軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

モラル・ハザード

モラル・ハザード」とは、元来は保険用語だが、外来語を“うまく”使いこなすわが国では「責任感が欠けること、倫理観の欠如」という意味に用いられている。
つまり、「倫理観や道徳的節度がなくなり、社会的な責任を果たさないこと(「バレなければよい」という考えが醸成されるなど)」に用いられる、わが国独特のものだそうだから、本家の外国人には伝わらないだろうが、日本人には伝わるから大丈夫だろう。


わが国では「三代目が身上を潰す」とよく言われるが、それは先代の苦労を知らないからだ、ということからきている。
最近は、世界中で先人が築き上げてきた伝統と信用をいとも簡単にぶっ壊す後継者が後を絶たないが、これも現代人類が、≪酒池肉林≫におぼれて、人間性を失いつつある証拠かもしれない。

とりわけ今大きな話題は、第二次世界大戦で我が国と同じく敗戦国になったドイツは、その勤勉性を発揮して超優等生国に成長したが、今回のVW社の大失態は、かのヒットラーでさえも怒り狂うほどの失態じゃないか?
周知のようにWW1で敗戦国になったドイツは、ヒトラーの指示で「国民車(フォルクスワーゲン)」を製造して、WW2後もドイツ経済を引っぱった。
その功労者が、なぜこんな幼児でも判断できる悪事に走ったのか?
報道によれば、株価の時価総額の1/3が紙切れになったという。
株は「投機」だと思っている私にはどうでもいいが、現実に工場で汗を流している社員たちの生活はこれからどうなるのか?
実際は排気ガス規制値に達していないにもかかわらず、適合しているかのように見せるチップを組み込み、試験走行時だけ適合しているかのように見せたというのだから悪質極まりない。同社のヴィンターコーン会長は謝罪して辞任したが、それだけで済むのか?

対象となるディーゼル車は世界中に1000万台以上走っていて、米国の追徴金は2兆円を超すというから、小原庄助さんのドイツ版とでもいうべきか?

この、EUの優等生・ドイツの失態は、VW問題だけではなく、シリア難民問題で軽軽な判断を下したメルケル首相の責任が大きいような気がするのだが、どう始末をつけるのだろう?



他方我が国の会社トップも、どこかがゆるんでいる。創業者時代の苦労を全く忘れた結果だろう。しかもVW同様、平気でうそをつくのだから特亜諸国の政府のようだ。

ブランドもの!という信用だけで高級マンションと呼ばれてきた物が、実は下請け、孫請け、ひ孫請け…と責任が下方にドンドン分散されていっていたとは知らなかった。


バブル時代、建築工学を学んでいた息子は、日雇い人夫として建築工事現場で働いた経験を持つが、それはバイト料がよかったことと、現場を知らないと設計図は書けない、という先輩に誘われて現場体験をしたのだという。
しかしそれ以上の体験をしたようで、日本人の現場監督は、現場で働く主力の外国人労働者たちの算数などの能力も知らず、もとより言葉も通じないから、恐ろしくて背筋が凝ったという。
日本人は几帳面に指示された通りに「採石」などをコンクリートの枠組み内に投入するが、外人はわからないから、勝手に投入する。
つまり、柱の基礎部分には、大きい採石と粗めのコンクリートを。次第に上部になるにつれて、細かい採石を投入しセメントも変化するのだそうだが、彼らは一本の柱に礎石用の採石を入れてしまい、次の柱には上部用の細かい採石を入れてしまうから、柱ごとの強度が異なるというのである。
現場監督は言葉が通じないから、見て見ぬふりで「マ、シャーねーな〜!」とい言いつつも、見よう見まねで鉄筋を溶接させたりしたらしく、あのビルは20年もすると傾くよ!といったものだ。


それがどうだ、今回は“天下の”三井住友グループが、とてつもないことをしでかしてしまった。「建て替えればいいだろう!」で済む問題じゃあるまい。

たった一人?の現場責任者の仕業だそうだが、彼をベテラン?だとみなして、まかせっきりにしていた上層部の責任は免れまい。高くついたものだ!

何よりも「信用して購入した」入居者にとっては、はらわたが煮えたぎるような怒りを覚えているのじゃないか?

典型的な日本流[モラル・ハザード]の例だろう。
東北の復興工事現場関係は大丈夫かな〜と心配になる。


ところで話は変わるが、シナが公表した経済指数もVW並じゃないか?
今朝の産経によると、
中国国家統計局の盛来運報道官は19日の記者会見で「世界経済の変調で貿易が伸び悩んだほか、国内の構造改革がなお進行中なことなどが理由だ」と、成長鈍化の理由を説明した。ただ、同日付の中国紙、第一財経日報によると、盛氏は統計発表の前には「仮に今年の成長率が6・5%に終わっても政府目標の『7・0%前後』は達成したといえる」と弁明していた≫
とあり、「中国GDP低水準 日系企業の中国事業縮小、関連倒産に拍車 日本への影響じわり」として、
≪中国の7〜9月期GDP成長率が7%を割り、日本企業の対中国輸出の縮小、チャイナリスク関連倒産の急増などが懸念される。19日の金融市場への影響は限定的だったが、中国失速による輸出、生産の停滞が長引けば好調な個人消費や設備投資に悪影響を及ぼし、国内景気の回復が遅れる恐れもある。

