限り、10月以降の政権維持は困難だ、弱虫とみられる、と認識したに違いない。大拡張した海軍戦力を使わねば、それこそ≪廃頭≫といわれかねないからである。
今、東海艦隊には、数百種の武器を集積しつつあり、南海艦隊と瀋陽軍区を動員して、「中国は戦うことを決心した」と、党内にアピールし始めたという。これを「茶番」というのだが、本人はこんなことにも気づいていないようだ。
≪中国の新鋭フリゲート艦「煙台」=産経から≫
そして先日国連に提出した≪自国領を示す海図≫を多量に配布し、自分の行動が正しいこともアピールしているという。中途半端な“中華思想”には困ったものだが、もちろん、台湾危機の時に使った≪ミサイル発射の脅迫≫も準備しているだろう。日本人は臆病だと勘違いして。
要するに、あまりに強がりばかり言って育ってきたせいで、自縄自縛になって、メンツが立たなくなったという状況にあると推察される。
その昔、トウ小平は「ヴェトナムに懲罰を与える」と意気込んで侵攻したが、戦後のどさくさにもかかわらず、ヴェトナムは徹底抗戦して中国軍を追い払い、60000人もの被害を与えた。
おそらく習近平はこんな過去の敗戦の戦訓にも学んでいないだろう。
ところで彼の一番の弱点は何か?
それは13億もの人民に情報を知らせていないという点である。
13億もの人民の中には「せっかく稼いだ資産がふいになる」とか、「商売が上がったりになる」とか、「一人っ子の子供を軍隊に取られている」とか、“平和”を望む人民が多いから、身勝手な戦争を起こそうとしていることを悟られるとまずい、ということだろう。だから人民には≪極秘≫にしていると思われる。
たとえは悪いが「真珠湾攻撃」で、人民と世界をあっと言わせたいのである。
そこで自由陣営がとるべき手段は、彼の個人的野望に振り回されないように、「中国人民に情報を広く知らせること」である。
お宅のトップは、好戦的で、戦争をしたがっている!と。
NHKも国際放送を使って、どんどんこれを流すとともに、自衛隊も【やむを得ず】臨戦態勢を取りつつあることを宣伝してほしい。
国営放送、韓流だけじゃなくそのくらいは国に貢献してもよかろう。
その意味では、けさの産経トップは、わが方も黙ってはいないのだ、ということを中国人民に知らせる意味で良い報道だったと思う。
≪航空自衛隊の空中警戒管制機(AWACS)=写真(共同)。沖縄県・尖閣諸島での中国フリゲート艦の警戒に当たった:産経≫
同時に制空権と制海権を保持している自衛隊は、緊急事態に備えて準備を怠ることなく、粛々と待ち受けしてほしい。
昔制服を着ていた森本防衛相も、日米安保が有効に機能するように調整するとともに、防衛出動発令を躊躇しないよう、総理に進言してほしいと思う。
もっとも、この紛争?で米国が【見て見ぬふり】をすれば、世界中で反米闘争に火がつくだろうから、忙しい米軍には気の毒だが、万一の際にはしっかり日米共同訓練の実をあげてほしいと思う。
大統領選挙にも大きく響くだろうが、これをうまく取り仕切り、2012年危機を乗り越えた方が当選する、と激励しておく。
ところで問題は我が国の方である。
ホームルームの級長選挙にうつつを抜かしている「白波5人衆」や、しりに火がついてそわそわしている元ゲバ学生たちは別として、野田総理自身が「防衛出動待機」や「防衛出動」を適切に発動できるかどうかなのだが、それさえしてくれれば、60年間、ただひたすらそれに備えて訓練してきた自衛隊各部隊は、弦を離れた矢のごとく、戦場に出動するだろう。
F4の未改修機、できれば305飛行隊長時代の愛機336号機が、今でも可動するのなら「体験搭乗」でいいから参加して見たいのだが…
後輩たちには、「皇国の興廃この一戦にあり」を思い出して、厳然たる対処をしてほしいと思う。
暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…?
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