軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

現代の魔女狩りにしてはいけない

中世から近代にかけての欧米でみられた魔女狩り現象は、現代では「心理学的な観点から集団ヒステリーの産物」とみなされているが、今でもこれに類する行為が行われることがある。
STAP細胞を発見したとして大々的にデビューした、理化学研究所の小保方氏は、論文のねつ造疑惑を指摘され、STAP細胞そのものの存在まで否定的にとらえられる結果を招いた。

≪記者会見に臨む小保方氏=産経から≫


彼女は昨日、論文“捏造”指摘に対する不服申し立ての記者会見をしたが、2時間半に及ぶ会見場は、私にはまるで現代の“魔女狩り”的雰囲気を感じた。

今朝の報道も賛否入り混じっていたが、何人かの専門家は「彼女の弁明は科学的手法に欠けていた」と指摘している。
そこで私にはフト「科学的」とはなんだろうという疑問が浮かんだ。


辞書には「科学」とは「体系化された知識や経験の総称」であり、狭義には「科学的方法に基づく学術的な知識、学問」とされる。
「科学的手法」とは「ある事物や現象を説明するに当たり、考えられる様々な仮説から、再現性を持つ実験や観測を行い、その結果に矛盾しない説明を選び出すプロセスの事である。科学的説明には、用いた実験方法や測定方法が公開され、第3者に検証されることが重要である。又、実験や測定には、ある程度の制度があることが望ましい」とされる。
一般的に「現代科学」は、西欧の思想が根底にあり、分析すること、つまり、構成要素を極限まで追求することで、自然現象を理解しようとするのが基本的な態度であるといわれている。
平成4年1月4日の日経新聞は「21世紀への道求め=不思議に挑む」という特集を組んだが、その中で鳥井解説委員は「人間の遺伝子を全部解読する事で人間が理解できたと考えるようなものである。分析的な科学が人間にとって大きな武器であることは今後も確かである。しかし、それでは不十分なのかもしれない。既に分析的な科学の限界を指摘する声は多い」と解説したが同感である。


例えば蔵田伸雄・北海道大教授(科学技術倫理)は、「多くの研究者は、実験で自分の立てた仮説に都合の悪い結果が出てしまった場合、そのデータを捨て、仮説を正当に証明できるデータが得られるのを待つ。だが、小保方晴子氏はSTAP論文のDNA解析画像でそれをせず、切り張りで見栄えを良くするという安易な道を選んだ。

 これを不正な改竄とした理研に対し、同氏が発表した不服申立書などからは、「どこが悪いのか」という思いがありありとうかがえた。科学者としての基礎的倫理観が身に付いていないと断じざるを得ない。会見では不注意を謝罪したが、不正と認定されるような論文を発表すること自体、知的誠実さに欠けている。

 科学者に必要な研究倫理は通常、大学の教官から「実験ノートを作れ」「リポートや論文はコピペ(丸写し)するな」などと口やかましく言われて学ぶ。

 一方、小保方氏は早稲田大大学院時代の博士論文の冒頭約20ページが、米国の研究機関のホームページの文章のコピペと指摘されている。このような科学者としての資質に欠けるとしか思えない不正が通用してしまい、その倫理観でここまで来てしまったのだろう。

 人間としても科学者としても未熟な人が急に理研の研究ユニットリーダーとなり、成果を焦らされた結果だ。その意味では、小保方氏は犠牲者かもしれない。理研には「お前はまだその器じゃない。もっと学ぶべきことがある」と指導し、育てようとする上司はいなかったのか」と語っている。(産経)

≪研究に関与した方々の一覧表=産経から≫


小保方氏が発表した時、iPS細胞を開発した山中伸弥京都大教授は「重要な研究成果が日本人研究者によって発信されたことを誇りに思う。今後、人間の細胞からも同様の手法で多能性幹細胞が作られることを期待している。マウスの血液細胞に強いストレスを加えると多能性が誘導されることを示した興味深い研究であり、細胞の初期化を理解する上で重要な成果だ。医学応用の観点からは、iPS細胞のような細胞の新しい樹立法ともとらえることができ、人間でも同様の方法で体細胞において多能性が誘導された場合、従来の方法とさまざまな観点から比較検討する必要がある」と彼女を激励した。