GDPが公表された19日午前、外国為替市場では安全資産とされる円が一時的に売られるなど、世界の金融市場ではリスクオフ(回避)ムードがそれほど広がらなかった。

「GDPが市場予想(6・8%)を上回ったため、安堵感が広がった」(みずほ証券鈴木健吾氏)とみられる。菅義偉官房長官も19日の記者会見で「市場は織り込み済みだ」との見方を示した。しかし、各種統計をみると中国の9月の輸入は前年同月比20・4%も減少。日本からの輸入はマイナス幅が19・3%と10カ月連続の減少を記録した≫
という。
他方、
≪『不況』『突然の解雇』『工場閉鎖』『経営陣の行方不明』。こうした経済的要因による大がかりなストライキは各地で頻発しており、日本企業のメッカといわれた遼寧省大連では、およそ2000社の日系企業のうち、すでに200社は去った。

広州でもシチズン時計が40年の歴史の終止符をうって工場を閉鎖、全員を解雇したが、ちゃんと補償金を支払い、従業員らの暴力沙汰には発展していない。パナソニックも殆どの工場を閉めた。

北京の日本人学校は生徒数が600から400に激減、いまもオフィスを畳んで、かえり自宅の日本人スタッフが目立つが、中小零細企業のなかには、夜逃げも増えている。中国の不況は想像以上に深刻である(産経)≫
とある。だから言わんこっちゃない!
資本主義国と共産主義国とを同一視した結果だろう。
ここにも大陸にのめりこんでいった、企業上層部の影がちらついている!


2008年だったか、シナの大学の経済問題研究所が来日して対話した時のこと。
丁度温家宝首相が共産党大会で「保8」と大号令をかけた直後であったので、私は引率してきた所長(女性)に「この大号令は、GDPの伸び率が8%を切ると、就職難になる新卒学生に動揺が走り、下手すると暴動が起きるからそれを阻止しようと温首相は共産党地方部に厳命したのでは?」と質問した。

その時の所長の慌て振り(私にはそう見えた)は面白かった。私は前にいた若い女性研究員(といっても博士だそうだが)に尋ねたのだが、その脇の所長が遮ったのである。
懸命に弁解説明する所長に対して、その他の若い研究員たちの態度も、薄ら笑いを浮かべるなど、そっけなかったから、私はGDPの伸びが確実に低下していることを確信した。


経済が最盛期だと豪語されていた五輪以前でも、上海の各地に空きビルが建っていて、ガイドは「ビルは建ったが、社長倒れた!」と揶揄していたし、「シナではGDPの成長率が8%以下に落ちると、失業がさらに拡大して社会的不安が広がり、体制安定の基盤が根本から脅かされかねないので、政府は絶対に八%以下だとは公表しませんよ」と若いガイドはこともなげに言ったものだ。


中国共産党政府にはそんな「切実な不安と恐怖感」があるから温家宝首相は「8%を切るな!」と厳命したのだが、そんな「保八」という政策目標を実現できない地方幹部は更迭されるから、「いとも簡単に、ぎりぎりの線で達成したと報告する。これが共産党政権の得意技です」とも言った。


この年は確か8・1%の達成だったのじゃなかったか?

その後ドンドン低下して、今や「保7?」のようだが、わが国の経済専門家は、「GDPが市場予想(6・8%)を上回ったため、安堵感が広がった」という。
経済的観点だけ見ればそうだろうが、共産党一党独裁支配体制の存続は、この「成長率」という奇妙な魔物に支配されているのであり、しかもその数字は全く信用できないという点で、今や極めて微妙な時期に来ているとみるべきだろう。


其の昔、10%以上の成長率を維持していて、飛ぶ鳥を落とすほどの経済繁栄の最中であった時さえも、年間数万件もの暴動が起きていたことを経済専門家は忘れているらしい。
来年、マイナス成長になるという意見もある。そうなればいったい何が起きるか?その点を経済活動と含めて防衛についても考えておいてほしいものだ。


マ、“一老兵”にとってはどうでもいいことだが…


ところで書斎整理で出てきた面白い新聞記事があったのでご紹介しておこう。



≪平成12年の「沖縄タイムズ」の記事である。翁長市長とは当時の那覇市長で、現在の沖縄県知事である。自衛隊の「フェスタ」とは、自衛隊那覇基地航空祭=フェスティバルのこと。当時は自民党の地元の大物?で、自衛隊票に頼っていたと思われるが、今や変身!これも“モラル・ハザード”の範疇内というべきか?
右顧左眄とか、蝙蝠だとか、ニンジンに飛びつくとか、ブレルとか、権力に阿る人物を日本ではそう言った・・・。顔写真がないのが残念≫

次は昨日とどいた「航空情報」12月号
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≪今月は「アメリカ最新軍事航空」が特集だが、「日本における軍用機、空母関連の米軍基地」が目を引く。もちろん安倍首相が訪問した「レーガン」も歴代空母の後に解説されている。これほど密接な日米関係を見せつけられると、シナもそうだが、軍事技術移転を拒否された韓国は頭にきていることだろう…
それは軍人間の相互理解の程度が違うということだ。つまり信用度が違うということ。もっとも、オバマさんはこんな高度で強力な軍事力の利用法を知らないようだから、同盟国としてはいささか情けないが。リベラルの弁護士って頼りにならないな〜≫

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