軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

「平和ボケ」ならぬ「ウデガエル状態」

  7月1日の香港「返還」25周年式典に参加するため、習主席が香港を訪問したという記事を見て、あれからもう25周年もなったのか!と同日付で「制服を脱いだ私」としては一種感無量であった。

 しかし、少なくとも沖縄の基地問題に関しては、全くと言っていいほど進展していない。

  それほど我が国は「平和ボケ」ならぬ「ウデガエル状態」なのだ。

 退官時に私は「普天間問題は解決しないだろう」と幕僚たちに予言した。そしてその通りになっている。それは自民党政府が、何が怖いのか「及び腰」で、真剣にこの周辺地域の安全保障政策に取り組んでこなかったからで、数次にわたる「国会議員らの沖縄視察」団のやる気のなさを知っていたからである。「視察」とは名目だけで、実際は沖縄“無料観光旅行”だった。視野の狭い連中が多かったから当然だといえたが。

 そして今や、ロシアのウクライナ侵攻によって、世界情勢は大きく変わり、NATOマドリッド会議でスウェーデンフィンランドの加盟議定書に署名した。

 これで今までは伝統的な軍事的中立国が対ロシアの加盟国となった。しかもNATOは「戦略概念」を改定し、ロシアを安全保障への「最大で直接の脅威」と位置付けたのである。世界は「米ソ冷戦時代」に戻ったかのような感がある。

プーチン氏にとっては想定外の誤算だったろう。

 さらに中国に対しても「野心と威圧的政策は、われわれの利益や安保、価値観に挑戦している」とする対抗姿勢を明確にした。さらにNATO会議には日本ばかりか、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが「パートナー国」ととして国際秩序維持で連携を深めるになった。つまり世界は二分化されたのである!

 何という様変わりだろうか?NATOは従来、中国を地政学的な脅威の枠外として扱ってきたにもかかわらず、である。

 まるで日独伊三国同盟を成立させた松岡洋右の時代を彷彿とする。

 

 ところが参院選挙関連で配られていた「左翼」の宣伝ビラには、驚いたことに時代錯誤の言葉が並んでいる。

 いわく「戦争させない。くらしに希望を」「消費税は5%に減税」「年金削減ストップ、学費半額、給食費ゼロ」「最低賃金1500円へ、大企業への課税を提案」

 ビラの裏には反戦平和」の証今こそ」「共産主義は自由がない?日本の未来ではありえない」「自衛隊「活用」は無責任国民の命にも9条にも責任を持つ」などと、全く時代遅れで“無責任な”見出しが躍っている。

 中にはプーチン共産主義者?全くの誤解です」などと、情勢の変化に相当焦っている雰囲気さえ伝わってくる。

 では現地、ウクライナで被害にあっている市民に直接説得してきたらどうだ?と言いたくなる。

わが子の棺に縋りつくナタ―リヤさん。(イルピン) 上下とも産経5月8日から

 尊敬する三島由紀夫は文化防衛論に「共産主義が嫌いなわけ」として、「美名を以て人間をたぶらかす(偽善)であり、共産主義は、自由な未来に向かって人間を唆す毒素」であると喝破していた。防大時代にこれを読んだ私も「共産主義者(コミンテルン信奉者)には“人間性”を全く感じなかった」から当然共鳴した。

 

 今までの政治は、彼らのような“シーラカンス”に脅迫されて、勇気のない政府関係者は「恐る恐る」仕事をしているかのようなそぶりをしてきた

 だから、普天間基地の移転問題さえも全く進展しない。四半世紀もである!

 当時、おバカな首相が左翼にそそのかされて普天間小学校の屋上に立って、上空を飛ぶ米軍機の騒音を取り上げ「普天間移設反対」を唱えるという、お粗末なことがあったが、それだけが原因じゃないのだ。

 つまり、戦後の日本国民のほとんどが極楽とんぼ」状態を通り越して、すでに「ウデガエル状態」だったのであり、やがて“絶命する寸前”なのである。

 絶滅する前に“何匹”かは生き残ってほしいものだが、宣伝ビラのような御託を並べていかにも「仕事をしている」と錯覚している政党があるようじゃ、期待できないかもしれない…

 少なくとも今回の参院選で、変化の兆しが見えることを期待したいものだ。