一方、“捏造”問題が“発覚”した後、論文共著者の若山照彦山梨大教授は「当時の研究室の主宰者として、データの正当性、正確性を見抜けなかったことに自責の念を覚えている。調査報告書の内容を真摯に受け止め、今後このようなことが起こらないよう徹底したデータの正当性、正確性の管理に努める」と反省したが、小保方論文が公表された時、報道各社は「酸の刺激だけで万能細胞作製 新型「STAP」理研が成功」と大々的に報じ、
≪弱酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、あらゆる細胞に分化できる万能細胞を作製することに理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)のチームがマウスで成功した。人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは異なる新型の万能細胞で、再生医療の研究に役立つと期待される。29日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した…≫
≪体の細胞を万能細胞に作り替えるには、初期化という作業で受精卵の状態に逆戻りさせる必要がある。iPS細胞は遺伝子を使って初期化するが、今回の方法は酸性の溶液に浸すだけで簡単なのが特徴。開発した小保方晴子研究ユニットリーダーらは、全く新しい万能細胞として「刺激惹起性多能性獲得(STAP=スタップ)細胞」と命名した。

 研究チームは生後1週間以内のマウスの脾臓から、血液細胞の一種であるリンパ球を採取し、水素イオン指数(pH)5・7の希塩酸溶液に約30分浸して刺激。これを培養すると数日で初期化が始まり、STAP細胞に変わった。

 作製したSTAP細胞は、神経や筋肉などの細胞に分化する能力があることを確認。実際に別のマウスの受精卵に注入し、仮親に移植して子を生ませると、STAP細胞は全身に広がり、あらゆる細胞に変わることができる万能性を持っていた≫


この報道に、世界は興奮したし、とりわけ身体に不具合を抱える患者とその家族らは希望を抱いた。

≪新型の万能細胞「STAP細胞」の作製に成功した理化学研究所小保方晴子研究ユニットリーダー=神戸市(伊藤壽一郎撮影)産経≫


しかし昨日の記者会見場は、まるでピラニアかハイエナの集団が、“獲物”に群がるかのような雰囲気に包まれていた。彼らの質問の方こそ「科学的論理性」が感じられず、今後の記事のネタ探しに汲々としていたように感じた。
つまり、彼女を抱えている「理研」と彼女の今後の闘争に期待しているかのように・・・である。
彼女の“弁明”が、理研に関わる質問に対しては、奥歯に物が挟まったようなものになったのは、組織の一員としての彼女なりの「自覚と責務」があったからであり、あの場で個人的な名前を出さないように心掛け、これ以上の迷惑が組織に及ばぬように意識したものだ、と私は判断した。
元広報室長だった私は、これよりもひどい「為にしてやろう」とするひっかけ質問を体験していたからである。今回はむしろ彼女の受け答えする態度は正直であって、裏で“関係者”がドキドキしていたのが真相ではあるまいか?


話は飛ぶが、田母神空幕長更迭問題で彼が国会に呼ばれたとき、時の政府は、自分らのボロが露見しないよう、民主党と手を打って、委員長に民主党議員を指名し、田母神氏には質問にだけ回答させるよう配慮したことに共通していた。この時も多くの関係者は、彼の投稿論文を読んではいなかった…


今回の記者会見を主催したのは小保方氏の方だったのだから、すべてを暴露しても構わなかったのだが、それを控えたところを私は評価している。
その意味では、学術論文がそうであったように、このような“人民裁判”的場での対応も彼女は素人だったといえる。
一癖ある“強者”だったら、会場を占めた二癖も三癖もある記者連中の餌食になってはいなかったに違いない。彼らは「継続したネタ」が欲しいのであって、それは今後予測される「彼女と理研泥仕合」であろう。
STAP細胞が実際に存在するのか否か、熱望している患者がいるということよりも、ネタが途切れない様、日銭が稼げればそれでいいのだ。


質問時間が限られているのに、他人の質問を聞いていない者が目立ち、同じ質問を繰り返したり、既に彼女が謝罪していることを聞いてみたりと、お行儀も悪かった。
中には医療ジャーナリストのような専門的に質問していた者もいたが、ほとんどが「防空識別圏」も「領空」も区別がつかないような未熟な質問が散発して、いたずらに彼女の心労を長引かせただけだった。


今後、この問題に関する根も葉もない事象や、無責任なスキャンダラスな記事などが継続するような気がしてならないが、人類に貢献できるSTAP細胞の実現化を図ることに努力を集中すべきじゃないのか?

