軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

”敵の弾頭”よりも”ブースター”が怖い!?

地上イージス停止問題で、河野防衛大臣が謝罪した。

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秋田と山口に配備を予定したものだったが、現地説明時点からイチャモンが付き、難航していたものだ。今回、河野大臣は「コストと期間を考えると合理的な判断とは言えない」として、改めて米国側との協議を決意したのだというが、事実上の撤回だろう。
半島情勢がきな臭くなっている時期だけに、”敵”に足元を見られる恐れがある。

 

その昔、私が築城基地の防衛幕僚だったころ、ソ連の高高度戦略爆撃機の脅威から防衛する為に、それまでの足の短い地対空誘導弾エイジャックスと交代して、ナイキ・ハーキュリーズ(ナイキJ)を全国に配備していた。
いわば「高射砲に毛の生えたような」初期のエイジャックスのブースターは単発だったが、ナイキJはより推進力を強めるために4本束ねたものだった。

勿論発射後には、ある地点でブースターは切り離されるから「重力の法則」に従って地上に落下する。そのおおよその落下範囲は、コンターとして地図にひかれていて極力被害が出ないように配慮されてはいたが、敵の位置や風向きなどによっては、必ずしも田んぼに落下するとは限らない。運が悪けりゃ落下したブースターが屋根瓦を破損するかもしれない。

 

ある時、近在の集落の皆さんがナイキ基地見学に来て、代表者が「班長さん、聞いたところによると、ブースタとかいうドンガラが落ちてくるそうじゃないですか。被害が出たらどうしてくれるのですか?」と私に聞いた。
そこで私はこう答えた。

「会長さん、心配なことはよくわかります。しかしこのミサイルが発射されるときは、ソ連との戦争時ですよ。落ちてくる「ソ連の爆弾」よりも「ドンガラ」の方が怖いとおっしゃるのですか。ドンガラが当たって万一屋根瓦が壊れたら、防衛庁は必ず丁寧に補修するでしょう」と答えると、会長は「そりゃドンガラの方がいいに決まっている」と言ったので皆が笑って話し合いは終わったことがあった。

もっとも尚武の地・福岡での話だから、秋田県山口県民には通用しないのかもしれないが……。それにしても日本人は、「すぐ怖い~~」と口にする。特に男がそうだ。視野も肝っ玉も小さくなったものだ。

イージスアショアが性能を発揮するのはどんな時なのか?を一顧だにせず、ただ被害者意識だけが先行する。敵を利する行為…などという言葉もなくなった。これも専守防衛」という政治用語の成果?なのかもしれない。

もっとも「補償金目当て」なら話は別だが…

敵が攻撃してくれば迎え撃つのは当然の行為だが、それもいけない、というのであれば、産経抄にあったように竹槍で戦うか、はなからヒトラーに強制収容されたユダヤ人のような悲劇を甘んじて受けるというのか?

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文句を言う県民も、防衛省関係者も、なんとなく「わかっていない」者同士が言い争っているようなもので、そのたびに血税が湯水のように流れていく…

この秋には、半島始め大陸内で大きな災害が起きて(すでに起きているが)食糧危機に陥ることが予測されているというのに、なんとものどかな平和を愛する国民ばかりである。

前回、「国民の民度は高い」という麻生大臣の言葉に賛成したが、いや~それほどでもないと愕然とする。やはり人類、いや今の日本人は「リセット」される必要があるということなのだろうか?