軍事評論家=佐藤守のブログ日記

軍事を語らずして日本を語る勿れ

食品衛生と危機管理

三笠フーズ」による汚染米不正転売騒動は、今の日本の危機管理意識を良く表している。中国から輸入されたメタミドホス汚染ギョーザ事件が発覚して、国民は危機意識に目覚め(それも主婦が大半だが)、自己防衛を意識し始めたが、国の機関はそうでもなかったし、未だに曖昧である。ギョーザ事件解明に対する首相の意欲は欠如していたし、関係機関も中国に対しては腰が引けていた。最も、高級官僚や、政治家、大臣が、町のスーパーで安い「冷凍ギョーザ」を買って食べる機会なんぞありえないのだから、身に迫る危険を感じなかったからだとしても不思議ではない。しかしそれでは安心して国民は彼らに命を預けられない!今度の「三笠フーズ大阪市北区)」事件がそれを浮き彫りにしているように思う。
 
 今朝の産経は一面トップで「給食や焼酎の原料」にも転用されていたとして「同社が販売した事故米の中国産もち米約700キロが、東京の給食大手『日清医療食品』から近畿2府4県の病院や高齢者福祉施設119箇所に納入され、多くが消費されていたことが11日、分かった。汚染の可能性がある米が食用に消費されたことが判明したのは始めて。一方、事故米が焼酎の原料に使われていたアサヒビールは同日、対象商品の販売を中止し、自主回収に乗り出した」と報じた。

 なぜかこの手のモラル欠如事件は近畿や九州地方で起きる!といった友人がいたが、今回もまさにそうで意味深長だが、“大阪商人”のモラル低下の原因は何だろう?何と無く「対馬事例」に共通するところがあるような気がするが、橋下知事には徹底的に調査して欲しいものである。

 産経はそれに並べて「7業者仲介米“洗浄”」と言うタイトルで、「三笠フーズから末端小売業者に至るまでに少なくとも7業者が仲介していた」ことを挙げ、「中には、ペーパー会社や伝票操作だけを行った業者も介在。複雑な流通システムを経ることで、事故米を正規米に転化させる“コメロンダリング(洗浄)”をしていたと見て、農林水産省などが調査を進めている」と書いたが、この手の“洗浄”手法は、北朝鮮暴力団が偽札や麻薬などから得た不正資金を香港などで“洗浄”する手口にそっくりである。
 北朝鮮は米国の「テロ指定国家」から“解放”されない限り、資金締め付けで身動きが取れなくなっているから、日本中で何らかの資金獲得工作をしているのではないか?
 一説では、北京五輪に「美女軍団」を送れなかったのは資金難からだとか、今回の60周年記念パレードに正規軍が出なかったのは、油不足だからとか「金欠の噂」が絶えないが、確かにそれほどこの国は苦しいのであろう。
 徒歩部隊だけが行進する様は、いかにも油を絶たれた「人力作戦」の象徴だが、美女軍団の方は海外に出るたびに「自由な空気」に目覚めた美女達が、北朝鮮の“実情”に不満を感じるのを防ぐためだともいうから必ずしも金だけが原因ではないらしいが。

 三笠フーズ汚染米転売先の福岡や佐賀の業者達は「事故米とは知らなかった」と弁明しているが、“確信犯”以外はきっと騙されたのであろう。

 
 産経抄子は1929年の「暗黒の木曜日」のニューヨーク株式市場大暴落時に、証券会社が数々の不正をしていたため、ルーズベルト大統領は後のケネディ大統領の父・ジョセフを証券取引委員会の委員長に任命した。彼自身もインサイダー取引で財を成した“前科者”だったからこの人事に反対が多かったのに対して、ルーズベルトが「狼を捕らえるために、オオカミを使う。彼なら取引のからくりを何でも知っている」と言い放ったことを例に挙げ、「・・・事故米混入の疑いが出て、焼酎、日本酒、せんべい、和菓子等、自社製品の撤去を余儀なくされた関係者の怒りは想像に余りある。▼巨額の利ざやを稼いでいた業者の強欲には勿論だが、不正を見抜けなかった農水省のずさんな検査にもあきれてしまう。最初に不正が見つかった三笠フーズ」への検査は、過去5年間で計96回にも及ぶ。といっても、抜き打ちではなく、事前通告だったから、偽装を手助けしたようなものだ。▼「オオカミ」になれ、とは言わない。もともと、農水省にとっても、事故米は、保管にも、焼却にもコストがかかるやっかいもの。業者が喜んで引き取っていくのには、何か理由があるはずだ。こんな想像力が働いていれば、被害はもっと小さくて済んだのではないか」と結んだが全く同感である。
 ついでに付け加えるとすれば、官業界の癒着はなかったのか?その裏に、29面で大々的に取り上げられている三井住友銀行の「不正融資100億円焦げ付き事件」のような「裏」はなかったのか?とか、危機管理上のポイントがいくつか浮かぶが、それは今回は省略するとしても、少なくとも「フーズ」という看板を掲げた会社に「危険な事故米」を譲渡したところが私には理解できない。
 誰だって「フーズ」という看板を掲げている以上、「三笠」は食品業だと思い込む。だからそこからコメを仕入れる業者は当然安全な「食品」だと思うのは自然の成り行きだろう。工業製品に限定された「事故米」を、そんな「食品の看板」を掲げた会社にまる投げ?していた農水省の責任も問われなければなるまい。
 つまり、産経抄子が指摘したように「業者が喜んで引き取っていく裏」を調べなかった怠慢である。電化製品の回収だって、正規には回収代を払って破棄を依頼するのに、無料で持っていく「回収業者」が絶えないということ自体いかがわしいと思うのが庶民の感覚である。尤も、今ではフィルム会社が化粧品を生産することもあり、看板だけで判断するのは困難な時代だが、庶民とは違って役所は業務の実態を掴んでいる筈である。少なくとも「食」は安全第一、そんなところへ「危険な事故米」を引き受けさせる役所の感覚が疑われる。
 幸い?体調を崩した私は、このところ酒も焼酎も遠慮して過ごしたから“被害はなかった?”が、せんべいだけは大いに食した!入院中も流動食だったから安心?だったが、今後は大いに注意する必要があろう。といっても具体的な手段は何もないから役所と業者を信用する以外にない。

 とまれ、悪徳業者は論外だとしても、政治家はじめ役人までもが緊張感を欠いているようだし、危機管理意識と国民に対する責任感も欠如しているとしか思えない。もう少し公僕たる責任感が充実してさえいれば、こんなズサンな事件は起きなかったであろう。
 事前通告検査で、うまく騙しおおせたから三笠フーズは「カサにかかって」利ざや稼ぎに奔走したのだろうが、その原点に“癒着”がなかったとすれば「監督官庁が完全に舐められて」いたとしか考えられない。のうのうとTVに出て「頭を下げた」社長は獄門・遠島・曝し首ものである!
 こんなモラル欠如の業者に一旦「舐められ」ると、彼らは嵩にかかって増殖し始めるから、何事もはじめが肝心、最初にガツンと目を覚まさせる必要があるし、それが役所の仕事でもあろう。
 対馬問題も東シナ海問題も今のうちに断乎排除して「既成事実」を作らせないようにしなければならないから、次期総裁にはそこを十分に意識した候補者が選ばれ、是非とも危機管理意識とその能力が高い「強い政府」をつくってもらいたいと思う。

危機管理最前線 (文春文庫)

危機管理最前線 (文春文庫)

重大事件に学ぶ「危機管理」

重大事件に学ぶ「危機管理」

政治と危機管理

政治と危機管理