案外、「瓢箪から駒」になるかもわからないのだ。一部の科学者が「科学万能」を重視するのであれば、地震や台風を科学的にコントロールして見せてほしい。


その昔、“常識をひっくり返す新説”を「コペルニクス的転回」と呼んだ。繰り返すまでもないが、地動説を発見したコペルニクスは、当時の政治的宗教的迫害を恐れて、自説を発表したのは死の直前であった。
発表後も、地動説に賛同する天文学者は出なかったが、それは今回も共同研究者の中から、小保方リーダーを支持する者が出ないことに似ている。
それは彼女の理論が間違っていると確信しているからか、それとも“組織人”としての制約によるものか?
いや、単なる『損得勘定』からではないのか?

地動説に当時の天文学者らが賛同しなかったのは「明らかに迫害を恐れたため」であったし時の有力者の一人であったマルティン・ルターコペルニクスに対して「この馬鹿者は天地をひっくり返そうとしている」と非難して地動説を否定した。その結果、地動説は宗教的迫害の対象となって、科学の発展は阻害され続けた。地動説に賛同したジョルダーノ・ブルーノは火刑に処され、ガリレオ・ガリレイも迫害され宗教裁判で異端の判決を下された。


私がこの“事件”で不思議に思うのはただ一点、今年1月28日に小保方論文がネイチャー誌に掲載されたとき、彼女の論文は由緒ある立派な組織である「理研」の上司や役員たち、つまり組織として誰も彼女の論文に目を通さなかったのだろうか、というに尽きる。
組織としてこの論文を公表したのではなく、小保方リーダーが独断で会場をセットし、報道各社を集めてSTAP細胞の説明会を開いたのか?それではあまりにも無責任極まりないのじゃないか?という点である。

組織として全く目を通すことなく、彼女が独断で行ったのだとすれば、これは規則違反じゃないのだろうか?少なくとも国から多額の援助を受けている組織としては不適切すぎはしないか?

≪理事長には、今回の騒動よりも、最初に公表した時点での組織としての対応を解説してほしい=産経から≫


次に彼女の指導者は、研究間、彼女にどのような指導をしていたのだろうか?論文作成に≪筆を入れる≫ような指導は行わなかったのだろうか?

二人の教授と一人の指導者は、すべて彼女に騙された“被害者”なのだろうか?
だとすれば、弱冠30歳の女性研究者に手玉に取られたことになるから、あまりにも頼りなく、現代科学者の一般的常識を疑わざるを得ない。
小保方氏は、大の男たちを騙す手練手管に長けた女性に見えなかったが…


STAP細胞は存在すると自信を持っている彼女にその場を与えるような篤志家はいないものか。当れば巨万の富が得られるだろうに…
どこかの野党党首には「熊手代」を提供しても、人類の未来に貢献できる可能性がある『賭け』にはお金持ちは及び腰になるものらしい。

なんだか学識経験者の行動にしては、30歳の“未熟な”研究者を、よってたかって“いじめている”構図にしか見えないのが残念だが、そのうちに月刊誌か週刊誌が、真実を暴いてくれるだろう。



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ジャパニズム18号
反日国家・韓国特集号。私も「ソチ五輪にみた日本人の精神」という短文を書き、彼ら彼女らと同世代の特攻隊員の心情を考察してみた。
また、沖縄時代に書いた短編小説「ストレンジャー」は、あびゅうきょ氏の手で漫画化され連載されているが、神秘的な沖縄を舞台にしたUFOとの遭遇事件がうまく表現されている。“科学的根拠”のない単なる私の空想小説だが、実際に目撃した方からお手紙をいただいている。ご参考まで≫

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